One
窓から外の風景を見るのが好き。
ゆっくり、変わっていく景色を眺めながら
色んな事を考えるんだ。楽しいことも、楽しくないことも
浮かべてみて、答えを探そうとするんだ。
困ったら、あくびを一つ。
「ずっと一緒に居られるかな」
何度も浮かべた、一番の心配事。
私は今、大好きなあなたと一緒に暮らせているけれど
これが永遠に続くはずがないってことは、知っている。
いつだって、本当の願いは叶わないことばかりなんだ。
二人で散歩をした春。
花粉症のあなたは少し嫌々だけど
ちゃんと私の寄り道に付き合ってくれた。
悪戯をして叱られた夏。
でも、その後のいつもより豪華な食事に
あなたのやさしさを感じたよ。
車で遠出をした秋。
世界の広さと素晴らしさを感じながら
これからもあなたと色んな所に行けたらいいなって思ったよ。
落ち込むあなたに寄り添った冬。
「重いなぁ」って少し迷惑そうだったけど、きっと喜んでくれていたよね。
あなたは笑っていたから。
生まれてから死ぬまでの間、
私は、あなたと居る時間を一番大切にしたよ。
一番、幸福な時間。
楽しかったな。嬉しかったな。全部大切にしたまま、
お別れをするね。
窓から外の風景を見るのが好き。
あなたが帰ってくるのに一番先に気付けるから。
私は、
あなたが帰ってきたのを見つけて
一目散に玄関まで走って行くんだ。
いっぱいの嬉しい気持ちを込めて、何度も「ただいま」って言うんだ。
その言葉はあなたには伝わらないけれど
あなたが「よしよし」って頭を撫でてくれる。
たったそれだけで、すごく幸せなの。
同じように
きっと、伝わらないけれど
私の言葉は
あなたには届かないけれど
それでも。
あなたに抱えられながら
最後のお別れをするこの時に
ありがとうや
ごめんなさいや
さようならの気持ちだって全部込めて
私は、つぶやくの。
「あなたが大好き」
わん。
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