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X先生の塾日誌

vol,1 未知との遭遇 ある日、不思議な同僚ができた。 僕は街の小さな塾の一講師。昨日、教室長が「講師不足を救う新しい先生だよ」と連れてきたのは、ちょっと銀色に光っている宇宙人だった。 「彼は毎日シフトに入れるらしいから助かるよ」と教室長は笑っていたが、なんだか色んなことが間違っている気がする。 まさかここから地球侵略を始める気では…と疑惑の目を向ける僕に気付いたのか、宇宙人がこちらに寄ってきて言った。 「不慣れなことが多くご迷惑をおかけすることもあるかと思いま

    • ある父より

      「ねぇねぇ」と僕を起こす声。  眠い目をこすりながら、笑いかける君を見る。小さな眼が僕を見つめている。そうだね、君が起きろと言えば、僕は起きる。僕は眠るのが大好きで、横着で、それに最近はいつも寝不足だから、王様でも弁護士でも大統領でも出来ないことを、君はやっているんだよ?なんてそれは大袈裟か。  君のお母さんが空の上へ旅立って、もう1年になる。男手一つで君を育ててきたけど、うまくやってこれたのか、自信はない。甘やかしすぎたかなとも思うけど、いい旦那さんになかなかなれなかっ

      • 少女はロボットに出会った

         少女はロボットに出会った。  いつかわからないほど昔の時代に森の奥地に捨てられた巨大なロボット。もうずっと何百年もひとりぼっちだったけれど、たまたま森にやってきた少女が見つけて、彼に恐る恐る話しかけた。 「あなた名前は?」  しかし、ロボットは沈黙を続ける。返事が来ないのに無視をして、少女はそのロボットに色んな話をした。来る日も来る日も、毎日毎日。  ある時は両親の話。二人とも仕事が忙しくてなかなか帰ってこれないらしい。私の面倒はおばあちゃんがみてくれているの、と少

        • 聖夜に奇跡は起きない

           聖夜に奇跡は起きない。  生まれてこの方、その日に良いことがあった試しがない。  プレゼントは忘れられるし、自転車は大破するし、彼女には振られるし、前の会社は倒産するし、散々だ。しかも、その日は僕の誕生日でもあるのに。  だけど、いくら嫌でも毎年その日はやってくる。今までどこにいたの?ってぐらい人は増えるし、道は明るくなるし、空気は澄むし、街は浮かれる。  僕は今年もそのはじっこを背を丸めながら歩く。仕事終わり一人暮らしの家までの帰路。強い向かい風に吹かれながら、「

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          早口言葉

          「早口言葉を3回噛まずに言えなければこの世界を滅ぼす」  いきなりだけど、想像してみて欲しい。朝目覚めたら目の前に神と悪魔を名乗る超ビッグサイズのお爺さんとムキムキの悪そうな顔の奴がいて、突然僕に向かってそんなことを言い出した時の気持ちを。夢か?幻か?ほっぺたつねっても目は覚めない。  なぜ僕が?ここどこ?あんたら誰?そもそもなんで早口言葉?色んな疑問が浮かぶが、自称神様が「好きな早口言葉を選んでいいぞ。あと十秒で始める」なんて言うから、すべて吹き飛んだ。  え、え、何

          早口言葉

          ファミコン

          ぼくがその日欲しがったのはファミコンだった。 「何がいいの?」と訊かれて、少し考えてから答えた誕生日プレゼント。小さな部屋で寝たきりのぼくは、長い退屈を紛らわせる相棒が欲しかった。 ファミコン、ずっとやってみたかったんだよね。結構古いゲーム機だというのはわかってる。でも今の最新型のパソコンみたいなゲーム機より、なんだかとってもシンプルでいいんだ。 家族は一瞬戸惑ったけど、すぐに了承してくれた。探すのは苦労したみたいだけど、なんとかオークションでゲットできたみたいだ。

          ファミコン

          レッツ神様チャンス

          あと1年。 二十三歳、独身、一人暮らし。仕事は、コンビニの店員と居酒屋の店員とたまの工場勤務。六畳一間のアパートに住み、趣味はなし。強いて言えば、漫画雑誌の読書。こんなどうしようもない僕に、今年初めて舞い降りた特大の事件は、まさかの余命宣告であった。 しばし途方に暮れて、仕事を無断欠勤し、店長に怒られて、一年後のことより今の事のほうが重要だと気付いた。とりあえず仕事をしなければ、来月だって生きられない。まずは仕事だ。働こう。幸い今のところ身体に異変はない。医者は入院を薦め

          レッツ神様チャンス

          新中学問題集

          僕の姉は新中学問題集だった。 僕が新中問(略してこう呼ぶ)と出会ったのは、小学六年生の頃。僕がもう少しで中学生というタイミングで、「これ、お姉ちゃんが使っていたやつよ」とお母さんからその教材を渡されたのだ。 そのお古の新中問は、あちこちにチェック(おそらく間違えた問題の印だ)があったけど、お姉ちゃんは問題はノートに解いていたみたいで、汚れはほとんどなかった。 僕と姉はそこそこ歳の差があるから、後から考えてみれば学習指導要領とかがだいぶ変わっていて、教材としての使い勝手は

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          塾講師が異世界転生したら魔法使いの弟子ができました

          気がつくと、そこは異世界だった。 頭の中で散らばった記憶を拾い集めてみる。 あれはたしか、大学からの帰り道。 事故に巻き込まれた僕は、吹っ飛んで意識を失った。そして、今だ。 目の前に広がるのは大きな城とファンタジー調の街並み。どうやらここは城下町らしい。 こういう展開は何度も本で読んだことがある。 割と落ち着いているのはそのせいかもしれない。もしかしたらただの夢かもしれないし。 今まで読んだいくつもの物語では、異世界に飛ばされた主人公はスライムになったり魔王になったり賢者

          塾講師が異世界転生したら魔法使いの弟子ができました

          生活

          今朝君が出し忘れた段ボール まだ間に合ったから捨てといたよ ゴミ箱に半分かかったビニール袋に 君の慌て具合が透けて見えてにやける いつの間にか足についてたシール 剥がしながら膨れる君の頬を撫でる シンクの片隅に散らばった卵の殻に 窺える努力の跡に感謝をしながら 家の中のあらゆる場所に君の残骸 拾い集めておくよ 忘れないように いつか手作り感満載のアルバムを届けるから 一緒に笑い転げながら暮らそう 生活とはつまり君と生きること 隙間から無理やり挟まれた新聞紙 引っこ抜いて

          春十五番

          だいぶ遅れてやってきた 一番みたいな顔をして ああ、いいないいな、なんかいいな あんな風に堂々と生きてみたいな 考えてみれば他の誰もいつも 私を見続けてはくれない 考えたって答えなんて出ないなら ただただ気持ちのいい方向へ 向かってみてもいいかな 強めの圧で吹いてきた あれもこれも吹き飛ばして ああ、いいないいな、なんかいいな きっと怖さより勝るものがあるんだろうな 言われてみれば他の誰も何も 私には関係がない 言われた通りやってみてこけたって 誰も責任をとっちゃくれな

          春十五番

          One

          窓から外の風景を見るのが好き。 ゆっくり、変わっていく景色を眺めながら 色んな事を考えるんだ。楽しいことも、楽しくないことも 浮かべてみて、答えを探そうとするんだ。 困ったら、あくびを一つ。 「ずっと一緒に居られるかな」 何度も浮かべた、一番の心配事。 私は今、大好きなあなたと一緒に暮らせているけれど これが永遠に続くはずがないってことは、知っている。 いつだって、本当の願いは叶わないことばかりなんだ。 二人で散歩をした春。 花粉症のあなたは少し嫌々だけ

          ねこじた

          「おい、君。一体どれだけ待たせれば気が済むんだ」  威圧的なその声に、ウェイターがびくっとして、「只今お持ちします」と反射的に返答し、そそくさと厨房の方へ戻っていく。ウェイターの君が急いでもどうにもならないんだよね、大変だよね、と同じ飲食業界で働く私は同情したくなるが、英幸さんは「わかればいいんだ、わかれば」という風に小さな笑みを浮かべ、腕を組んでいる。  彼はいつも強気だ。自分は間違っていない、という絶対の自信と態度には、付き合う前は人としての強さを感じていたのだけれど、

          ねこじた

          【絵本版】夜色のねこ

          短編物語「夜色のねこ」の絵本版です。楽しんでいただけたら幸いです。

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          【絵本版】夜色のねこ

          夜色のねこ

          黒猫が一匹、寂しそうにしてる。 見かねた魔法使いが、空を真っ暗にした。 黒猫に、初めての友達が出来た。 闇。 その友達は喋らないけど、 黒猫のことを怖がったりはしなかった。 それが嬉しかった。 でもある日、 闇の中で泣き虫な女の子が「怖い」って泣いた。 神様がやさしく笑って、空に大きな丸を浮かべた。 月だ。 輝くそいつは、 黒猫には眩しすぎて、 目をつむった。 怖くなって、震えていた。 月が浮かんでも、女の子はまだ泣いていた。 神様は、空に光をばら

          夜色のねこ

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          「おぬし!それは真か!」 僕の大学の友人の山本くんは忍者です。 実家が代々忍者の家系みたいで、リアクションも割と古風です。 「某」とか「拙者」って普通に言います。 最初は彼の一挙手一投足に驚かされっぱなしな僕らでしたが、 今じゃ同じ英語のクラスの全員がそれに慣れ、男性陣は週5で遊ぶ仲です。 今日も授業終わりが被ったので、僕と山本くんは駅前のスタバで、 他のみんなの授業が終わるまで時間つぶしをしていました。 「本当だよ。ほら、名前を入れると検索もできる」 その

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