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風のように君に寄り添うメッセージ 『あなたの言葉を』 辻村深月/著


 誰かの言葉を、大人になって急に思い出すことがある。
あのときはわからなかったけれど、後からこういうことなんだって気付くことはたくさんある。たとえば小学校の先生に大切なことだよって教えてもらった「あきらめない」ことも 今ようやく 心から理解することができた。


 『あなたの言葉を』は作家の辻村深月さんが「毎日小学生新聞」で連載として小学生の読者に届けていたメッセージ。時期としては さまざまな出来事があった2020年4月5日~2024年1月7日の記事にあたり、今回1冊の書籍として出版されると知り読むことを楽しみにしていた。

 読めば何度も頷きその言葉を宝箱に取っておきたくなるような名言集だった。子どもだけじゃなく、かつて子どもだった私達大人をもやさしく包み込む言葉があふれている。時にはビックリマークやクエスチョンマークを用いて軽やかにアウトプットできるのは『かがみの弧城』での表現で代表されるような”気持ちの言語化の達人”辻村深月さんだからだと改めて気付かされた。

 たとえば人生の先輩が、こうあるべきだと厳しく正面から発言したとしたらやっぱりその声は相手のココロには届きにくい。辻村深月さんはこの連載の中で「私はこう思っていたよ!」「きっとこうなんじゃないかな?」と隣で一緒に考えてくれているように言葉をたくさん紡ぐ。隣でブランコに揺られながら同じ空を見上げているようでその距離感が素晴らしい。

 たとえば、第四章にある『あなたの言葉には力がある』では子ども心に感じる「きっと言ったって無駄だ」と思う気持ちについて触れているのだがこれが私の胸にズキューンと刺さった。どうしてこんなにも抽象的なモヤモヤの塊ををストンと文章でこうじゃないかなと着地させることができるのか。読みながら私の中の小人がスタンディングオベーションする瞬間だった。さらに筆者が小説をどう書いているかがわかる『おわりに』は何度も読み返したいあとがきとなっている。

 寄り添い指数100の文章は連載でも書籍でもきっと多くの人の記憶に残るはず。素敵な言葉が風のように届いて、読者は自然に受け取る。そしていつか思い出して、もう一度あなたを包み込むはずである。



言葉は、いつかあなたを助けてくれる。

『あなたの言葉を』機会があれば、ぜひご覧ください。



お読みいただきありがとうございました。


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