思春期の水曜日 其五

 茶髪眼鏡も楽じゃない。親から早く独立したいと考えて、いつも家では喧嘩が起こる。喧嘩両成敗だから、自分にも原因の半分はある。それでも、早く家を出たかった。
 髪を染めた事で、小うるさい教師や風紀委員に目をつけられている。また、一時期は遺伝性の近視でコンタクトもしていたが、一度着けたまま寝てしまい、親に病院に連れて行ってもらう事態になった。それ以来、眼鏡をしている。
 ……こうして省みると、親から独立したがっているのに、親に世話になってばかりだ。それがまた、腹立たしい。
 ため息一つついて、机に頬杖をついて現実に戻った。机に座ったまま、教室を見渡す。皆が学級委員の恋愛話で持ち切りだ。私の前の二人も、その話をしている。片方は事情通の女子、もう一方は学級委員の友人だ。ちなみに当の学級委員は、教師に呼び出されている。皆が、当人のいないところで噂話をしているわけだ。私も興味があった。
 前の二人の会話が終わったところで、私は学級委員の友人の肩をつついた。
「ねぇねぇ、学級委員の二人、本当に最後まで済ませるほど関係深いの?」
 振り返った友人は、
「うん、そういうふうに、聞いているよ」
 そう答えた。私は更に言った。
「中学生にして初体験か……どんなだったか、聞いてない?」
 友人は首を横に振り、
「そこまで、聞くのは、悪い気がして、聞いて、いないの」
 私は尚も尋ねようとしたが、教室の扉が勢いよく開いた。学級委員かと思い、私も含めた教室全員の視線が集まった。しかし、入ってきたのは学級委員でも教師でもなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?