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咲寿太夫
2022年11月22日 17:19
4.半兵衛は頭の中で直接半鐘を鳴らされたかの如くの衝撃を受けた。寝耳に水とはこのことである。自身はただ浜松へ実父の弔いに向かっていただけであった。むろん、養母が千代を快く思っていないことは知っていた。だからといって息子が遠出をしているうちに息子の妻を追い出すとは。門火を焚く木片のように胸が燻って燃えてしまう。それは養母への怒りよりも、自身がそれを止めることのできなかった無力感と悔しさの炭火だっ
2022年11月20日 15:26
3.かるは嬉しげに「介抱をしててね」と千代に言うと、いそいそと障子を開けて台所に立った。「ごめんください」 表口から人のたずねる声がした。金蔵のように村の人間だろうか。幸い千代は奥の間にいる。かるは「どなた」と台所から離れた。玄関を開け、そこに立っていた顔を見たかるは胸の底から不快感を覚えた。「あら、いらっしゃい、リコンさん」皮肉たっぷりにその男を見た。千代の夫、半兵衛だった。わざわざ