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少女はロボットに出会った

 少女はロボットに出会った。

 いつかわからないほど昔の時代に森の奥地に捨てられた巨大なロボット。もうずっと何百年もひとりぼっちだったけれど、たまたま森にやってきた少女が見つけて、彼に恐る恐る話しかけた。

「あなた名前は?」

 しかし、ロボットは沈黙を続ける。返事が来ないのに無視をして、少女はそのロボットに色んな話をした。来る日も来る日も、毎日毎日。

 ある時は両親の話。二人とも仕事が忙しくてなかなか帰ってこれないらしい。私の面倒はおばあちゃんがみてくれているの、と少女は言った。

 ある時は好きな花の話。この森に咲く青い花が好きなの。珍しくてあんまり見かけないんだけど、とっても綺麗なのよ。いつかこの辺りを一面お花畑にしてみたいのよねって少女は笑った。

 ある時は好きな言葉の話。私の好きな言葉はね、きっと、って言葉。本当の意味は違うんだけど、きっとって言ってるとなんでも叶う気がする。だってね。きっとそのうち友達ができるって願っていたら、あなたに出会えたの。

 少女は毎回帰る時に必ずこう言った。

「明日もきっと来るからね、ちゃんと待っててね」

 でも、そんなある日、突然少女が会いにこなくなった。一日二日、やはり少女は会いにこなかった。森の外から、いつか聞いたことのある音が聞こえた。爆発の音。壊れる音。戦争の音。

 ロボットは残っている最後のエネルギーを使って動き出そうとした。でも、動いたら、もう戻ってこられないかもしれない。

 そんな時に彼女が言っていた言葉を思い出した。

「きっと来るからちゃんと待ってて」

 だから、明日、また明日って、そんな風に考えているうちに一ヶ月が経った。ロボットは意を決した。一言呟いて、動き出した。

「キット…マタアエル」

 しかし、森を出たそこで見たのは、辺り一面の焼け野原だった。ロボットはショックとエネルギー切れで、自ら長い眠りに入った。

 どれだけ眠っただろう。目が覚めると、目の前には満開の青いお花畑が広がっていた。

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