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『星占いの話』
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「今朝の占い、最下位だったんだよねー。
案の定、数学の小テストはあるし、
英語は当たるし…」
黒板の日直を書き直した君が、愚痴をこぼしながら、一つ前の席の椅子を引き、向かい合わせで腰をかけてきた。
「あの占い、結構当たってるよね。」
私はシャープペンの芯を、カチカチと送り出しながら、日誌を描きつつ、ちらりと君の手を見る。
丸い爪の、少し硬そうな日焼け色の手。
書く手を止めて、そばに自分の手を置いてみる。
(そんなに大きくない…のかな。)
それ以上、顔を上げる勇気はない。
名残惜しさが伝わらないように、学習内容の欄を埋める作業に戻る。
「お前の字、読みやすいなー。」
「そうかな?ありがとう。
でも君だって、書き初めは抜群じゃん?」
「へへっ、だよねー。」
「自分で言っちゃいますかぁ、ふふっ。」
頬杖をついて、窓際にずらっと並べて貼られた書き初めを見上げながら、君は少し得意げな顔をしているのだろう。
なんとなくだが、そんな気がした。
「お前、何座になるんだっけ?」
「んー?…内緒。」
「えっ!?いきなりの秘密主義!」
「うん、なんとなく今日は。」
「待てよ、誕生日はわかってんだよ…しかしそこの星座がわからん…あっ!」
いきなり動いた君に机ごと揺らされ、こちらのペン先と視線も、自然と日誌から離れてしまう。
カバンから理科の便覧を取り出し、したり顔をこちらに向ける君に、私は思わず、小さく笑い声を漏らした。
あの占いはよく当たる。
私の星座が一位だったのも、今はまだ秘密だ。
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