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中島らも「いいんだぜ」

時々無性に聴きたくなる曲。
この人の曲ではおそらくこれが一番有名だろう。

 この人を最初に知った頃、そもそも何者なのかが良くわからなかったのだが、いろんなサブカル雑誌でコラムを書いていて、その文章もなんとも面白く、テレビとかで観るといつも酔っぱらっているようで、わけのわからないことを言っているようでいて結果的にちゃんとつじつまが合うというか、ある意味、真に言葉を自在に操る人なんだと感動したのを覚えている。

 私はこの曲を聴くたびにこの人とチャールズ・ブコウスキーに類似性を感じてしまう。
 破滅的な生き方もとても良く似ているけど、コンプレックスや繊細な神経を持ち、人の裏側まで見透かせる目で自分の心を見透かしてそれを曝け出して詩を書き、言葉を発する。

 流麗な言葉の羅列が美しい詩になるわけではないし、起承転結がはっきりしてプロットが練り込まれたストーリーが良い小説とばかりは言えない。
 最期まで救われず、内奥にもやもやを抱えたまま、変わることなくただ時間が過ぎることもある。ただ作家はあえてそんな事を書かないだけだ。きっとお金にならないし、他人は面白いと思わないだろうと推察するからだ。
 ブコウスキーは、そして中島らもはそれを書いた。吐き散らすようにそれを書いた。
「いいんだぜ」
 中島らもが残酷になまでに真実を捕え、それをそのまま受け入れる優しさに満ちた曲だと思う。


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