夜明けの鏡12(オリジナル小説)
光は白いスーツの男達の一人が大きなライトを持ち照らしていた。椅子には中年くらいの人が座っている。その人はおもむろに立ち上がり、私のほうに向かってくる。
「大変失礼致しました。ミセスかの子。あなたが了承してくだされば小田先生はこちらにいらっしゃいます。」
男は丁重にまるで貴族のあいさつのように手を体の前にまわしてお辞儀をした
「いいえ、小田先生のお姿を見るのが先です。契約とおっしゃいましたが、そうでなければお話しはできません。」
私は心臓が爆破するほどドキドキしていたが毅然とそう言った。椅子に座っている男は何故かニヤニヤとしながら私を見つめる。
「いいでしょう。小田先生、ミセスかの子がお呼びですよ。」
奥のほうから一人の男の人が歩いてくる。
光に照らされて姿があらわになる。えっ!!
本当にあの小田洋平さん!どうしてあの小田洋平さんが!?
「ミセスかの子、はじめまして。小田洋平です。ずいぶんと手荒な真似をしましたこと、お許しください。これも人類の平和のため。お分かりいただけますようお願い申し上げます。」
小田洋平さんは椅子に座っている男と同じように、貴族のように手を体の前にまわして挨拶した。
「本当に小田洋平さんだったんですね。お願いです。私の夫と友達を返してください!」
「いいでしょう。ただしそれには条件がある、この椅子に座っている男、宮川と言って私の助手でしてね。彼について行って我々の組織に協力して欲しい。」
小田洋平さんはそういうと宮川と言う男に指図した。宮川と言う男が私の前に立つ。まだニヤニヤしている。
「申し訳ございません、ミセスかの子。あなたが必ず我々に協力すると部下と賭けをしていたもので。勝ったので嬉しくて嬉しくて。賭けに勝ち、あなたにも勝った。あとは我々で理想郷をつくるだけですね。」
「無駄話をするな!宮川!早くミセスかの子をお部屋にご案内しろ!これはこれは乱暴な言葉を使ってしまい大変失礼致しました。さあ、ミセスかの子、宮川の後をどうぞ。」
宮川と言う男の言葉を遮るように小田洋平さんがそう言った。
「待って下さい。夫と友達を解放してからです。」
私がそういうと小田洋平さんは違う男に指図した。周りを沈黙が支配する。私の鼓動はまだドキドキしている。身がちぎれるくらい緊張して気を失いそうだ。
やがて、『こい!』と言う声と共に人が部屋に入ってきた。
「かの子!!」
その声でわかった。尚輝だ。真希と静佳もいる。
「さあ、みなさんお連れしました。ミセスかの子、ご一緒に。」
手招きしながら宮川と言う男が言う。尚輝と真希と静佳が安全かどうか暗闇で様子がわからない。
どうにかしてここから脱出しなければ。
「ミセスかの子、変なことを考えてはいけませんよ。3人には何かトラブルがあれば、こいつをぶっ放すように指示している。ハハハ。」
よく見るとマシンガンだ。やはりきちんと帰してはくれない。私は宮川と言う男に従い、後について部屋に向かった。
部屋に向かう前に私は尚輝と真希と静佳に言った。
「大丈夫。私を信じて。」
私はそういうと部屋に向かう。宮川と言う男が私の胴に鎖を巻き、身動きできないようにした。しかし、私はわざと捕まったんだ。
3人が無事とわかれば、マシンガンを突きつけられようと、鎖で縛られようと……。
私は部屋のドアの前に着くと宮川と言う男が部屋に乱暴に入れようとした、その刹那、私は尚輝と真希と静佳が一瞬にして自分の家に戻るように念じた。上の階が騒がしい。異変を感じたようだ。
私はさらに宮川と言う男や小田洋平さん、そしてその部下の人達が身動きできないように念じた。
「「「ぐあー!ごぼー!うぐあー!」」」
様々な声を出しながら、その場にみんな倒れながら嘔吐している。古ビルはまるで断末魔のような声が支配している。
私はその一瞬の隙をついて自分も家に戻るように念じた。
一瞬にして家についた。
目の前には尚輝がいた。私は思わず尚輝に抱きついた。
「ごめんね。ごめんね。本当にごめんね。」
「それより、また奴らが来るかもしれない。真希さんや静佳さんも心配だ。僕の車で二人を迎えに行って、それから身を隠そう。」
そういうと尚輝は私の手をひいて車に私を載せた。車は真希と静佳の家に向かった。
これから何があると言うのか……。私はこれから起きることを想像すると恐ろしくて仕方なかった。
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