炊かずに蒸す!?日本酒造りでのお米の処理方法
「日本酒を、もっと身近に」という理念をかかげながら活動している日本酒メディア・コミュニティ『酒小町』。今回は「日本酒づくりでのお米の処理方法」についてお話していきます。
・削る(精米)→ここで「白米」になる
・休ませる(枯らし)
・洗う(洗米)
・水に浸す(浸漬)
・水を切る(水切り)
・蒸す
・冷ます
という過程をふみ、お酒造りに使える状態に整えていきます。
処理されたお米の一部は、日本酒造りに必須である麹を作ることにも使われます。
色々な工程を踏むことになりますが、ここでは「蒸す」という作業について注目しましょう。
みなさん、お米は「炊く」イメージがありませんか?
我々が普段食べているご飯は、白米を炊いたもの、いわゆる炊飯(すいはん)ですね。
ご飯を炊くときに使うものは文字通り、炊飯器と呼びますよね。
では、「炊く」と「蒸す」、この二つ、どう違うのでしょうか?
なぜ日本酒造りにおいては米を炊くのではなく蒸すのでしょうか?
そもそも、蒸すとは。
蒸す(Steaming)とはお肉やお魚はもちろん、お芋、おまんじゅう、点心、赤飯(もち米)、茶碗蒸し、カスタードプディングなどでも使われる、メジャーな調理法のひとつです。
その特徴はこちら。
○材料が崩れず形を保つ
○栄養の損失が少ない
○材料が軟らかく仕上がる
○焦げる心配がない
日本酒に使うお米は、蒸すとどうなるの?
蒸気につつまれたお米は、「全体は温まるけど、水分はあまり取り込まれない」という状況になります。
お米の表面は乾燥して硬い一方で、お米の内部は熱せられて柔らかいという「外硬内軟(がいこうないなん)」という状態が、実はお酒造りには理想的なのです。
それはなぜか。
①お米の外側が乾燥することで、麹菌が繁殖できるお米の表面積が確保されます。
麹が満遍なく働くために、一粒一粒にまとわるのが重要なのです。
②お米の主成分であるでんぷんは加熱することにより、柔らかく変化しはじめます。
これを「α化(あるふぁか)」するといいます。
α化することにより、でんぷんの構造がゆるみ、麹菌の生成する酵素の作用を受けやすくなる=麹が繁殖しやすくなります。
また、発酵の過程でお米が溶けやすくなります。
これはお酒にお米の味をどれだけ出すか、という部分に直結していきます。
お米を「炊く」とどうなるのか。
「炊く」というのは、「食材を水と共に加熱して調理すること」ですね。
(関西地方では、野菜などの食材をお出汁と調味料で調理した、「炊いたん」という料理があります)
お米を炊くときにも、常に水の中に浸っている状態で熱が加わります。
そうすると、お米に含まれる水分量が多くなります。
いわゆる「お米が水を吸う」というやつです。
一般的に炊いたお米の水分量は約65%、蒸したお米は約35%です。
麹菌の繁殖に最も適した水分量は35%から40%と言われていて、麹を作る上では、炊いてしまうと水分量のバランスが崩れ、不都合になってしまうのです。
また、炊くとお米同士がくっついてしまうというのもネック。
なぜなら、くっつくことでお米の表面積が狭くなってしまうため、麹がまとわる範囲が狭くなってしまうためです。
麹の働きは、お米のデンプンを糖に変える、というもの。
日本酒の造りでは「一麹、二酛、三造り」という言葉があります。
これは、酒造りで最も重要なのは麹である、という意味です。
蒸したお米の出来は麹作りに直結します。
それだけ重要な作業が、酒造りの最初にあるのです。
その年の酒造りの始まりという意味で、酒造りの最初にお米を蒸す作業のことを甑(こしき)起こし、造りの終わりを甑倒し、といいます。
(※甑、とは、お米を蒸すときに使うお釜のこと)
お米の処理から始まり、お米の処理に終わる。
まさに、日本酒造りを象徴しているといえます。
さて、今回はかなりボリューミーな内容になってしまいましたが、最後に一言でざっくりまとめると…
一時期のサウナブームで、今も隙あらば足繁く通っている方も多いでしょう。 日本酒のお米もそれと同じです。
お米を炊くのは湯船に浸かること、蒸すのはサウナに入ること。
だとすれば・・・、日本酒のお米もサウナーと言えます。
なんといっても、よい酒にするためには、“整え“ないといけませんからね!
それでは今回はここまで!
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酒小町制作メンバー
執筆:ダイゴ|社会福祉士×唎酒師・日本酒学講師=Sake Social Worker(note)
ディレクション:関谷サイコ(X/note)
企画:卯月りん(X/Instagram/note)
編集:makio(X/note)
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