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#紫陽花の季節
hydrangea ─dream─ 後編
「前にもひなたに言われていたのにな…」
ナゴシが小さな声で呟いた。
「ヒナちゃんに?」
「ああ。俺が年齢のこととか、他の男にお前をとられるんじゃないかとか、ひなたに不安を打ち明けたんだ。そしたらひなたに、ゆかりは俺が好きで生まれ変わったんだ、今の俺はゆかりをちゃんと見ていないって怒られたよ。」
ナゴシの力のない笑い声が聞こえてきた。
「…そうなんだ。」
ヒナちゃんは、あおいお姉ちゃんの娘で
紫陽花の季節、君はいない 88
「気をつけて行ってきて下さいね、夏越殿!」
「くれぐれも、失礼のないようにな。
人間にもそれ以外にも。」
御葉様と涼見姐さんに見送られる形で、俺は八幡宮を後にした。
鳥居の外に出ると、急激に蒸し暑くなった。
厚めの雲の切れ目から、光が射し込んでいる。
俺は一旦自宅に戻り、夏越の祓で拝受したリース型の茅の輪守を玄関の壁に吊るした。
まるで彼女を探し出す決意表明のようだと思った。
行動を始めるな
Sweet Valentine【後編】
2月14日当日。
俺はチョコとたくさんの果物とマシュマロを用意して、自分のアパートにあおいを呼んだ。
「いつもバレンタインに柊司くんがくれる手作りチョコも美味しいけれど、チョコレートフォンデュも楽しいわね。」
あおいはとてもニコニコしている。
料理が出来ない彼女にとって、俺が切った果物をあおいが盛り付けたことで、共同作業になったのがとても嬉しかったようだ。
フォンデュを堪能した後、俺は席を立
Sweet Valentine 【中編】
俺は隣人で親友(予定)の夏越に相談することにした。
夏越は懐かない猫のような男だが、料理の出来る俺はアイツの胃袋を掴むのに成功した。
「なぁ、夏越。彼女に何かしてやりたいんだけど。」
「何でお前が俺の部屋のベッドでゴロゴロしているんだ~!」
早速威嚇されたが、俺は怯まない。
「なぁなぁ、夏越。」
「~!バレンタインが近いんだから、手作りチョコでも作ったらどうだ?お前料理出来るんだし。」
「手作