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2022.12.10. マッドゴッドは猥雑なパワーに満ち溢れたヘルライドムービーだ

 


 ずっと見たかった映画をやっと見れた。

 SFXの巨匠フィル・ティペットが30年あまりの年月をかけて製作したストップモーションアニメがこのマッドゴッドだ。

 プロットは単純。ガスマスクとコート姿の主人公が地下の暗黒世界を地獄巡りする話だ。

 ただ台詞は一切ない。聴こえるのは叫びや泣き声、悲鳴に唸り声だけで誰も説明してくれない。我々観客は画面に映る映像を見ることしかできない。

 そしてその映像の、暗黒世界のビジュアルはまさに強烈の一言。

 この世界はうんことおしっことゲロに溢れて汚らわしいことこの上ない。
 
 そして、住人も汚い。
 労働に従事しながらゴミのように死んでいくその名も糞人間や醜悪怪奇なビジュアルのクリーチャーしかいない。

 混沌(カオス)という言葉が陳腐になるほどの猥雑ぶりに圧倒されるのみだ。

 大体のビジュアルは、本人も影響を公言しているヒエロニムス・ボスの絵画を想像してくれればいい。

ヒエロニムス・ボス『快楽の園』(wikipedeiaより転載)


 オタク寄りな例えをすれば、ベルセルクの蝕が全編続くような感じだ。

 とまあ、絶対に食事中に見たくない映画だが、映像を見ていくうちにフィル・ティペット本人の持つ美意識をぼんやりと感じられるようになってくる気がしてくる。
 確かに醜い世界なんだが、醜の中の美を見出すこともできるのだ。

 全く別の芸術家の言葉を引用して申し訳ないがこの映画はまさしく「芸術は爆発だ」を体現しているのではないか。

 とにかくパワーに満ちた映像に圧倒されること間違いなしなので見に行きましょう。

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