夜明けの鏡10(オリジナル小説)
追駆する影
あれから一週間経った。私の噂は日に日に増している。真希を助けた日のことを職員の人達が知り合いの人に言ったことが広まり、あの男の子が轢かれそうになった出来事もさらに噂に拍車をかけた。
男の子にいろいろ聞く人もいるが、男の子の記憶は私が消したので、男の子は何を言わない。
ただ、真希は自分のことだから覚えている。
真希も最初は黙っていたが、噂が事実と違うこともあるので、今では話している。
私はこの力でたくさんの人を助けると誓ったから、たくさんくる人達の病気を治し、悩みを消したりしている。
ただ、仕事に支障が出るから、人数は限定している。
「今日も疲れたなあ。私もう帰りますね。」
「かの子ちゃん、あの力は体力を使うんじゃないかい?程々にね。まだ病気治ってから日が浅いからね。」
施設長が優しい笑顔で私に言う。
「大丈夫です。また倒れないように気をつけていますから。」
私がそういうと施設長は優しく微笑み、うなずいた。
私は書類を片付けてから家路についた。
私はあの噂が経ってから自転車で通勤している。誰かに会うと厄介だから。
家に着き、何かいつもと雰囲気が違う。
尚輝も帰っているはずなのに、家の中は真っ暗だ。
「尚輝。尚輝いるの?」
なんの返事もない。
その時、私の背中に何かで押される感覚を感じた。
「如月かの子さんですね。来てもらいましょうか。」
低いかすれた男の声に私は全身から寒気を感じた。怖い!
「……あなたは誰ですか?私をどうしようと?」
そういうと男は『おっと』と言い、さらに何かを背中に押した。
「かの子さん、こいつはピストルだ。言うことを聞いてくれたら、あんたも旦那さんもあんたの友達にも危害は加えない。」
男はさらに背中にピストルを押しつけて、私の口にテープを貼った。さらに手足を結ぼうとする。
私は男が無動きできないように念じた!
「ぐぉーぐぇー。」
男は嘔吐するような声を出して、その場に倒れた。振り返ると確かにピストルが手ににぎられている。私は口のテープをはがし言った。
「あなたは誰ですか?何故こんなことをするんですか?」
私がそう言っても男は何も言わない、私はさらに全身に苦痛が走るように念じた。
「やめろう!言う!言います!私はある組織から雇われた者です。あなたの旦那さん尚輝さんは我々が捕らえています。死んじゃいない!我々は殺しはしない。あと、友達の倉田真希さん、柏崎静佳さんも我々のところです。
さあ、言いましたから、私を解放して下さい。お願いしますよ。」
男はそういうと哀れむような目で私を見つめた。
「何故、尚輝の名前を知っているんですか?真希や静佳の名前も。あなたを解放しません。優しい言葉を使ってるけど、解放したら私を撃つ気でしょう?」
「そんなことはしやしない。あなたがいないとこっちも困るんでね。」
男はそういうとさらに私に目で訴えてながら哀れみを感じさせようとする。
「どこなの!みんなは!場所を言って!」
私はそういうとさらに全身を痛めつけた。
「い、言います!言いますから動けるように……ぐあ……。」
私は警戒しながら、抵抗できない程度に男を解放した。
「場所は青木町の古ビルです。行けばすぐわかりますよ。」
その時、別の気配を感じた!私は咄嗟にそちらも縛りつけるように念じた!
「がはー!」
やはり嘔吐するような声を出して外で何かが倒れる音がした。
「私をどうするつもりか知りませんが、こんなことするなんてあなたがたは悪い人達に違いないわ!」
私はそういうと男と外にいる誰かが激突するように念じた。浮き上がった男は凄い勢いで、外に飛んでいく!
ドガっと言う凄い音がした。私が外に行くと二人の男が気を失っていた。
「チッ、しくじりやがって!」
その声が聞こえたと思うとさらに二人の男が気絶した男を抱えて立ち去った。
「かの子さん、誤解しないでほしい。我々は平和のために、あなたに協力してほしいだけだ。
」
「平和のため?だったらどうして、こんな手荒い真似をするんですか!?」
そう言ったのも束の間、声の主は立ち去った。
私は尚輝や真希や静佳が危険にさらされていることを感じ、青木町の古ビルに急いだ。
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