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王位交代 フレデリック10世の治世へ@デンマーク【Spending】

2024年1月14日デンマークに52年ぶりに新王が誕生する日が来ました。
12月31日のマルグリーテ二世女王の新年の挨拶での退任発表から14日経ちました。デンマーク国王フレデリック10世が女王退位後、王位に就く日です。

2023年12月31日の挨拶については下記にまとめてあります。

今の時点でのデンマーク王、マルグリーテ2世女王

年明けにデンマークの友人からニュースでやっていた話を聞いたところによると退任することは2、3人ほどにしか伝えておらず、当人であるフレデリック皇太子も3日前(28日ぐらい?)に把握されたそうでまさに青天の霹靂。

さて今日の退任、就任の儀式は国営放送DRでは1日中中継されることになっています。
この国営放送はWEBでも放映されているので誰でも視聴が可能です。
まさに今、国営放送で中継を見ながらこのNoteを書いています(写真はDRのものです)。
本日も、というかいつも私見や意訳を含んでいることご承知おきください。

さて現場であるコペンハーゲンの都心部で直接目視しているわけではないので実質の距離は日本よりも近いですが日本にいるのとだいたい同じ状況です。
ライブビューイング。
中継映像はまだ見れるかもしれません。
ご興味のある方はDenmark, DRで確認してみてください。

式が始まるまでまだまだ時間がかかるのにもう一杯の人だかり

駐日デンマーク大使館によるとデンマーク王室はゴーム老王から1000年以上の歴史を有します。日本の皇室に次いで世界に2番目に古い王室と解説されており日本とも近く感じるデンマーク王室。
コペンハーゲンにある王の居城であるアマリエンボー城(Amalienborg)からクリスチャンスボー城(Christiansborg)までの移動経路はずらりと人が並んでいます。

ちなみにルートはネットで掲載されていました。
当然周辺道路は交通規制が敷かれているので車は通れない状態です。

黄色が行きのルート。緑が帰りのルート。
左下に目的地のクリスチャンボー城があります。
同じ敷地に通称ブラックダイヤモンドと呼ばれる王立図書館も隣接しています。

説明翻訳抜粋:
王位交代の際、女王陛下は2024年1月14日(日)13時37分にアマリエンボー宮殿のクリスチャン9世宮殿からクリスチャンスボー宮殿までの馬車で近衛騎兵連隊の騎馬隊に護衛されます。 午後3時30分の布告後、近衛騎兵連隊の騎馬隊の将来の王族夫妻は、クリスチャンスボー宮殿からアマリエンボルグのフレデリク8世の宮殿まで馬車で護衛されます。 皇太子夫妻も13時35分にフレデリク8世の宮殿からクリスチャンスボー宮殿まで車で移動し、マルグレーテ2世女王は14時15分にクリスチャンスボー宮殿からクリスチャン9世の宮殿まで車で移動します。

https://www.kongehuset.dk/

行きと帰りでルートが違うところに理由があるのか分かりませんが乗り物は王が馬車。それ以外の人はロイヤルロールスロイスでの移動となるそうです。

そのためマルグリーテ2世女王は行きは馬車帰りは車となります。

この白い馬たちが引いている左手の馬車の中に女王がいます。
馬車の周りにはSPがいっぱい。

女王が住まいであるアマリエンボー城から出発されたのが13時過ぎ、王位の交代が行われるクリスチャンスボー城(Christiansborg)までは車と馬で移動しました。
クリスチャンスボー城はデンマーク王室および政府の迎賓館として使われているほか、国会議事堂や内閣府、最高裁判所など、デンマークの三権に関する施設が集まっている拠点です。

女王は最後の摂政の仕事として馬車に乗り移動します。
映像を見ていて思いましたが、馬もかなり緊張しています。
リラックスしていると耳が顔の正面側に広がっているように見えるのですが、映像の馬はピンと立っていました。
馬もかなり周囲を警戒しながら移動しているようでした。

馬列には騎馬隊と楽器隊も。
左手に手綱、右手にラッパ。
一人一人の国民が記者でありカメラマン。

そもそも馬は臆病な性格の生き物。
ちょっとした音や環境の変化でびっくりします。
例えば、さっきまで自分がかぶっていた毛布が落ちただけで立ち上がるくらい驚きます(乗っている方は落ちそうになります)。

馬大国のデンマークでしっかりと訓練された馬なので知らない音を聞いたり、少しびっくりするような音が鳴ってもすぐに落ち着くことはできるのでしょうが、人の多さや観客の歓声、楽器隊のラッパの音など、ストレスを感じる環境ですが、しっかりと整列を保っていました。
かなり首を振ったり、前足を少している馬がいたので緊張して入れ込んでいたのでしょう。
しかし全く問題なく移動されていました。
馬のトラブルは全く無いように見えました。
ちゃんと先導する馬が動いて、それにしっかりと後の馬が追従していく姿が見れました。

沿道の人はほとんどの人がデンマーク国旗を持っていた印象。
本当によく国旗をあげる国。
こういうところは素直に尊敬出来ます。デンマーク人は国旗のもとに皆集まり共に歩くという言葉も彼らから聞きました。
国旗はそれだけ大事なものでありよりどころ。
日本もそういう国になれるといいですね。

赤と白の国旗の波が寄せてくる

私も歩いたこともあるこのクリスチャンボー城はコペンハーゲン駅の東側、王立図書館のちょうど北側に位置する城です。
周囲の堀は貸しボートでも遊覧でき散歩にも最適です。

今回の移動経路はあらかじめ決まっておりその沿道はこれまで見たことのない人だかりがありました。

テレビの解説では、あまりにも人が集まりすぎていて、居る場所がないので諦めて帰った人もいると言っていました。
映像を見る限り確かに人が多い。
デンマーク王国の人口は約590万人。そのうち首都コペンハーゲンの人口は82万人と言われています。
当然コペンハーゲン以外の町からも人が集まっていますし、行かない人もいるのでしょうがものすごい人出でした。

この日の気温は2~4℃くらい。
現在のシーズンでは温かいほうですが、それでも立って待っているには寒い気温。
私のように家でぬくぬく過ごしているひとも多いことでしょう。

見渡す限りひと。ひと。
トイレとかどうしているんだろう。

さて14時10分を過ぎたあたり、画面が切り替わりクリスチャンスボー城の中へ。
すぐ後にマルグリーテ2世国王が映りました。
そしてマルグリーテ2世国王が退位の宣言書に署名を行い、すぐ隣に待機していたメッテフレデリクセン首相に手渡して王位継承の儀式が完了しました。

何枚かの書類に書き込んでいました。
解説では署名と聞きました。

14時19分、フレデリック10世デンマーク国王が誕生しました。

王の席にはフレデリック10世が就く

すごくあっさりした交代の儀式。
署名してテロップでフレデリック10世(King Frederik10)が誕生したことが伝えられました。
印象的だったのは署名の姿とその後の席を立つときの様子。
フレデリック10世が女王に一礼してから座る姿が印象的でした。
礼の文化はあまりないように感じていたので個人的には意外でした。

その後女王はすぐに退席。
ほんとにすぐ退席。
立ちあがり王の席にフレデリック10世が座るように促してすぐ部屋をでていました。

立ち上がってほんの数秒で退室。

来た時は馬車ですが帰りは車。
行きのときより人は減っていましたが走って追いかけて手を振る観衆や周囲の人にも終始手を振りながら対応されていました。

退任の署名から居室のあるアマリエンボーに到着するまで約12分。
本当にあっさりしたものでした。
でもやることはしっかりやってサクッと次へ次へと進めていく、デンマークで私がいつも見ている姿そのものでした。

15時にフレデリック王はクリスチャンボー城のバルコニーに登場。
デンマークでは戴冠式はありませんが、クリスチャンスボー城のバルコニーからの正式な宣言は主要な公式式典のひとつだそうで、口頭でのコミュニケーションを大切にするデンマークならではと言う印象です。

メッテフレデリクセン首相が挨拶とマルグリーテ2世女王への退位と感謝を伝えていました。

そしてその後、「伝統に従って3回言う。」と前置きした後、話されました。いろいろ言っていたかもしれませんが、理解できたのは以下の感じ。

マルグリーテ二世女王が退位されました。
国王陛下万歳!

そして、
「Hurra! 」「Hurra!」「 Hurra!」・・・(フラー!)
と確か10回話されていたと思います。
Hurra(フラー)はデンマーク語で「万歳」。
万歳を10回。
日本だと万歳三唱で三回かと思いますが、10世だから10回なのかしら。
ご存じの方がいたら教えてください。

それにしてもHurra!と言うたびに歓声が大きくなり、広場にいる人たちが大合唱で万歳を叫んでいました。

見渡す限り人の絨毯。
何人が参加しているのだろう

その後フレデリック王は宣誓と最初の演説を行いました。
そして手をふりその場にいた国民ひとりひとりに目を向けていました。

デンマークは立憲君主制であり、王室は象徴的な大使の役割を担っています。
正式な権限は選挙で選ばれた議会と今回の退任の署名を行った舞台でもある首都コペンハーゲンのクリスチャンスボー宮殿に拠点を置く政府にあります。
ここまでは大きくは日本と変わらない、象徴としての王の役割を持つデンマーク王室ですが、他にも責務を担っており、例えば新しい法律に署名することや毎月1度首相と話をする時間を持つこと、王が国外に外遊する際には、女王や皇子が代理摂政として機能するなど王室としてはユニーク一面を持っています。
ここは完全に私見ですが、「必ず現政権のトップと話をする」という一面は個人的にはメンターとしての役割も担っているのではないかと思います。
政治的な発言力は無いとしても、お互いが相手が自分で考え、答えを出すように話をすることはできますし、トップにいる者同士が相談者として精神面をサポートすることができるシステムは機能していればとても良い循環を生むと思います。
こういった面は日本の皇室と異なる部分だと思います。

王が話を終えてしばらく国民に手を降った後に家族も登場しました。
ロイヤルファミリーです。

ロイヤルファミリー登場

ロイヤルファミリーが登場したタイミングで広場にいる人たちが歌いだしました。
国家でしょうか?
そういえば私はデンマークの国家を知らない。
でもみんなテレビのマイクで拾うくらい大きな声で歌っている。
そして歓声の中バルコニーから部屋の中へ戻っていきました。

出てきて8分ほどお話されてバルコニーから部屋へ戻る。
これで終わりかなと思ったところで、数十秒ほどして、わー。わー。と歓声があがるとバルコニーの扉が開き再度登場。


手を取り合い登場。そして最後にはキス。

まさにこれは劇場のカーテンコールじゃないですか。

2度出てくるのですか。

しかも手を振りながら。

ロイヤルファミリーで再登場。
よくよく見るとメアリー女王は白のドレスに赤いジュエリーを着けたデンマークを象徴する赤と白のスタイルでした(解説から)。

最後は王と王妃が残り、国民の前でキスする姿を見せて終了した。
国の儀式でキスを見せるあたり外国という感じ。
盛り上げ方としては最高の形ではないでしょうか。
君主となる宣誓を行い、王妃の手を取り国民の前に出てそしてキスで終わる。
とても興味深く素晴らしい即位の儀式でした。

そして新王フレデリック10世もバルコニーでの挨拶終えて数分でクリスチャンボー城から移動。

早い。
動き出しが早い。
予定されているとおりに動いているとはいえそれにしても早い気がします。
これまで時間に正確な国であると思います(むしろたまに早すぎる時があり、トラムが定刻3分前に出発してしまい乗れず、ものすごくひどい目にあったこともある。)

私が感じていたデンマークの国民性として、それまでのプロセスはどうあれ(デットラインまでは)、やると決めたらサクッとやる。
そして終わったらさっさと帰るというは王室や政府の進め方にも共通するのだなと改めて感じました。

デンマークでは2024年の年明けからこの王位交代を祝うイベントが様々行われています。
小さいところだとパン屋がお祝いのパンを出していたり、当日である今日であればデンマーク最大の遊園地チボリ公園で18時から花火が上がったりします。
大きいところでは、国王の顔が描かれた新しい硬貨をデンマーク国立銀行は計画しているなど報道されていました。

まだまだお祭りは続きそうです。

さて王への就任に際し、フレデリック10世は、
「Connected, committed, for the Kingdom of Denmark」
と話されていました。
訳すと「デンマーク王国のために、つながり、献身的に」と言うことでしょうか。

この君主としての宣誓の言葉は新、王の治世の枠組みを定める文言となる言葉で、これまで少なくとも500年に渡り、歴代の王が国民に伝える機会があったそうです。
マルグレーテ2世女王の宣誓の言葉は「神の助け、民衆の愛、デンマークの強さ」だったそうです。
今回もそのしきたりにのっとりどういう治世を行うか宣誓されたものと思います。

デンマークのオーフス大学で政治を、そしてデンマーク軍でも教育を受けたロック好きの新しい君主の今後が楽しみです。

それでは今日も良い一日を。


その後の王室の政の動きはこちら。


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