【短編小説】レモンサワーと金曜日
週末がやってきた。
一週間働き疲れた体が求めているのはもちろん、美味しいごはんだ。
適当なお店に入るのもいいけれど、ゆっくりしたいのでお家居酒屋をすることにする。
おつまみは何を作ろうか。
心の踊りが足取りに出ないように至って真面目な顔でスーパーに入った。
それなりにいい時間帯なのであちこちに割引シールが貼られている。
刺し身もいいけど…ここはあえて肉をチョイスしてみるか。
申し訳無さそうに鳴ったお腹をわずかに隠しながら精肉コーナーへ向かった。
キレイなピンク色のお肉たちが陳列されている。
2割引のシールにつられ、砂肝を手にとった。
砂肝か。悪くない。
バターと醤油で炒め、大葉を散らせば最高の一品になる。
私はお酒を飲むのが好きだが、飲むためにおつまみを探しているわけではない。
おつまみを食べるために飲むのだ。
これに合う酒はなんだろうか。
それを考えていると、恋した乙女のように心が弾む。
ビールも捨てがたいが、ハイボールも魅力的だ。日本酒と合わせちゃうってのも乙なもんだ。
でもここはやっぱり、レモンサワーにしよう。
他にも数品分の材料を揃えた私は帰り道、心の弾みを抑えられなくなっていた。
早くこれを食べてレモンサワーを流し込みたい。
帰宅後台所に立った私は丁寧に筋を切るように砂肝に刃を入れた。
包丁越しに伝わる弾力とずしゃっと切れる音。
砂肝の調理はこれだから気持ちがいい。
砂肝の銀皮はとってしまっても良いが、あえて弾力を楽しみたい場合は残してしまっても構わない。
歯ごたえが良ければよいほど旨味が溢れ出すのだ。
さっとフライパンにバターを入れ、砂肝を投入。加熱されてじわじわと開いていく砂肝はあまりにも魅力的で食欲をそそった。我慢、我慢。
火が通った砂肝に醤油を回し入れ、味が馴染んだらお皿に盛り付け、刻んだ大葉を散らして完成。
メーカーのこだわりを感じるレモンサワーをプシュッと開け、まずは一口。
くぅぅぅ、この瞬間がたまらない。
さあ砂肝のお味はどうだろうか。
バターのコクと大葉の爽やかな香り、そして醤油のちょうど良い塩味が砂肝のコリコリとした食感と最高にマッチした。
そして再びレモンサワー。
はあ、これだ、これが欲しかったんだ。
今週の私をねぎらってくれてありがとう。
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