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衰退産業の令和ラブホテル業界で次々とバズラブホテルを生み出すための「絶対真似をしたくない精神」

Best Delightグループといえば、スイーツホテル、恐竜ホテル、花魁ホテルなどのバズラブホテルを次々立てているラブホテルグループである。

しかし今、ラブホテルが新しく作られることはほとんどない。令和時代にラブホテル事業で成功するのは、景気が良く、住宅事情も悪く、マーケットが大きかった昭和後期・平成初期の頃に成功するのとはまるで違うのだ。

前編記事『元大手コンサル社員が、衰退産業のラブホテル業界に新規参入した理由とは』では、Best Delightグループ代表取締役の桝村さんに、衰退産業ラブホテル業界になぜ参入したのか、そのきっかけと、業界の将来性について語ってもらった。

今回の記事では、どのようにして頭一つ飛び抜けたエンタメラブホテルを生み出しているのかについて聞いていく。


設計士に完全におまかせせず、経営者主体でホテルのコンセプトを決めていく

ーどうしたら目新しいコンセプトのバズるラブホテルが思いつけるんですか?

スイーツホテルに改装する前のホテルを買い取った時に、ちょうどコロナになって半分閉めることになったんですよね。どうしようこのホテルと思って、社員の人と下見しに行ったらパステルカラーのカラフルな塗装だったので「なんかお菓子の家ぽいよな」って話でスイーツホテルを作ることになりました。やるんだったらめちゃくちゃやろうとなってああなったんです。

自分たち自身で中国にお菓子のパーツを発注して貼り付けまくって自分の思い通りにやったというのが一番大事なポイントですね。

Best Delightグループ代表取締役社長の桝村氏

ダイナソーホテルは、アリババかなんかの中国のサイトで恐竜の模型を見たときに「使えるのではないか」となって、恐竜も嫌いじゃないし子供心に帰れると思って作ることになりました。他にもアラビアンとかも試したんですけどいまいちなんですよ。よくよく考えると、本場があるものは本場と比べられるんでダメなんですよ。スイーツとか恐竜とかは、これが本物っていうのがないじゃないですか。そういうファンタジーの要素があるものが当たるというのが、なんとなくわかってきました。花魁とかありそうでないけど、単純な和は本場の旅館にあるから、そこには勝てないんですね。世の中にないものを作った方が、みんな珍しがってバズるし新しいお客さんもくる。ファンタジーなコンセプトを軸にしたいので、次はリトルマーメイドにしようかなって思ってます。あとは今度町田にパイレーツを作る予定です。そろそろディズニーとユニバに怒られるかもしれないですね笑

子供にも人気なダイナソーホテル

ー他のホテルを参考にしたりすることはありますか?

参考はないです。他のラブホテルの真似は絶対したくない。やっぱり、無いものを作りたいです。

派手で扇状的な昭和ラブホから一変して、綺麗でスタイリッシュなラブホテル、海外リゾート地のようなラブホテルが流行り始めました。自分は売れているラブホテルの真似をするのは絶対にしたくない。少しでも真似をすると、新しくラブホテルを作ってもどこか既視感がある感じがしてしまう気がして。代わり映えのしないきれい目のホテルだと、シティホテルには勝てないし、Best Delightとは違くないかって思います。

自分は、オーナーや社長がアイディアを考えて「こういうホテルにしたい」って言うのを設計士が落とし込むっていうのが順序だと思っています。「こういうホテルにしたい」とか「業界こういうふうにしたい」とかを死ぬ気で考えているからこそそう思うのかもしれません。

アラビアンなホテルも行きたい!

―代わり映えがしないホテルが増えて悲しいですよね。

綺麗めなラブホテルも、シティホテルにはないギラギラ感があるから、あれはあれでいいとは思います。ただ若い子があそこまで高い金を払ってわざわざやりに行くかっていうと、多分それは行かなくなっていくと思うんですよ。ラブホテルに行くっていうのは僕らの世代で最後だと思うけど、あと10年もしたらその世代もお金持っててもわざわざラグジュアリーホテル(ラブホテル)に行ってやりに行きますかと言われると行かないと思います。そこに魅力がないと、別に家でいいじゃんと当然なっていくからです。

竜宮城。ファンタジーな世界

オープンな企画会議で出たあかんアイディアもやり通す

ー企画会議にはどんな人が参加しているんですか?

担当してくれるエリアマネージャーとか社員誰でも参加していいよって言って行っいます。自分は忙しくて夜くらいしか予定つかないので、夜7時から朝の3時くらいまで、真剣な感じじゃなくて「こんなんあったらいいんちゃう?」ってテキトーなこと言って爆笑しながらやってます。でも一度決まったアイディアをちゃんと最後までやりきろうとするから面白い。これやったらあかんでっていうやばいアイディアもありますが笑 

―やばいのってどんなのですか?

例えば、煙の部屋ですね。部屋の中に入ったら暗くなって煙がバーっと吹いてきて、昔のディスコみたいな設計してある部屋があったんですが、利用したお客さんが「火事です〜〜!」って笑 一応入るところに「何かが起きます」とは書いてあるけど、読まなかったらわからないですよね。

あとは血飛沫ですね。ダイナソーホテルで、恐竜の存在を表現するために客室の窓に血飛沫をつけたんですが、それも利用したお客さんから「怖いです〜〜!」って笑 気持ち悪いから部屋変えてくださいと言われますね。

あとは、珍しいと思って置いたウォーターベッドも「寝にくい」とか「やりにくい」とかクレーム来ますね。

潰れる寸前の国宝級昭和ラブホテルのリニューアルで新しい要素と古い要素を融合させる

―個性的で豪華な昭和ラブホテルはラブホ界隈だとダントツで人気ですよね。昭和ラブホ界隈では、BestDelightさんがシャルマンやリープハーバーなどの国宝級昭和ラブホテルを購入したとき、今後どういうリニューアルを展開していくんだろうというのは注目の的でした。

そうそう、僕も好きですよ。うちのこの前買った京都のシャルマンは、閉店する時にファンが最後めっちゃきました。「ライトくれー」とか「バスマット欲しい」とか言って笑
シャルマンは、前のオーナーさんが磨き倒していて、もう4,50年立っているのにカビひとつなくて、すごかったです。あの頃のラブホテルって今作ったら1ルーム4000万円以上するはずくらいの国宝みたいなホテルで、それをアレンジしながら、僕らが見て古いなと思うところは取り替えて、一周回って新しいなと思うところは残しながらリニューアルしました。

昭和ラブホテル感も残しつつ綺麗になっている

―ここを残そうというポイントはあるんですか?

明確な基準はないけれど、一周回って新しくて今でも受け入れられるのは残しますし、昭和好きの人から見たら可愛いのかもしれないけれど一般人から見ると怖いなと思うタイルの柄とかもあって、それは取り替えてて、全体的な雰囲気とか作り込みはそのまんまでやっていこうかなと。

―産業の衰退や老朽化によって、素敵な昭和ラブホテルは次々倒産していますが、BestDelightさんが頑張って昭和ラブホ買って残していってくれないかなと思ってます笑

こっちも商売でやっているから笑 まあでも新しい要素と古い要素を融合しながらやっていきたいと思っています。

昭和ラブホテルといえば主役は不思議な形のベッド


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