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“ピダハン「言語本能」を超える文化と世界観” 第6章編


今日のおすすめは!
D・L・エヴェレット “ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観”
屋代通子訳


*本との出逢い
堀元見さんと水野太貴さんのYouTubeチャンネル”ゆる言語ラジオ”で話題となったこちらの1冊。



イビピーオってなんだろう、水野さんが語らなかった箇所について自ら読みたいという想いで手に取りました。
学びがあった記述やピダハンの情報などを、これから各章毎に分けて読書記録を残そうと思います。
ゆる言語ラジオリスナー(ゆるげんがー?用例?)に楽しんで頂けたらと思います。


それでは第6章からどうぞ!




*第6章

〈ピダハンの思想〉

・親愛の情を示すため、腕や髪、背中などの体に触れるのを好む。

・ピダハン同士で口づけをしているのをエヴェレットは見た事がないが、口づけを意味する言葉はあるので、しているは違いない。


・自分に厳しく、年配者やハンディのある者に優しい。
自分が若い頃に年寄りから食事を貰っていた恩返しとして、漁や狩りに行けなくなった年寄りにも食事を提供する。

・ピダハンはほぼ核家族だが、集団意識が強く、同じ集団を構成するメンバーの福祉に互いに責任感を持っている。

・食べ物を提供する際に”この料理の食べ方を知っているか?”と質問する事で、”食べ方を知らない”と相手の気分を害さず答えられるようにしている。

・余所者や異文化と接する時も、ピダハン同士でも敵意を交わす事は殆どなく、穏やかで平和的。

・厳しい環境が挑んでくるあらゆる事態を切り抜けていく自分の能力を信じ切っていて、何が来ようと楽しむ事ができる。

・どんな事にも笑い、自分の不幸も笑いの種にする。


怒りは大罪だと考えるピダハン


〈ピダハンの家族の認識〉

ごく限られた範囲しか親族とみなさない。

☆親族を表す言葉

・マイーイ
→親。親の親。何かをして欲しい時や年配者への愛情の示しなど、一時的ないし恒久的に従属を示したい相手。権威を認める語。

・アハイギー
→同胞。
同世代のピダハンや、外部の人間に対してピダハン一般の事を指す時。
ピダハンの集団意識を強化する役割を果たしている。
30年暮らすエヴェレットに対してさえも、外国人であるのでアハイギーとは呼ばない。マイーイと呼ぶ。

・ピダハンの”アハイギー”という共同体意識は核家族を基に成り立っている。
ピダハンの社会では家族が中心で、誰もがある意味兄弟であり姉妹であると認識している。


・ホアギーまたはホイーサイ
→息子。

・カイ
→娘。

・ピイイヒー
→ふた親のうち少なくともひとりが死んでいる子供。継子。お気に入りの子。


・ピダハンにはいとこを表す語がない為、婚姻にも制限がかからず近親相姦をする。


〈ピダハンの子育て〉


・ピダハンは子供も赤ちゃんも一個の人間とみなし、大人と同等に尊重する。


・子供たちは優しく世話したり特別に守る対象ではない。

・乳離れすると大人と同様の仕事を求める。

・次の子供が産まれると、上の子が3〜4歳でも断乳し、子供は仕事をしなればならない。

・体の大きさや体力に合わせて食事の分量などは変わるが、基本的な能力は大人と対等と考える。

・母親は子供に赤ちゃん言葉で話しかけない。

・赤ちゃんが焚き火に近づいて行っても、火から遠ざけようともしない。
赤ちゃんが脚とお尻に火傷を負って泣くと、片手で乱暴に抱き起こし叱りつける。

・2歳くらいのよちよち歩きの幼児が刃渡り20cm程の鋭い包丁を振り回して遊んでいる際に
幼児が包丁を落とすと、母親は拾い上げ幼児に手渡す。
怪我をすると諭す事はしない。

・ピダハンの子育て哲学の根底には適者生存のダーウィニズムがある。


・ピダハンは1日を生き抜く原動力が自分の才覚と逞しさにあると自覚する。

・ピダハン皆が人生に満足し、ピダハンの社会にも満足している。
不満がないため変化を望んだり、何かに悩むこともない。

・3歳の子供が煙草を欲しがれば与え、6歳の子供にもカーシャを与える。

・親達は子供に愛情深く接し、丁寧に、頻繁に話しかけ、滅多にお仕置きをしない。

・ピダハンの社会では、子供に対しても誰に対しても暴力は容認されない。

・ピダハンの社会では怒りは大罪なので、子供相手にも誰に対しても容認しない。

・ピダハンの若者は青春の苦悩も憂鬱も不安もない。
答えを探したりもしない。
引きこもったり、いつまでもふて寝をしたり、自分のとった行動の責任から逃れようとしたり、親世代とは違った生き方を模索しようとしない。
よく働き、よく笑い、社会全体の生存に寄与している。

・親子同士や大人同士で何かを命じたりしない。
帰属意識は強いが、対人に対して、集団の強制力は働かない。


〈ピダハンの出産〉


・出産する際は自宅近くの木陰や産気づいた場所近くの木陰に横になり、大抵は1人で産む。

・乾季の際はマイシ川に、自分1人あるいは親戚の女性と一緒に川の腰のあたりの深さまで進んで産む。
川が1番清潔で安全な出産方法だと考えている。

*親がいない時の出産

・もし親族が村にいなかった場合、1人で出産しなければならないが、難産だった際に助けを求めても、親ではないピダハンは誰も助けようとしてはないない。
外国人が助けようとした際には親ではないから助けてはならないと止めた。

妊婦の姉妹も全く手を貸さず、娘婿も応じず、死ぬまで様子を見に行こうとしなかった。夫も責任を放棄してピラニア釣りに行ってしまう。

翌日、川べりで妊婦と赤ん坊が息絶えていた。


・ピダハンは困難は自分で乗り越えなければならないと信じているが故に仲間を見殺しにすることもある。




*衰弱した孤児への対応

・母親が病気で死に、赤ん坊が死にかけたいたので、エヴェレット達は持参した医療器具(チューブや哺乳瓶)を活用してミルクを与えて元気にさせた。
しかし、エヴェレット達が安心して少しの間ジョギングに行っている間に父親が意図的にカシャーサ(酒)を飲ませて殺した。

殺害した3つの理由

①赤ん坊が衰弱し、死にかけていた事。
→もし母親が死んでいても健康であれば殺さない。

②母親が死んでいた事。
自分の子供を飢えさせてまで他人の赤ん坊に乳をやる母親はいない。

③エヴェレット達の医療器具では回復しないと確信していた事。

→これらの理由から、子供の苦しみを長引かせないようにする最善策として父親が自ら安楽死させた。


〈ピダハンの怒りについての考え〉


・怒って当然の事をされても、ピダハンは平穏を大切にし、忍耐強く、愛情たっぷりに相手を理解しようとする。

例:

酔っ払った兄弟が、犬が吠えている事に怒りショットガンで殺した。

犬は内臓が飛び出て、体を震わして、クゥーと鼻を鳴らした。
飼い主が駆けつけて、自分が子供のように可愛がっていた犬だと泣いた。
エヴェレットが兄弟に仕返しをするのかと尋ねると驚き、兄弟は酔っ払っていただけで子供じみた事をしたとは思うが、頭が働いていなかったのだと考え許していた。


・夫に浮気をされた際、夫は一日中妻の気が済むまで殴らせる事で反省を示す。

その際、怒りは大罪なので、妻は喚き散らしたり怒りを露わにしたりせず、くすくす笑ったり、にやにやしたり、声をあげて笑ったりする。

〈ピダハン社会の強制力〉

・公的な強制力はない。
・警察も裁判所も、首長もいない。
・だが、強制は確かに存在しており、主な形は村八分と精霊である。


*村八分
・ある人物の行動が多数者にとって害を及ぼす程常軌を逸してくると社会から追放される。
・日常よくある村八分は1日〜数日食べ物の分け合いに混ざらせないというやり方。それ以上長くなる事はない。


*精霊
・村の中の誰かを名指ししたり、全体に話しかけ、禁止事項を告げる。
ピダハンは注意深く耳を傾けて忠告に従う。

例:
”イエスを称えるな、あれはピダハンではない。”
”明日は下流で狩をしてはいけない”
”蛇を食べてはいけない”など。



*命懸けで1人で出産する母、愛犬を理不尽に殺されても許すのを当然だと考えているピダハン、浮気をされても怒らず笑って許す妻。
どんな時でも笑いを忘れず、相手を思いやるピダハンは美しく、魅力的ですね。

*次は第7章でお会いしましょう!
ついにイビピーオが登場します!
お楽しみにー!♩

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