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【短編小説】眠れない夜に
布団に潜ってからしばらく経った。
元気よく刻む時計の針が気になってしょうがない。
瞼を懸命に閉じても睡魔は襲ってこなかった。きっと奴にも気分があるんだろう。
試しに羊を数えてみることにした。
羊が1匹。
羊が2匹。
羊が3匹。
羊が4匹。
羊が578匹をむかえたところで数えるのがバカバカしくなり、
やっと起き上がる決心がついた。
ホットミルクでも飲むか。
歯磨きをしたあとに口にものを入れるのは気が引けるが、止む終えない。緊急事態だ。緊急事態宣言だ。直ちにミルクをレンジに入れよ。繰り返す。直ちにミルクをレンジの中に。
チーン
ガコン
ズズズッ
お気に入りの太くて背の低いマグカップを両手で包み込み、ミルクをすすった。
あっつ。
少し冷まそう。
窓を開けるとひんやりとした空気が部屋に流れ込んできた。
もう4月だというのにまだまだ寒い日が続く。
あったまろうと再びミルクを一口すすった。
あったかい。
雲の間から見える三日月がなんだかこちらに笑いかけてるような気がした。
もう少しだけ、夜ふかししよう。
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