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雨の日の公園で寝ていたわたしが、人生で初めて睡眠を好きになった話

家に帰るのが嫌で、小雨の降る秋の公園で、夜を明かしていたことがある。

わたしの杜撰な睡眠体験は、これだけじゃない。

受験生活は、深い眠りを避けるために、机に突っ伏して毎日寝ていた。大学に入ってからは、飲み会から深夜に帰ってきて、メイクも落とさずそのままベッドへ。布団も枕も気にしない。翌日も早朝から遊びやバイトに出かけるので、睡眠時間は長くても5時間程度で、徹夜もいとわなかった。

寝なくても大丈夫だった。

寝ないことで、日々のパフォーマンスが下がっている感覚もなかったし、むしろ活動時間が増えるのは喜ばしかった。芝生でも、床でも、椅子でも、電車でも、自転車でも、どこででも寝れるのは、生きる力のひとつだと、ある意味誇りを持っていた。

あまりの杜撰さに、恋人に泣かれてしまったこともあった。「もっと自分の身体を大切にしてよ」と。そんなことを言われるまでわたしに自覚はなかったし、言われたあとも、実際に意識と行動を変えることは、なかなかできなかった。

変えてくれたのはコロナによる自粛だった。

在宅勤務になり、毎日往復3時間かかっていた通勤がなくなった。3時間分、時間が増えた。突然のことに何をしたらいいかわからなかったわたしは、これを期に3時間長く眠ることにした。夜は22時に就寝し、朝は6時まで寝た。

これまで、睡眠はつまらないものだった。

それは意識して睡眠時間を長くしても、同じだった。

でも、次第に睡眠環境の居心地の悪さに気付いた。ペシャンコになった硬いマットレス。ベッドの1/3を占める大きなクマのぬいぐるみ(お気に入り)。肌触りの粗くなったパジャマ。

在宅になって、貯金も増えた。なので、全て一新することにした。新しいフカフカのマットレスを買い、くまちゃんはリビングに移動させ、パジャマも気に入ったものを身に付けるようにした。また、ついでに心地よい香りのルームアロマをつけ、寝る前はスマホを置いてキャンドルの灯りで本を読むようにした。

すると、わたしは睡眠が好きになった。ベッドが、自分の部屋が、家が好きになった。夜が好きになった。1日が素敵に終わるようになった。

これまで、丁寧な暮らしというのは、つまらない、お高くとまった人たちが行う暮らしだと思っていた。お金と時間だけがかかる、非効率なものだと。

でも、実際にやってみると、このナイトルーチーンはわたしの心を豊かな満足感で満たしてくれた。つまらない日々を、あたたかくしてくれた。初めて。

人生はまだ、いろいろな楽しみ方がある。過去の楽しみだけに囚われすぎるのではなく、新しい楽しみを探しながら、柔らかく、受容と断捨離を繰り返していきたい。

今夜も素敵な夜にしよう。



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