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「引用」の魅力を伝えたい

 「月が綺麗ですね」これは日本でおそらく最も有名な告白の隠語です。元ネタを探してみるとどうやら作家の夏目漱石が英語の教師をしていたときに”I love you.” を「我君ヲ愛ス」と訳した学生に対し「日本人はそんなこと言わない」とかなんとかいって示した訳文が「月が綺麗ですね」の由来になったんだとか(諸説あり)。つまりこの言葉は夏目漱石の訳を引用したものだったんです。

 引用、難しい本やきちんとした文章で多用されるこのテクニック。日常生活で使うことは少ないかもしれません。ですがこの引用、使ってみるとめちゃくちゃ便利で面白いんです! 
今回はそんな引用の魅力を一部ではありますが紹介していきたいと思います。

メリット1 説得力がすごい→頭良さそう


 まずぱっと思いつく最大の利点はやはり自分の文章に説得力が生まれると
いうことでしょう。

「巨人の肩の上に立つ」

 これは私の指導教官お気に入りの言葉です。物理学者ニュートンが手紙の中で”引用”したことで一躍有名になったこのフレーズは引用の大切さを教えてくれます。
 自然科学系の学術論文には必ず”リファレンス”というものがあり、引用した論文を全てここで示します。やはりプロの世界で引用は必要不可欠。
「でも別に論文なんて書く予定ないし」確かに日常生活で論文を書く機会はなかなかありません。しかし、日常生活でもプラスになるメリットがあります。それは頭が良さそうに思われるということです。

「そんな言葉(長い間、人々に読み継がれてきた言葉)を、出典を明らかにして文章の中にうまく入れ込むと、文章がより光り輝き始め、読んだ人に「読んで得したな」と感じてもらうことができます。

斎藤孝「大人のための書く全技術」KADOKAWA

ほら、なんか頭良さそうじゃありません?

こんなよく分からない人間が書いた文章でも引用を用いることでなんか頭良さそうな文章を簡単に作れるのです!

メリット2 ”弾を打ち込む”ワクワク


 ラップバトルの世界には”サンプリング”というテクニックがあります。有名な曲の歌詞や過去のバトルで使われたフレーズを引用する手法です。ヒップホップの世界ではTOP OF THE HEAD (即興主義) の考えがあるため、一部の人からは”ネタ臭い”などと馬鹿にされますが個人的には滅茶苦茶かっこいいと思います。

「レゲエはいつでも「ネタ」じゃなくて「弾」というから覚えときな」

フリースタイルダンジョン 7th season MAKA vs JUMBO MAACH 1st round

という言葉を聞いたときはハッとさせられました。ここぞというタイミングで自分が触れてきた大量の格言やフレーズから1つの言葉を放つ。場面にあった言葉をバチリとはめ込むことが出来たときの優越感といったらありません!まさにハイになるってやつです。そのうえサンプリングを意識すれば本を読む時間も”弾”を仕込んでいる気分になり、読書をさらに楽しむことが出来ます!

注意1 クリシェ

 cli・ché 
(陳腐な)決まり文句,(使い古された)常套(じょうとう)語句,月並みな考え

「ランダムハウス英和大辞典」 小学館

 ただし、楽しい楽しい引用ですが2点ほど注意点があります。1つ目はクリシェです。引用すると確かに頭が良さそうに見えるのですが、あまりにも有名な言葉を引用すると逆効果になることがあります。ちなみに私は中学の意見発表大会でドヤ顔でクリシェな引用をかまして国語の小林先生の顔を強張らせてしまいました、ごめんなさい。
 いくつか例はいくつかあるのですが、名誉のために記載はやめておきます。とにかく、引用をするときはいったん立ち止まって「ほんとにこれ大丈夫か?」と考えるのが重要です。もしくはドヤ顔せずにさらっと言ってしまうのが無難です。

注意2 パクリ。ダメ。絶対。

 引用をしまくっていると「これ、いっそのこと自分の言葉としていっちゃおうかな」という邪な気持ちになることがあります。気持ちは分かりますがダメです。引用人としての節度とプライドをもって抑えましょう。
 個人的な境界線としては「バレるのが嫌ならパクリ、バレて嬉しいのがサンプリング、バラすのが引用」です。(正直この言葉も何かのパクリな気がしないでもない…)
 とにかく、自覚があるなら胸を張って堂々と引用しましょう。引用元を示さないで引用するとレポートなら大幅減点、最悪0点になってしまいます。

と色々注意事項を述べましたが引用は楽しいです。臆することなくトライして頂ければと思います。最後に、未来の引用人に向けてのエールを寺山修司の言葉から引用したいと思います。

「たかが言葉で作った世界を言葉でこわすことがなぜできないのか。引き金を引け、言葉は武器だ」

寺山修司「邪宗門」

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