ファミコン
ぼくがその日欲しがったのはファミコンだった。
「何がいいの?」と訊かれて、少し考えてから答えた誕生日プレゼント。小さな部屋で寝たきりのぼくは、長い退屈を紛らわせる相棒が欲しかった。
ファミコン、ずっとやってみたかったんだよね。結構古いゲーム機だというのはわかってる。でも今の最新型のパソコンみたいなゲーム機より、なんだかとってもシンプルでいいんだ。
家族は一瞬戸惑ったけど、すぐに了承してくれた。探すのは苦労したみたいだけど、なんとかオークションでゲットできたみたいだ。
誕生日当日、念願のプレゼントと共にそっと置かれたケーキのチョコレート板には、柔らかな文字でこう書かれていた。
「九十歳のお誕生日おめでとう」
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