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日本はグローバル社会で負けるべくして負けている?

皆さんこんにちは。
私事ですが先週末で29歳になりました。
20代ラスト1年がついに始まりました。
高校を卒業して大学生になってから10年も経ったと思うと年齢を感じずにはいられません。
理想の30代を迎えるためにも良き1年にしようと思います。

今回も最近読んだ本の紹介をしていきます。
新・失敗の本質 「失われた30年」の教訓
山岡 鉄秀著 扶桑社 2019年

https://www.amazon.co.jp/%E6%96%B0%E3%83%BB%E5%A4%B1%E6%95%97%E3%81%AE%E6%9C%AC%E8%B3%AA%E2%80%95%E2%80%95%E3%80%8C%E5%A4%B1%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F30%E5%B9%B4%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%95%99%E8%A8%93-%E5%B1%B1%E5%B2%A1-%E9%89%84%E7%A7%80/dp/4594081908

こちらの著書は、
・グローバル社会で生き残る、勝ち抜くためにはどうすべきか
・日本人が世界で対等に渡り合うための心得

に興味がある方にはとてもおすすめです。

本書の中でも記述がありますが、日本では敗戦国としての教育が長年にわたり行われており、戦争=悪、日本は敗戦国で悪いことをした、といったバイアス(偏見、先入観)が我々には植え付けられているため、読む人によっては保守派、右派と捉えてしまう表現もあります。
(現に私自身、保守派でも右派でもないですがそのように感じた文章がいくつもありました。)
これから書いていくことはそのような誤解を招く表現も一部あるかと思いますが、あくまでも本書の内容を事実ベースで述べているものですので、私個人の思想とは無関係です。

本書では、日本がグローバル社会で失敗、負けた事例を元にそのメカニズムを解説しています。
何度も繰り返し出てくる大事なポイントが、
①思考回路を抜本的に変える
②文化圏ごとのコード特性を知り、相手に合わせて対応を変える

この2点です。
1つずつ簡単に解説していきます。

①思考回路を抜本的に変える
著者が日本人と欧米人の違いについて明確に述べているのが、思考回路の違いです。
これは文化・思想によるものとは関係なく、物事の捉え方や考え方のメカニズムについてです。
ここでは大きく
・シングルループ・ラーニング
・ダブルループ・ラーニング
  の2つに分けられます。

シングルループ・ラーニングとは、
ある一貫性のある法則や規則応じて効率的に物事を進めること。
日本人が得意とされている領域です。
同じことの繰り返しを徹底するので、マルニュアルやルールに従って大量生産をすることなどに強みを発揮します。
繰り返すことで熟練度が高まる特性がある反面、一度前提条件が崩れると適応力が著しく低い側面もあります。

ダブルループ・ラーニングとは、
今まで前提とされてきたものに常に疑問を持ち、前提と仮説の2つの軸を動かし検証していくこと。
結果として仮説が正しかった場合、学習棄却という形で過去の前提を捨てることになります。
イノベーティブな現場で力を発揮されることが多く、環境の変化への適応力が高いことも特性として挙げられます。

また、もう1つ重要な思考の軸としてクリティカル・シンキングがあります。
クリティカル・シンキングは、先述のダブルループ・ラーニングに類似する要素が多いです。
目の前に起きている事象や情報を鵜呑みにせず、本当に正しいのかという疑問を持ち、検証し、そして自分はどう考えるのかをセットで導き出す思考です。
暗記や公式を覚えてテストの点数を取ることには長けている日本人ですが、
「あなたはどう思う?」という質問に弱い人が多い印象があります。
それがクリティカル・シンキングに由来するものだったりします。

日本は100年近く前からダブルループ・ラーニングには乏しく、数々の失敗を繰り返している。
いくつか事例を挙げてみます。

・太平洋戦争において時代遅れの戦略で戦局悪化→敗戦
第一次世界大戦で戦勝した戦艦を軸とした海上戦に固執し、次々と開発が進められた空爆機への対応ができず、航空戦の時代に全く適応できずミッドウェー海戦で大敗。その後もマリアナ沖海戦、レイテ沖海戦など大敗を喫し、敗戦の一途を辿った。

・大量生産・大量消費時代から第4次産業革命に乗り遅れ、時価総額・一人あたりGDPでも低迷
90年代初頭のバブル崩壊・2008年のリーマンショックを経て一気に加速したIT革命、第4次産業革命によって世界を代表する製造業から、世界を代表するプラットフォーマーが台頭。GAFAなどシリコンバレー発のIT企業やアメリカがリーマンショックで勢力を落としたタイミングで一気に攻勢をかけた中国国営企業のファーウェイなどが世界経済の中心となった。
日本企業はプラットフォーマーとしての存在感を出せていない。

②文化圏ごとのコード特性を知り、相手に合わせて対応を変える
世界には国や地域ごとに価値観や判断基準の軸となる文化の特性があります。
・リーガルコード
・モラルコード
・レリジャスコード
・ミックスコード

の4つに分類されます。
1つずつ簡単にまとめると、

・リーガルコード:北米、イングランド、北欧諸国に多い
価値観の中心がルール・法律・ノウハウで構成されている。
アメリカがイメージしやすいが、何かと裁判や賠償問題が引き合いに出されたり、どんな家系かよりも何ができるかで評価を受ける。

・モラルコード:アジア諸国、ラテンアメリカ諸国、南ヨーロッパ、中部アフリカ、ロシアなど
価値観の中心が人間関係にある。
日本がわかりやすい。何か問題が起きた時はまずは謝罪から始めて場の体裁を整える。
利害よりも互いの関係性を重んじる。

・レリジャスコード:中東諸国などイスラム圏に多い
価値観の中心が言葉の通り、信仰・宗教・神の教えにある。
神の教えが絶対であり、日本では何の罪に問われないことも、その地域では宗教上のルールで死刑になることもありえる。

・ミックスコード:オーストラリア、ニュージーランド、インド、ドイツ、オランダ、イスラエルなどに多い
価値観が上記3つのうち2つ以上で構成されている。
歴史背景から複数の宗教が混在したり、複数民族の移民で構成されている国や地域で混ざり合った価値観を持つ。

本書では日本の外交や企業の海外進出戦略において、この文化コードを理解、習得していない人間が多いという事例がいくつも挙げられています。
いくつか取り上げてみます。

・トヨタやブリヂストンがアメリカで大規模リコールを起こした事案
置かれているマーケットはリーガルコード(ルール・法律が最優先)でありながら、モラルコード(人間関係が最優先)での常識で対応してしまった結果、
「ご迷惑をお掛けした方々にお詫び申し上げます・・・」と伝えてしまったために本来は挨拶の目的での発言が、
謝った=非を認めた=責任問題=賠償となり、数百億〜数千億の賠償金を支払うことになったという。
アメリカにおける海外企業の賠償額は日本企業がダントツに多いらしいです。

・外交における関係性を重んじるあまり迎合しがち
近年の米中貿易摩擦で苦しくなった中国が日本に歩み寄って来た際に、相手が弱っているところをチャンスにして領土問題や歴史問題などを引き合いに外交におけるイニシアチブを獲得できる絶好の機会だったようです。
にも関わらず、外交官は目先の経済を動かすことばかりに目がいき、また対外関係を壊したくない一心に中国の要求を鵜呑みにし、かつては日本が完成品を作り、中国が部品サプライヤーだった構図から、日本企業が中国企業に部品供給をするサプライヤーに成り下がることを自ら迎合してしまいました。

このように実は戦前から80年近い歴史の中で日本は同じようなメカニズムで、同じような失敗を繰り返しています。
今後日本が世界で戦っていく、対等にやり合うためには、
・ダブルループ・ラーニング
・クリティカル・シンキング
・文化コードの理解・習得

が必要不可欠となってきます。
英語などの言語習得はもう当たり前のレベルで、ただ言語が堪能では意味がなく、戦うためのスキルが求められる、そんな時代に突入しているのです。

しかし著者によると、ボーダレス化が進んでも尚、人が無国籍化することはなく、日本人は日本人らしさを求められるので、欧米人になりきりなさい、ということではないらしいです。
あくまでも世界で対等に渡り歩けるだけの能力を身に付ける必要があるということでした。

今回は割とボリュームたっぷりで長くなってしまいました。
ちょっと内容も堅苦しくなってしまい恐縮です。。。
ただでさえ大手企業に就職さえすれば安泰という時代が終焉を迎えた中で、さらにコロナウイルスによる大きな経済不振。
本当の意味で世界どこでも通用する能力を身に付けないと今後は安価な労働力にしかならないかもしれないと危機感も持つことができた一冊でした。
事例の詳細な内容やキーワードの詳細な説明が気になる方は是非手に取ってみてください。
きっと世界から見た日本について共感できる部分があるはずです。
本書を読んだからと言って保守派・右派になるような思想書ではないので。笑

また本のレビューなど投稿していきます。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
それではまた。

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