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とりとめのない日記2

7月●日 晴天 暑い
「星降る夜には」

今日は星降りの日。カップル達はロマンティックに、子ども達はワクワク顔で夜を待つ。

6月の終わり頃から、街は星降りに向けて星モチーフのものが売られていたり、星ジュースを入れるためのマグを売り出したり、星降り一色だ。

さて、今日はそんな星降り当日。
実は私は、こういった類の行事やお祭りが好きである。結構好きである。
わざわざ新しいマグを買ったりはしなかったが、仕事を調節し今日と明日は休みにした。
昼間から日が落ちるまで眠り、星降りに挑んだ。

今年もとても美しかった。

今年も空が暗くなり夜9時ごろから、流れ星が空に見え始めた。
段々と流れ星の数が増え、それらがぶつかり合い、カーン、キーン、カーンと高く澄んだ音を発する。
星と星がぶつかると、それらが削れるのか空から飴色の欠片が落ちてくる。
それを手のひらいっぱい拾い集め、持参した水筒に入れる。
欠片を入れると水筒の中が、淡く光る万華鏡を覗いたように綺麗だ。
クラッシュした氷と水と(今年はアレンジで炭酸水にしてみた)星の欠片を水筒に入れシャカシャカ振って飲む。

もうちょっと欠片を足せばよかった



冷やし飴から、ピリッと感をとり、さらに粘度を上げフリージアの花の香りを足したような味がした。
そして目を瞑ると、星の記憶が見れるのだ。

こんな感じの映像が、一口で2.3分ほど見れる

最近は得体の知れない『星の欠片』を、しかも地面に落ちたものを拾って飲むなんて出来ない!子どもにも絶対にさせない!と言った声もあるようだ。それも時代の流れなのかもな。

私の親は、潔癖気味で子どもの頃は「星なんか食べるな!」とうるさく言われていた。
しかし友達も飲んでいるし、一度は星降りの星を口にしてみたい。小学2年生頃ベランダにお椀を置いておき、夜中にこっそり欠片だけを飲み込んだ事があった。
強い甘みと口の中で弾けるような感覚。感じたことの無い衝撃で頭が揺れ、あまりの事に私はその場でしばらくうずくまってしまった。
頭の中では、星の記憶が次から次に再生された。と思う。正直あまり覚えてない。
私が次に記憶にあるのは、病院のベットの上で、親からはこっぴどく怒られた。
星の欠片を飲み込んだ後、うずくまって目と口と鼻と穴という穴から(毛穴からも)淡く青白く発光していたそうだ。
それを発見した両親は、救急車を呼び病院に連れて行ったとの事だった。

今も私が星降りを楽しみにして、用法容量を守り安全に星の記憶を楽しんでいると両親が知ったら、どんな顔をするだろうか。

7月●日 くもり
「風鈴」

この頃、布団で横になると風鈴の音が聞こえる。
不思議な事に、昼間は全く聞こえない。

夜寝苦しく、水を飲もうと寝返りを打つとチリーン、チリーンと高く響く音が聞こえた。鮮明に聞こえる。
が起き上がると音は小さくベランダに出て確認するも、どの方向から聞こえるのか、わからない。
次の日そろそろ寝ようとすると、やはり聞こえる。
煩いわけでは無いが、気になってくる。

その日から、風鈴がどこにあるのか洗濯物を干す時、家路につく時、風鈴の音が聞こえないか耳を澄ませた。
私が帰宅する時間や、休みの日の昼間には聞こえない。風が無いわけでも無い。不思議だ。

音はやはり、夜眠ろうとすると、どこからとも無く聞こえてくるのだ。

そんな日が1週間ほど続いた頃、まとめネットサイトに『最近どこからか風鈴の音が聞こえる』と言うものがあった。
まとめサイトの管理人も聞こえていたそうで、SNSの情報や、ネット上の情報を探したところ原因がわかったそうだ。
山姥草と言われる物の綿毛の先についた種が、原因だそうだ。
たんぽぽの綿毛くらいの大きさで、見た目も近い。これの種子の部分から風鈴のような音が聞こえるのだ。

元々は日本の山奥に生えている、珍しい植物なのだと言う。
それがここ数年、関東圏でごく稀ではあるが目撃されているそうだ。

そのまとめサイトの管理人は、ジャンパーの襟元に綿毛がくっついていたらしく、外出の時にだけ風鈴の音が聞こえたそうだ。
当たり前だが謎の風鈴の音が、どこまでもくっついてくる事に気味の悪さを感じ参ってしまったとの事。

しばらくは、風鈴の音が聞こえない室内が安堵の場所となり自宅に引きこもっていたとの事。(原因がわかり、今は元気に外出しているとの事だが。)

この記事を読んで、私も早速布団周りを確認した。
結果として枕カバーの内側に、綿毛が張り付いており耳に近付けるとチリーンと高く氷がグラスにぶつかる様な音がした。

綿毛を摘み、ベランダで風に離してやった。ふわふわと飛んでいき見えなくなった。

もしかしたら、誰かの服にくっついたり、あるいは散歩をしている猫にくっつき出所不明の澄んだ音を聞かせるかもしれない。

その日は、久しぶりに静かに眠れた。

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