もう会えないあなたを知り続ける
記憶のなかの父は、怒っている。
10歳のとき、わたしは父に連れてきたもらった近所のボウリング場を、3つ下の弟といっしょに抜け出した。ボウリング場に着いてから割引券を家に忘れたのを思い出し、「少し待ってなさい」と言って取りに戻った父を、数分後に追いかけたのだ。気持ちよく晴れた日曜日の午後の風のなかを、懸命に走った記憶がある。けれど結局追いつけず、別の道から帰ってきた父と入れ違いになって、散々探されたあと「どうして待っていなかったんだ、警察を呼ぼうかと思ったんだぞ」と、こっぴど