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#エッセイ|夫の家事解放dayをつくった話


料理は好きだけど、
義務になるとしんどくなる。

掃除なんてさらにしんどい。

だから私たちは家事を分担している。

だけどそれは、
ふたりに同じだけの余裕があるときに限る。


4月。

新しい "期" が始まる季節。

私たち夫婦はそれぞれ環境が変わった。

私は社内異動で新しい部署に。
異動したてで、まだ本格的な忙しさは迎えていない。

一方の夫は新しい仕事が増えた。
やりたかったものらしく、本人は楽しそうだが、
稼働時間が増えるのは事実。

そんな状況でも数日の間は、
隙間時間を見つけては家事をこなしてくれていた。

だが2週目に差しかかる頃には、
目に見えて家事が追いつかなくなっていた。

食器洗い、洗濯、お風呂掃除。
基本的には夫の担当であるこれらの家事。

特に食器洗いと洗濯は、
あまり物を増やさない主義の我が家では、 
一度のやり残しがあとを引く。

朝ごはん後の食器洗い。
やり残してしまうと、お昼ごはんが盛り付けられない。
仕事中の夫に代わり、私がお皿を洗う。

洗濯も同様だ。
1日洗濯をしない日ができると、
お風呂後に体を拭くタオルがない。
これに関しては、気づいてからでは遅いので、
夫が洗濯を忘れて寝てしまったら、私が洗濯機を回す。

「分担ってなんだっけ??」
と正直思ったが、幸い今の私は余裕がある。

あまり深く考えずに、家事代行屋さんになった。


こんなことを数日続けていたら、
ふと、ある考えが浮かんだ。

「もういっそ、夫の家事解放dayをつくろう」

夫担当の家事ができていないことは、
別に悪意がある訳じゃない。

もともと夫はキレイ好きだし、
現に、洗濯を忘れて寝てしまった次の日は、
洗われずに朝を迎えたタオルの山を見て、
ひどく絶望していたのだ。

"やりたくても、できない。"

夫がそんな時こそ、
奥さんである私の出番である。

やり残された家事を見つける度に、
夫に声をかけるか、自分でするかの選択は面倒くさい。

それならいっそ、全部自分でする日!
と決めてしまった方が気持ちが楽だし、
いつ食器たちが洗われるのか、気にすることもなくなるだろう。

と、いろいろ思ったが、正直なところ、
「借りを作っちゃおう笑」くらいに思っていた。


その夜、仕事が終わり、
お風呂から出てきた夫に、
「提案があるんだけど」と言って話した。

その際、交換条件を2つ提示した。

  1. 好きなスイーツを買っていいこと

  2. 土日は外食するなりして、私の家事解放dayを作ってほしいこと

とはいえ、もともとスイーツは買っていたし、
土日も外食を気兼ねなくしていたし、
土日こそ時間があるので、私が家事をしてもそんなに苦ではなかった。

これを提示したのは、
堂々とやっていいよね!を改めて宣言するのと、
交換条件があると、夫が提案を呑みやすいんじゃないかと思ったからだ。

まあ、それが効いたかは分からないが、
夫は提案を呑んでくれた。

こうして、平日のうち3日間、
夫の家事解放dayが制定
された。


数日後。
夫の家事解放dayを実践してみて、
私には感じたことがあった。

当初、借りを作ってやろうと意気込んでいた私だったが、
不思議なことに今は夫への感謝の気持ちが溢れている。

それはなぜか。

これまで私たちは、
家事をきっちりと分担していた。

"食器洗いは夫の担当"
そうなってからここ数年、
食器洗いを全くしていなかった。
(とはいえ、夫が出張の時などはしていたが)

そんな状況だったので、
家事解放dayは、私に食器洗い担当への再デビューをもたらした。

久しぶりの3食分の食器洗い。しかも連日。

「水、冷たっ!」
「たまご、こびりついてる…水につけとけばよかった」
「洗剤もうなくなるやん」
「スポンジへたって、泡立たへんやん」
「朝洗ったばっかりやのに、また洗うんか…」

そういえば食器洗いって地味だけど、
いろいろ面倒だったなと、その感覚が蘇った。

「夫は文句ひとつ言わずに、毎日してくれてたのか」


仕事でもなんでも、
「相手の気持ちになって考えろ」とよく言われる。

組織、社会の中で、
自分とは違う他人と一緒にやっていくには、
必ず必要とされるスキルである。

だが、この言葉は、
半分本当で、半分嘘だと思っている。

相手の気持ちを想像、推測することも大事。
だけど、相手の立場に立って、
実際にやってみることも大事だと思う。

そうはいってもできないこともあるので、
全てに言えることではないけれど、
似たことをやってみるとか、
何かやりようはあるように思う。

なんにせよ、百聞は一見。
百見は、一体験にしかず。

食器洗いの再デビューは、
私に夫の苦労を痛いほどに実感させ、
同時に夫への感謝の気持ちを芽生えさせた。

そして自分の担当である家事たちもやらなければいけない。
専業主婦もどきになって分かったが、
やっぱり、家事は一人でやるのは大変だ。

私は仕事もしながらだったが、
専業主婦でも、毎日これをするのは骨が折れる。

夫婦で協力できることの尊さを再認識した。


家事解放dayは、夫にも変化をもたらした。

これまで、私が担当の家事をやり終えた時、
都度ありがとうと言ってくれていたが、
テレビを見ながらなど、いわゆる"ながらありがとう" だった。
(それでも十分にありがたい。)

それが今は、私を呼び止めて私の目を見ながら、
丁寧にありがとうと言ってくれる。

「今日もごはんありがとうね。美味しかったよ。」

私は単純な人間なので、
ありがとうの一言で、また明日も頑張れる。

「夫婦って、こういう事か。」
しみじみとそう思った。



相手が家事をやり残した時、
以前の私は夫を責めていた。

家事を分担すると決めたんだから、
あなたの担当はちゃんとやってよね、と。

だけど今回のことで考えさせられた。

夫婦生活というものは、
決められた役割を全うするために
正しく暮らすんじゃなく、
楽しく暮らす
ものだと。

目に見えない助け合いを忘れちゃいけない。

そう言いつつも、
きっとまた私は忘れてしまうだろう。

だから夫の仕事が落ち着いても、
月に一度くらいは、家事解放dayをやろうと思う。

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