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2020.9.2 もしバイデンが大統領になったら…

アメリカ大統領選において日本のメディアのほとんどは、常に民主党のジョー・バイデンのリードが伝えられています。

アメリカのテレビ局は、バイデン派とトランプ派にはっきりと分かれて報道し、中立という立場はあまり意識されていません。

ただ、日本のNHKだけを観ていると、トランプ大統領がいかにも悪辣な人物に思えてくる偏向報道ぶりです。

アメリカのテレビ局のように露骨ではないですが、バイデンに好意的なのがよく分かります。

さて、問題の対中政策ですが、多くの識者が、たとえバイデンが勝ち民主党政権になっても、対中強硬策は変わらないと予想しています。

確かに、中国はアメリカの覇権に挑戦しているわけなので、それを跳ね返すのは超党派の方針のはずです。

が、本当にそうでしょうか?

先日、アメリカに永住している知人の男性からメッセージが届きました。

知人はトランプ嫌いなのですが、その彼が
「バイデンはやばい」
と言っています。

彼が言うには、バイデンは中国が知的財産を盗んでいることは認めていますが、現在の対中関税は撤廃し、WHOにも復帰すると言っています。

それでいて、どうやって中国の攻勢を止めるのかは論じられていません。

「中国は態度を改めなければならない」
と言うのですが、一体どうやって改めさせるのか、よくわかりません。

本人も自分で何を言っているのか、本当にわかっているのか定かでない印象は、SNSの動画を見ても十分わかります。

これではトランプ嫌いの知人も心配になるわけです。

中国の脅威については、超党派で理解されていると仮定しましょう。

しかし、ここで問題なのは、その脅威にどう対処するかです。

ひとつの考え方が、エンゲージメントを続けながら望ましい方向へ誘導すること。

エンゲージメントという言葉が最近よく使われますが、要するに中国と関わりながら姿勢を変えようとする政策です。

一方、トランプ政権が推進しているのが、ディスエンゲージメントです。
つまり、中国と関わらないようにするという政策です。

最近、ポンペイオ国務長官が
『クリーンネットワーク』
という構想を発表しました。

通信ネットワークから中国企業を徹底的に排除するという政策です。

ファーウェイなど中国企業による情報の抜き取りリスクを考えれば当然の措置ですが、まさに『排除=ディスエンゲージメント』政策です。

どうやらバイデンは、中国のリスクを理解していると言いながら、エンゲージメント派のようです。

天安門事件以降のエンゲージメント政策が完全に失敗したという前提に立って、現在の対中強硬策があるのですが、どうもバイデンは、時計の針を2年前に戻してしまおうと考えているような印象を受けます。

エンゲージメントというと格好良く聞こえますが、一言で言ってしまえば、中国市場で散々金儲けに励みながら、中国が豊かになって行けば自分たちと同じような自由主義的な資本主義に移行し、自分たちに脅威を与えることはないだろうと勝手に楽観視していただけです。

サイレント・インベージョンの著者であるクライブ・ハミルトン教授は、マレイキ・オールバーグ氏との共著『Hidden Hand (隠れた手)』で、バイデンについて以下のように記述しています。

●2019年5月、ジョー・バイデンは、中国がアメリカにとって戦略的脅威であるという考えを嘲笑することで、民主党の大統領候補の他の全ての候補者とは一線を画した。

●バイデンは長年、中国に対してソフトなアプローチを採用していた。

●2013年12月にバイデン副大統領が中国を公式訪問した際には、息子のハンターがエアフォース2に搭乗していた。

●バイデンが中国の指導者とソフトな外交をしている間、息子のハンターは別の種類の会議をしていた。

●そして、渡航から 2 週間も経たないうちに、2013年6月にジョン・ケリーの継嗣子を含む他の2人の実業家と一緒に設立したハンターの会社は、プライベート・エクイティの経験が乏しいにもかかわらず、中国政府が運営する中国銀行を筆頭株主とするファンドBHRパートナーズを開設するための契約を最終決定した。

これがバイデンとその息子のチャイナ・エンゲージメントです。

バイデンはこれらを失いたくないのかもしれません。

そうであれば、バイデンこそ自由主義諸国にとって最大のリスクになり得ます。

今後、日本はどうしたらいいか?

「バイデンが勝ったら親中に戻ればいいや」
などと考えてはいけません。

相対的自立度を高めながら、オーストラリアやインドとの連携を深めていくことが重要です。

たとえバイデンの頭が、中国によって既にサイレント・インベージョンされていたとしても。

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