見出し画像

今 誰よりも登らせてあげたい人の話 -右半身麻痺のあるミキさん-

1人でクライミングしにいくと後ろからジムのスタッフさんがムーブを教えてくれるんですけど、いつまでもその課題が登れなくて緊張感が走る瞬間ありますよね。

どうも、NPO法人モンキーマジックのうちだです。飲み込みの悪さに定評があります。

そんな時スタッフさんはどう思っているのかなと常々思っていたら、私もよく知るボルダリングジムの店長さんがこんなブログ記事を書いていました。

要約すると、右半身に麻痺がある女性がひとりで来店。聞けば、私たちモンキーマジックが主催の障害のある方対象のクライミングスクールに一度参加したきりの初心者とのこと。ひそかに登るのを見守っていた店長さん。

本人から「やっぱりやめときます」という言葉は出てこない。登れないのに料金をいただくわけにはいかないので、頭の中では「登れないし、危ない。あと数トライしてみて返金をしよう。」と、それが正直な思いでした。
(ブログより引用) 

それでも課題に挑戦しつづける彼女を見ていた店長さんは「返金をしよう」と考えるのをやめたと言います。

「登れない」ことが、「登ることをやめる」ことにはつながっていないんだとわかったから。たとえそれが一番簡単なコースであっても。
(ブログより引用) 

…このブログを読んで「彼女はその時、何を思っていたんだろう」と思い、直接お話を聞いてきました!

対面!

五分咲きほどの桜がきれいな公園で待ち合わせ。女性のお名前はミキさん。
年齢も近く、気さくそうな方でホッとしました。早速お話を聞いていきます。

画像1

ーミキさんの障害について聞いてもいいですか?

生まれつき右半身麻痺で、右手足に力が入りにくいんです。アキレス腱がうまく曲がらない部分は補装具でカバーして、杖をついて歩いています。
根っからのインドア派で、スポーツはほとんどしません。体育もよく見学していました。
都内に勤めているんですが、以前歩きで通っていたら不調になったので、今は車椅子で通勤しています。坂を登る時は腕の力を使いますが、仕事もデスクワークで基本座りっぱなし。「さすがに脚を動かさないとやばいでしょ!」という気持ちになっていたところに、クライミングに出会いました。

ークライミングをしたきっかけは何だったんですか?

きっかけは、車椅子ユーザーの友達に誘われて行った講演会で、パラクライマーの畠山さんに出会ったこと。ご夫婦で参加されていて、講演会の後の懇親会でもたくさん話してもらいました。
でも、何より驚いたのが腕!「何したらそんなに筋肉つくんですか!」と驚いていたら、畠山さんが腕だけで登っている動画を見せられました。

ーその流れでモンキーマジックのスクールにご参加いただいたんですね。

画像4

全身運動であるクライミングは、運動してこなかった自分にとって、発見の連続。「自分の身体ってこんな風に動かせたんだ」という驚きと、どのように障害をカバーすれば登れるのかを探るのが快感でした(笑)

手足の進め方や難しいと感じるポイントも人によって違って、自分なりの方法で「正解」にたどり着こうとできるのが、負けん気が強い私には合っていたと思います。

「右半身麻痺なんです」と話したら、突然ボランティアスタッフの男性が片足で登り始めたのには「変わった人だなー!」とちょっと驚きました(笑)
(※注 モンキーマジックのイベントには視覚障害の方をはじめ、様々な障害の方が参加されるので、見えている参加者さんが目かくしをして同じ課題を登ったり、片足で登ってみたりするのはよく見る光景です。)

私の障害は生まれつきなのであまり気にすることはなかったんですよ。でも、こんな風に寄り添ってくれたり、前向きに捉えてくれたり、相手にとって何か刺激になるなら、それは嬉しいです。

トップロープクライミングは想像以上に難しかったです。実際に登ると、畠山さんの動画のすごさがよく分かりました(笑)
でも、畠山さんが登った課題は、「私も絶対登りたい!あの石(ホールド)に触りたい!」と思って、ビレイヤーさんに何度も挑戦させてもらい、達成できました!

ー(冒頭の)店長さんのブログについて聞かせてください。

私もあの記事を読んで、店長さんとも話をしました。
あの時は「早くまた登りたい」という気持ちで、ボランティアスタッフに紹介された、家から近いボルダリングジムに行ったんですが、ボルダリングはトップロープと全然違っていて難しかったです。

ー色んな人に見守られていたのはプレッシャーではなかったですか?

「前回味わった悔しさを超えたい」と思って一心不乱に登っていて、店長さんや常連さんたちにもアドバイスをたくさんもらったと思うけど、正直全然覚えてないくらい(笑)
なので、スタッフさんがいることもプレッシャーではなかったです。

きっと、大人になった今だからこんな風に楽しめるんだと思います。
ひとり暮らしを始めたり、仕事での挫折も、色んな経験をしてきたから、「他人は他人、自分は自分」と思えるのかなと。
まだ2回登っただけなのに、あれから、次登る時までに少しでも足腰を強くしたくて、屋内でできるトレーニングを始めたりしています。仕事にも前向きに取り組んだお陰で認めてもらえたり、「自分で選ぶ」って本当に大切だと思いました。

あとは、ひとり暮らしはコミュニティがなくて、関係性を広げたいのもあって思い切って飛びこんでみたけれど、お酒の席も好きだし、面白い人たちと出会えるのが楽しみです!新型コロナウイルスが収束したら、たくさん登りたい!!

画像2

まとめ

ミキさんがインタビューの中で繰り返し言っていたのが、3/20(金)に広島の福山で予定されていた「パラクライミング日本選手権2020」(開催中止)。
現地に応援に行くはずだったそうです。ああ、日本中のパラクライマーの登りをミキさんに見てもらいたかった。すごく興奮してくれただろうなぁ。

インタビューの合間にミキさんの撮影をしていたら、通りすがりのおじさんに「撮ってあげようか」と言われ、なぜかツーショットをゲットしました。

画像3

ミキさん、ご協力いただきありがとうございました!!!

これはNPO法人モンキーマジックに関わる人たちに、スタッフがお話を聞きに行くマガジンの第1弾です。第2弾をお楽しみに!


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?