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雪が降れば上京する①

――4月、全国の新入社員たちが新たな環境を前に、
緊張と期待で一喜一憂する季節。

しかし、当時の自分を振り返ってみると
いつ「辞表」を叩きつけてやろうかばかり考えていました。
そんなやばい人間こと、私、咲間佳歩です。

まあ、でも先の見えない今の時代、
いつ自分が「辞職」するかなんて分からないじゃないですか?

備えあれば憂いなしとも言いますので、
私が海辺の小さな田舎町から大都会・東京に上京し、編集者になるまでの話を数回に分けて書いてみようと思いますので
みなさんの来るべき「転職」の備えになれば嬉しいです。

(転職をしない人はちょっと頭のおかしい読み物としてお楽しみください)

1.入社式前からすでに「辞めたい」

当時、私が内定をもらった先は所謂「第一志望」の会社だった。
一見すると、何の問題もなかったはずの出来事も
実はある重大な問題を抱えていた。

それは…

「ゼミの先生がオススメしていたから」

といった、理由だけでロクに調べもせず
その会社を受けたことである。

最初のうちは早い段階で第一志望の会社から内定をもらい
先生から褒められ、親も安心させることが出来た喜びで
満足感に浸ることが出来た。

しかし次第に入社式の日程が近づき、
入社前面談の際に自分が何をするのか
未来の上司に質問したところ思わぬ答えが返ってきた。

フキダシ_上司 上

「君、営業ね」

フキダシ 下

フキダシ e 上

「え?」

フキダシ 下

営業という仕事自体を批判しているのではなく、
この会社が某機械工場であったこともあり、女性の私は
てっきり「営業事務の仕事」を任せられると思っていたのだ。

フキダシ 上

「そういえば…面接でそんなことを説明されたような…」

フキダシ 下

昔から思い込み強く、「女性は事務仕事」という固定観念に
当時ガチガチにとらわれていた私は
面接で説明のあった「営業」という単語だけしか聞かず
あまつさえ勝手に自己解釈を付け加えてしまっていたのだ。

フキダシ 泣く 上

「どうすんの!? やばいじゃん!」

フキダシ 下

気づいた時には入社2週間前…。
その時すでに一人暮らしを始めていた私は
今更内定を辞退したいです、なんて言い出せず
入社式の時点で暗い気持ちでいっぱいだった…。


2.先の見えない人生への不安

それから、長い新人研修が始まった。

今から考えると、この会社はかなり条件の良い会社だったので
新人研修にかなり時間をかけてくれたのだが
当時の私にとって、むしろそれこそが苦行か何かのように辛かった。

(再三念押しするが、営業職も機械工場も
ダメだと言っているわけではなく
あくまで「自分には合わない」と当時は考えていた)

新入社員が自分以外みんな男性で、疎外感を感じたということに加え、
元々文系畑だった私にとって難しい図面や公式
見せられたところで一切頭に入ってこなかった

その上

制服は作業着!
そして朝のラジオ体操!
(当時は朝が苦手だった)

もうね、これが大学を卒業したばかりの
世間知らずな女にはなかなか辛かったんですよ!

(関係者のみなさん、ほんとにすみません…)

でも、この際きれいごと抜きでぶっちゃけますが
事務職の女性はみんなブラウスにスカート、
リボンのついた制服なのに
私だけ男みたいな格好ってなんか不平等!

くらいには思ってました。

とはいえ、そんな不満を言っても明日のごはんが食えるわけじゃない!
と、毎日死人のような顔で会社へ出勤する日々。

先輩社員の方々が知識もなければ手先の不器用な私に
根気よく丁寧な実務指導してくださっていたのにも関わらず
やる気のない私は油で手が真っ黒になることに
いつも辟易としていました。


3.「まだまだ先は長いんだから」にゾッとした

それでも人は「慣れ」というものが訪れるもので。
夏ごろになると、毎朝のラジオ体操も
作業着に着替えることも、手が油まみれになることも
さほど気にならなくなっていた。

むしろ、凝り性の私は
生まれて初めて触れる知識を前にして
上司から少々褒められるくらいには
貪欲に機械知識を勉強していた。

もし危険な作業を研修することになったって
長くても一週間さえ我慢してしてしまえば
やり過ごすことだって出来た。

そう、少しの辛抱のはずだった…。

ある日、土曜の休みを利用して
職場で「草むしり」をすることになった。
いつもは新入社員で固まるばかりであったが
この日くらいは自由行動。

普段、あまり会うことのない女性社員との交流を楽しみながら
額に汗が出るのも構わず、草を一心不乱に刈り取っていた。

フキダシ_上司 上

「あら、関心ね~」

フキダシ 下

女性の上司が声を掛けて来た。

フキダシ_上司 上

「でもほどほどで良いのよ」

フキダシ 下

フキダシ 上

「はあ…そうですか?」

フキダシ 下

フキダシ_上司 上

「そうよ、だってあなた、これから何十年も
この行事に参加することになるんだから。
先はまだまだ長いわよ~!」

フキダシ 下

その一言に、私は全身の筋肉が硬直したかのように
動かなくなるのを感じた。

先が長い?
何十年も?

私は先ほど耳にした発言を何度も何度も反芻させ、
その意味を理解しようと努めたが
夏の暑さにやられてか、その時はただただ頭が真っ白になった。

帰り道、会社から支給された炭酸飲料を飲み、
ようやく熱の冷めた脳で考えをめぐらす。

「私、何十年も我慢したくない」

と…。

次回予告
次の記事では、地方にいながら「転職活動」「引越し」
どのように乗り越えて来たかについて
書いていこうと思います!
(かなり大きな「しくじり」をします…笑)


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