R5読書感想文コンクール課題図書全部読んでみた。 (付録:読書感想文のヒント@ICTも使おう)
こんにちは。
7月、この季節がやってまいりました。
そう青少年読書感想文全国コンクールの季節です。今年は第69回。
「どうしよう書きたくないな」
「まず本何にしよう」と、悩むことも多い課題かもしれませんね。
書く本人は勿論、小さいお子様が書く場合は親御さんもフォローに困ることがあるかと思います。そこで、書店にならぶ本の山から課題図書を選ぶ時の参考になればと全レビュー付きでご紹介します。好きが講じて、5月からこれまでに課題図書を全部読むことができました。
また、初めての試みとして記事のおまけに付録「読書感想文のヒント@ICTも使おう2023」をご用意しました。記事で本の紹介は完結しておりますので、こちらは興味がある方のみどうぞご利用ください。
小学校低学年の部
■『それで、いい!』
礒みゆき 作、はたこうしろう 絵
絵を描くのがだいすきなキツネ。夢中で描きたいものを描いていたけれど、出品用の作品では普段とは違いどうしたらいいか悩んでしまいます。この作品は、ありのままでいいんだと気づかせてくれるあたたかい物語。私は書き出しの部分が好きです。絵は『なつのいちにち』の はたこうしろうさん。何度か登場する文字のないページが想像をふくらませ、読書のリズムを形作っているようでした。
(本はともだちシリーズ26。他の作品も読んでみたくなりました。)
■『よるのあいだに…:みんなをささえる はたらく人たち』
ポリー・フェイバー 文、ハリエット・ホブデイ 絵、中井はるの 訳
みんなが眠っている夜に働いている人達がいる。いつも目にすることができない夜間の様子を優しくやわらかく包むように教えてくれる絵本です。夜の動物園を扱った絵本はありますが、身近な家族の活躍にピントを合わせたこの作品は子どもたちに新しい視点や発見を届けてくれるでしょう。現代をよく表している「くらし」を描いた一冊です。
■『けんかのたね』
ラッセル・ホーバン 作、小宮由 訳、大野八生 絵
家庭や教室でよく目にする揉め事。この作品はどう対処するのではなく、物語を楽しく読みながら“元をたどるという発想”にふと気づかせてくれます。思わず発したその一言も、起こったアクシデントにも実は理由があります。4人兄妹に愛らしい猫やネズミも加わるドミノストーリーは必見です。
■『うまれてくるよ海のなか』
高久至 しゃしん、かんちくたかこ ぶん
自然界にはふしぎがいっぱいありますね。魚のあかちゃんの写真からそれぞれの役割などたくさん発見することができる写真絵本です。1・2年生では図工科で「ふしぎなたまご」、国語科では「どうぶつのあかちゃん」という単元も目にします。そんないのちの不思議を考える年頃にぴったりの作品。
続編、『かくれているよ海のなか』もあわせてぜひ御覧ください。
小学校中学年の部
■『ライスボールとみそ蔵と』
横田明子 作、塚越文雄 絵
古い蔵があるジュンの家は、代々手作り味噌を作り販売しています。ロンドンから来たユキちゃんからみた味噌作りは、新たな視点をもたらしてくれました。味噌をもっと知ってもらうためにジュンが思いついたアイデアとは何でしょう。英語が身近になった最近の小学生にぴったりの物語です。中学年よみものシリーズより。
■『秘密の大作戦!フードバンクどろぼうをつかまえろ!』
オンジャリQ・ラウフ 著、千葉茂樹 訳、スギヤマカナヨ 絵
食べ物に困っている人を救うフードバンク。ある日、みんなが寄付をしているところが泥棒に狙われてしまいます。物語では、フードバンクを利用する側の想いも細やかに描かれています。子どもたちは困難に立ち向かいさあどうするのか。毎日の食卓に並ぶ食べ物についても改めて考えるきっかけをくれる作品です。
■『化石のよぶ声がきこえる:天才恐竜ハンターウェンディ・スロボーダ』
ヘレイン・ベッカー 作、サンドラ・デュメイ 絵、木村由莉 訳・監修
みなさんは恐竜は好きですか?伝記絵本でもあるこちらの作品の主人公ウェンディは恐竜ハンターとして大発見をします。熱意を持って、化石発掘について教えてくれる好きが詰まった一冊です。絵もチャーミングで楽しく学べます。探求するワクワクや素晴らしさが伝わってきました。
■『給食室のいちにち』
大塚菜生 文、イシヤマアズサ 絵
廊下から見える給食室。中はどうなっているんだろう?と気になりますよね。給食が教室に届けられるまでが時系列で描かれ、とても経過が分かりやすいです。理解が進むのはきっと具体的な人数や量、回数のおかげ。私のお気に入りは湯気。あの美味しそうな香りが伝わります。また対面で食べる日常が戻りますように。
小学校高学年の部
■『ふたりのえびす』
髙森美由紀 作
図書館勤務の高森美由紀さんがいきいきと描くのは、地方につたわるあるお祭りで舞を習いながら自分を見つめなおす二人の再生物語。友だちと腹を割って話す場面は臨場感いっぱいで、胸が熱くなりました。手を取り合い舞を披露する子どもたちのあたたかいストーリーは大切なものに気付かせてくれました。
■『5番レーン』
ウン・ソホル 作、ノ・インギョン 絵、すんみ 訳
小学6年生の女の子カン・ナルは水泳部のエース。もっと早く泳げるようになりたいと練習に励む毎日にあるトラブルが巻き起こります。悩める中でなぜ水泳をやっているんだろう、今の自分とは?を考える様子が印象的でした。丁寧でナチュラルな翻訳が読みやすく物語に入り込めました。夏の空のように爽やかで瑞々しい作品です。
■『魔女だったかもしれないわたし』
エル・マクニコル 著、櫛田理絵 訳
スコットランドで暮らしている少女・アディは、その昔魔女と呼ばれ迫害された人たちがいることを知ります。学校で「人とちがう」ことについて悩むアディは、街で誤った歴史があったことを後世に語るべくある提案を委員会に持ちかけます。困りごとへの考え方を通して、少女が成長する様子がよくわかるこの物語は、きっと読者が見るであろうこれからの景色を変える力を持っていると思いました。
■『中村哲物語:大地をうるおし平和につくした医師』
松島恵利子 著
アフガニスタンで内戦や干ばつで苦しむたくさんの人々を救った中村哲さん。医療だけではなく、水路を作って土地を元気にして農作物を蘇らせました。以前大人向けの『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」』を読みましたが、こちらは小学生でも読みやすいように書かれていました。この本でその偉大な取り組みや行動力を知ることができます。(もしアフガニスタンの場所や地形を知りたくなったらGoogleEarthでどんなところか見てみるといいですね。)
中学校の部
■『スクラッチ』
歌代朔 作
表紙からどんな、話だろう?と思い読み進めるとそこにはコロナ禍を経た中3の夏それぞれの鮮やかな日常がありました。中学生の気持ちの解像度が高く夢中で読ませていただきました。図書館司書を経験されている作者ならではのリアリティある世界観を味わえる夏にオススメの一冊。
■『アップステージ:シャイなわたしが舞台に立つまで』
ダイアナ・ハーモン・アシャー 作、武富博子 訳
シャイで目立つことが苦手な女の子が学校のミュージカル発表に参加することになりました。準備をする中で、自分が好きなこと、できること、得意なことはなんだろうと模索します。タイトルの通り舞台に立つまで何が起こるのか、後半の展開をお楽しみください。登場するミュージカルや楽曲を知ると世界観に一歩近づけるかもしれません。
■『人がつくった川・荒川:水害からいのちを守り、暮らしを豊かにする』
長谷川敦 著
最近のゲリラ豪雨や線状降水帯での集中豪雨は、各地にその爪痕を残しています。首都圏にある荒川は、人の手でつくられた川です。かつて荒ぶる川であった荒川の流れを変えて、洪水から人々を守ることができました。水害については学校の調べ学習で自分の住む地域について学んだ生徒もいるでしょう。身近な災害に対する備えとしても学ぶことが出来、この本はきっと役に立つと思います。
高等学校の部
■『ラブカは静かに弓を持つ』
安壇美緒 著
本屋大賞ノミネート作品ということもあり、ご存知こ方も多いのではないでしょうか。先日こちらのnoteでも感想を書かせていただきましたがチェロを演奏する音を側に置いて読むといいのではないかと思います。楽曲の著作権を調査する立場の主人公の葛藤と音を奏でる喜びが伝わってくる物語です。
■『タガヤセ!日本:「農水省の白石さん」が農業の魅力教えます』
白石優生 著
公務員YouTuberとして活躍する著者がわかりやすく農業の魅力を教えてくれます。毎日口にしているあの食品はどうやって届けられているのかを考えるために、面白いコラムやワークシートもあります。後半には農林水産省の仕事も紹介されていて、国家公務員についても知ることができるユニークな一冊です。
■『昆虫の惑星:虫たちは今日も地球を回す』
アンヌ・スヴェルトルップ=ティーゲソン 著、小林玲子 訳
こちらはノルウェー発のネイチャー・ノンフィクションです。昆虫学者が身近な存在である昆虫について楽しく語り発見がたくさんありました。読むと地球の生物多様性や自然の大切さについても理解が深まります。この本を通じて「知る」ことは世界とつながるチャンスなんだと再確認しました。
📖 📖 📖
終わりに
今年の課題図書は、全体のテーマが少し明るく読みやすくなったように感じます。文字が大きくレイアウトが整った本もあり、みんなが読みやすくなりました。令和という時代を無視することはできないため、小説ではマスクをするシーンや社会情勢もいくつか盛り込まれていますが、人との出会いを通じて学び一歩前へ進む物語が多く選ばれていました。
なんといっても課題図書は“普段自分では選ばない本”に出会うチャンスをもたらしてくれます。大人が本屋大賞や直木賞・芥川賞に影響を受けるように、この機会をおみくじのように捉えるのもいいかもしれません。もしお気に入りに出会ったら、同じシリーズや同じ作者の他の作品を読んでみるのもおすすめです。親御さんも是非お子さんと同じ本を読んでみてください。
普段の学校へ登校するルーティーンとは少し異なる夏休み。そのいつもと違う日常にできた時間で、あなたの本との出会いが増えますように。
お読みいただきありがとうございました。
桜
📣 ちなみに、明日はこんなイベントもありますよ。
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