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息子,戦国武将の記事を書く―13歳,はじめての調べ学習もどき

小学2年生からおよそ6年間,生活体験・遊び中心のフリースクールへ通っていた息子は,中学2年になった今年,学習プログラムのあるフリースクールへ通い始めた。

今は,新しいことを知る環境が新鮮でたまらないようだ。

先日は,他の生徒さんの提案で雑誌を作ることになったと,興奮気味に帰ってきた。

戦国武将好きの彼は,浅井長政に仕えた武将,磯野員昌(いその・かずまさ)について書くことを決めたのだそうな。知名度が低い武将だが,姉川の戦いで信長を追い詰めたということで彼のお気に入りの武将なのだ。

「ここに磯野員昌の絵を入れて,タイトルはここ,その下に文章と年表,右側には合戦のときの図も入れて…」とすでに頭の中にレイアウトができている。A4で2ページほどにまとめるのだそうな。

「へーすごいね。で,いつまでに作るの?」

「来週!」

え? あと1週間ですか?

一般的な中学2年生ならば,調べ学習は小学校のうちから慣れているから,自力で1週間もあればまとめることができるだろう。しかし,うちの息子は小2から学校に行っていない。文章を書くのは,半年前に通級指導教室で先生に手伝ってもらいながら書いた作文以来。調べ学習は,もちろんしたことがない。

後で先生に聞いたところ,マンガ雑誌を作ることになったが息子くんは絵が苦手だから当初は参加しないと言っていた。しかし年下の生徒さんに誘われて参加を決めたとのこと。

他の子がマンガなら,もうすこしライトなテーマで良かったのではないの?戦国武将について調べてまとめるなんて,なぜ自らハードルを上げるんだい!?

やる気満々だがどうしていいのかわからない息子に手伝ってくれと頼まれ,ハハは付き合わされることになった。

うちの戦国武将図鑑には磯野員昌の記事はほんの少ししかないので,まずはWikipedia他の記事を検索して読ませてみる。

員昌は戦に強く,その実力ゆえに主君との関係で苦労し不遇な運命をたどったという魅力的な人物。この人を選ぶとは,なかなかいいセンスだね。

ちなみに主君・浅井長政に裏切りの嫌疑をかけられたため,母親は磔にされている。あぁ,戦国武将の母親でなくて本当によかったよ。

さて,情報を集めたところで書き始めようとするのだが、またどうしたらいいのかわからない様子。

そこでプリントアウトして大切なところに線を引かせた。こうした作業も息子は初めてなので,どこに線を引くか大いに悩む。員昌は,面白いエピソードが盛りだくさんで,記事の全てが大切に思えて下手をすると全部に線を引きそうな息子に,特に重要なところはどこかを考えさせた。

ここまでで既にハハは疲れていたが,本人はいよいよやる気。執筆にとりかかるためにパソコンに向かった。

…と思いきや,なかなか進まない。いちいち止まるのだ。

息子「この人の母親や養父は誰だったんだろう?」

ハハ「それはどこにも書いてないでしょ。わからないことは書かないでよろしい。それを調べたければ大学の史学科でも行ってください。」

息子「う~ん,文章の終わり方はこれとこれと,どちらがいいかな」

ハハ「とりあえず書いて,後で直せばいいから! 次!」

息子「この部分も書きたい,あのエピソードも書きたい」

ハハ「全部書いていたら分量をオーバーするから! 次!」

息子「ここの内容をどうまとめていいかわからない」

ハハ「もう箇条書きでも,単語だけ並べるのでもいいからさ! とにかく頭に浮かんだことを書いて! そろそろ,ハハは風呂に入りたいんだよ!」(それに,君にパソコンを貸しているからnoteが書けないのだよ。)

…という調子で,5行まとめるのに2時間はかかっただろうか。

この調子で文章を書くのに3日間。

合戦の図を入れるのに1日。

毎日夕食の後に記事づくりをして,寝不足になった一週間であった。

完成した記事は,タイトル,磯野員昌の生涯,姉川の戦いの説明と合戦図,磯野員昌のエピソードとして有名な十一段崩しの説明で、見開き2ページ。

意外といいじゃない? 

学校に行っていなくてもこのくらいできるんだ。

驚いたのは,難しい言い回しを知っていること。彼は分厚い戦国武将図鑑2冊を繰り返し読んでいたが,それ以外の本は1度読むともう読まないし,最近はYoutubeばかり見ている。図鑑を読むのは読書のうちに入らないと考えていたが,戦国武将図鑑は凝った表現が多いから、ある程度の語彙力は養われるのですね。

パソコンだから,漢字が書けなくてもOK。

一方で長い文章を書くのと,たまに主語と述語が対応しなくなる。

文章をまとめたり,言い換えたりすることにもかなり苦労していた。これは回数を重ねないとできないらしい。

調べ学習って,いろいろな能力を総動員するんですね。

情報を集める能力,読解力,情報を取捨選択する能力,複数の情報を統合する能力,情報を整理してまとめる能力,文章力,ビジュアルにまとめる能力,パソコンを操作する能力…

特に情報の取捨選択とか統合したり整理する能力は,これからどんな世界で生きるにしても必要そうだ。でもどうやったら身につくのだろう? 自分はどうやって身に着けたのだろう?

数学や英語などの教科の勉強方法は,自分の中高生のときのことを思い出せば教えられる。しかし情報管理の能力や読解力や文章力は,意識的に勉強してこなかったのでどう伝えたらいいのかわからない。国語の勉強がそれだったのかな?

国語のドリルは息子がやりたがらないのだが、この力を家庭で身につけるには、どうしたらいいのだろう。

楽しみながら、しかし記事作りほど苦労せずに少しずつ、情報を整理したりまとめるには?

さて,雑誌が出来た日,息子が帰ってきた。

ハハ「どうだった?」(いい記事だったとほめられたでしょ?)

息子「そうだけど…」(そうでしょ。ハハの小鼻がちょっとふくらむ。)

息子「だけど,あ~,ちょっとなあ」

ハハ「え? だってよくできていたじゃない」

息子「いや~,僕,完璧主義だからさ,ほらA型だし。なんか満足できないんだよね」

ハハ「へ…?」

息子「もう1本,記事を書く。今度は佐竹義重!」

誰それ~!

知らないよ!!

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