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元大手コンサル社員が、衰退産業のラブホテル業界に新規参入した理由とは

今の日本に、このようなホテルが存在するのをご存知だろうか?

!!!!!スイーツホテル!!!!!

スイーツホテル@渋谷

!!!!!恐竜ホテル!!!!!

ダイナソーホテル@岐阜

!!!!!花魁ホテル!!!!!

花魁ステージ@京都

実はこれは全部、Best Delightグループというラブホテルグループが建てたものである。

そもそも今日、ラブホテルが新しく作られることはほとんどない。令和時代にラブホテル事業で成功するのは、景気が良く、一般の住宅事情が悪く、利益率が高かった昭和後期・平成初期の頃に成功することとはまるで違うのだ。

オーナーのほとんどが2代目、3代目。
昔が全盛期だったホテルを廃業させないようにするのが精一杯。
コロナ禍が決定打となって廃業を決意。

そんな衰退産業の令和のラブホテル業界にも関わらず、なぜか、Best Delightグループ代表取締役の桝村さんは、1代目で次々とバズラブホテルを生み出し、着々と店舗を増やしている。
とんでもないことである。


令和ラブホテル業界では珍しい1代目社長。大手コンサル会社を辞めてラブホテルオーナーに転身

ー普通のサラリーマンからどのようにして、ラブホテルグループの社長に上り詰めたのでしょうか。

茨城大学卒業後すぐに某大手経営コンサルティング会社に勤め、3年後に会社を辞め、京都府福知山の13部屋の廃業したホテルを4,500万円くらいで買い取ったのが最初です。山奥の古いラブホテルで、リニューアルの資金も500万とかしかなかったんで「どうすんねん、これ」みたいな。
内装のクロスとか電気とかは自分でやりました。めちゃくちゃしんどくて最初の4年くらい記憶がないです。でも面白かったです。完全にお客さまがゼロだったのが、土曜日に初めて満室になった時は忘れられないですね。「こんな払ってくれるんや」って回収したお金を手で数えました笑 

Best Delightグループ代表取締役社長の桝村氏

1軒目のホテルの売上が安定するのには1年くらいしかかからなかったけど、店舗を増やしていく上では人を育てるのが大変でしたね。この業界は前向きな人があまり入ってこない。当然ラブホかスタバかっていったら、スタバでバイトする方がいい。そのスタバの時給よりもうちの方が低いっていうのがまずおかしい。
業務が効率化されていないっていうのもあるし、ラブホテルの運営は商売としてどうなん?ていうのが問われているのだと思います。効率化されて、単価が取れてってなれば、スタバよりも時給上がっているはずなので。今までのラブホテル業界は、建てれば儲かったというのが大きいと思います。

自身の右腕左腕となる人材を育てるまでが本当に大変でした。

―Best Delightグループといえば、スイーツホテル、恐竜ホテルなどの目新しいテーマのホテルのイメージですが、とはいっても最初の頃は資金がなければ同じような戦略は取れなかったと思います。どうやって売上を伸ばしたんですか?

最初は実績がないので、融資も難しかったです。今みたいな派手な戦略は取れなかったので、とりあえずお客さんに喜んでもらえるサービス系の充実など、できることからやりました。何百種類もサービスがあるとか、予約ができるとか、昔は全くなかったことをとりあえずやってみました。共有の露天風呂は大きなコストもかからずできることなので、試したりしましたね。

信楽露天風呂

ラブホテル市場は衰退しても、ラブホテルのエンタメ性を受け継いだエンタメホテルは新しい市場になる。

―Best Delightのホテルは、カップルの利用だけでなく家族や女子会利用も見据えたエンタメホテルだと思います。どうして幅広い客層をターゲットにすることを見据えながらも、普通のホテル業界ではなく、ラブホテル業界の中で勝負しようと思ったのですか?

自分が若い頃、初めてラブホテルを利用した時に衝撃を受けました。馬鹿でかい部屋に泡風呂までついて、食事まであって、それでもって安い。それなのに、なんでラブ(カップルのセックス用途)だけで利用するんだろう、と思ったのがきっかけです。
家族利用とかビジネスでの利用でも問題ないんじゃないか、もっと広がる業界じゃないのかな、と。業界入ってから15年目になるんですけど、やっぱりラブのお客さんだけだと当然人口減少もあって右肩下がりです。今のラブホテルは、ラグジュアリー系というかシティ寄りの、シンプルに綺麗なホテルが多い。でも元々ラブホテルって入った瞬間に寝られないくらい楽しかったんですよ。それがラブホテルの本来の姿じゃないけど、特色としてあっていいんじゃないかというのが根本なんです。
ラブホテルの本来のエンタメ性があれば、ラブ利用だけじゃなくて、使い方が幅広くなっていく。恐竜のホテルとかも土曜日は子連れがめっちゃ多いんですよ。技能人やん震えんさーも家族づれで来てくれたりします。だから結構カオスな状態で、風俗利用の人も、女子会利用の人も、カップルも、ファミリーもいてみたいな。めちゃくちゃだけど、でもそれが理想で、ラブホテルが残っていける唯一の方法なんじゃないかと思っていますね。

ロビーに象がいる!?

―今まで一番当たったなあという感覚のあるホテルはありますか?

当たったというより、今までと違う層が来てくれると一番楽しいです。今までラブホテルに積極的にいったことのない女の子たちが、スイーツホテルの前で「ラブホテルじゃんこれ!」って言いながらでも入って楽しんでくれて、「また来るね」と言って帰ってくれるとか。
デリヘルばかり入れても嬉しくないんですね。部屋さえあればいいんで、デリヘルは商売としてはラクだけど、他のホテルとの値段競争だけの話になってくるんで、そもそもBest Delightとしてやりたい商売じゃないよっていうのはありますね。

お菓子の家の中ももちろんお菓子だらけ🍩

―普通のホテルにはない、ラブホテルの要素ってなんでしょうか?

絶対シティホテルに恐竜は置かないですよね笑。シティホテルと同じ土俵に立ってしまうと絶対負ける。向こうは表の商売で、こっちは裏の商売と言ったらおかしいんですけど、融資してくれる金融機関はやはり限られている。そうなると当然投下できる金額も全然違うんで、同じ土俵で戦うのは絶対無理なんです。
それだったらラブホテル業界のエンタメ性を特化させて、その業界を新しい市場として作っていけたら楽しいなと思って。そのやり方が一個の業界として成立してくためにも、BestDelightのラブホテル業界でのシェアを大きくしていかないと当然認められない。それで特色のあるスイーツのホテルを作ったりして、どんどん店舗増やしてきたっていうのが大きいです。

恐竜に乗れるらしい……!

―衰退産業と言われるラブホテル業界で生き残っていく自信はあるんですか?

それはあります。

ラブホテルはもう全国で6000軒もない。元々の市場規模って4兆円くらいあったのに、今は1兆円切ってるんですよね。ラブホテルによく行ってた世代が僕らで最後で、それ以降の世代はラブホテルにあまり行かなくなった。遊び方が多種多様になって、セックスすることだけが全てじゃないっていう考え方が生まれてきているから、ラブ(カップルのセックス用途)に特化したラブホテルが当然衰退するのは分かります。でも、僕はラブホテルに行ったのが楽しかったし、エンタメホテルの一つとして新しいジャンルとして成立すれば残っていけるんじゃないかと思ってます。昔のままのラブホテルを残していくというより、エンタメホテルという新しい形でラブホテルが生き残っていくのを先導していきたい

ヒール浴槽は初めて見た!

桝村さんは、ラブホテルを新しいエンタメホテルの市場として引っ張っていくというビジョンを持っているという。そのためのエンタメホテルをどのように生み出していくのか、その詳細は後編記事『衰退産業の令和ラブホテル業界で次々とバズラブホテルを生み出すための「絶対真似をしたくない精神」』で語ってもらった。


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