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【韓国ドラマ感想】夫婦の世界/부부의세계

「なんか面白いらしい」
この程度の前情報のみで見始めたドラマだったが、とてもスリリングで面白かったので個人的な感想を書き留めておく。


※以下ネタバレあり



物語は小さな町であるコサン市の病院に勤める医者である妻・ソヌと売れない映画監督のイケメン夫・テオが中心だ。
ある日出張から帰って来たテオのマフラーに、茶色い長髪が一本付いていた事から事件は始まる。
まずこの時点でテオが間抜けな事は一旦おいておこう。
あんな長い髪の毛、嫁さんにマフラー巻いてあげる時に気付くだろ。
そもそも帰宅前に入念にチェックしろや。

これはおかしいなと思ったソヌが疑いを強めて、ついにテオが不倫をしている事を突き止める。
そしてその際にソヌは自分と息子以外の皆が「テオは不倫をしている」と知っていた事に気付いてしまう。
いや何でやねん。
周りの奴ら何でやねん。

頭おかしい奴しかおらんのかこの町は。

テオの不倫相手はソヌの患者であったヒョジョンの娘・ダギョン
これを知ったソヌは「テオと離婚するのか、知らぬふりをして夫婦であり続けるのか」を悩みながらも、テオの不倫が気になって仕方がなくなる。
そしてソヌは自分の患者であるヒョンソがDV彼氏と離れられない状態である事をたまたま知り、そのヒョンソと「精神安定剤の処方箋」を渡す代わりに「テオの尾行」をしてもらうと言う利害関係を成立させる事に。

「自分でやった方が絶対に面倒事にならんでええやろ」
と思った私の予想は見事に的中する。
もうやだこの町。

ヒョンソのDV彼氏・インギュがソヌとヒョンソの関係に気付き、多額の金を要求。
離婚の為の証拠集めも上手くいかず、ダギョンはテオの子を妊娠しており、復讐の為にテオの友人・ジェヒョクと一夜を過ごす中で、更に脅迫が追加されたソヌの精神がぼろぼろに追い詰められる。

ソヌ「せや!ダギョンの両親の前で全部ぶちまけたろ!」

ヒョジョンにお呼ばれしていた事を利用し、テオを連れて不倫相手ダギョンの家に向かったソヌはダギョンの両親の目の前でぶちまける。
「おたくの娘さん、うちの旦那と不倫して子供まで作ってますよ。とんだアバズレですね。どう言う教育してきたんですか?」
もう食事会はド修羅場よ。
そして「は?」ってなるのがここでダギョンがキレて泣き出す事。
頭を抱えて「もう終わった」みたいな感じで泣き出すのだが、何でお前が泣くんだよ。
泣きてぇのはソヌだろ。
散々匂わせて、おばさん煽りして、ぶちまけられたら被害者面で泣き出す。
めんどくせぇ女だなあ!!!

でもその面倒臭さを上回るのがそう、テオである。
「あんな所で言う必要はないだろ!」
などと言ってソヌにキレ出す始末。
「じゃあどこなら言っていいんですか?」って視聴者が言いたくなるわ。
テオの母親がこの話の途中で亡くなるのだが、その母親に本当にそっくりだと思う。

テオの浮気を察しながらもソヌに「テオを捨てないでくれ」と言ったかと思えば、「父親なしで育ったから」と言う「え?だから何?」としか言い様がない同情欲しがりをする。
そして、それでもソヌが離婚すると言えば同情欲しがりババアから暴言吐きババアに進化。

「あんたみたいな嫁さんと一緒におるから息子は息苦しい生活してるんや!」

よく言えるなそんな事。
テオは家に一円も生活費を入れない上に会社もソヌの金で設立して、挙句の果てには義母の入院代も治療費も払ってくれているんだぞ。
母子共々追い出されて死にたいんか。
この母親にしてこの息子ありにも程があるだろ。

と言う流れでついに二人は別居を決意。
テオはダギョンの家で暮らす事になるが、二人には小学生の息子・ジュニョンがいる。
お互いに「親権は譲らない!」の姿勢を崩さない中で、テオがソヌの勤務先でソヌのトラウマをほじくり返す。
こいつ、最低過ぎんか。

両親の事故死と言うトラウマが甦ったソヌは、ジュニョンを車に乗せ走り出す。
「お父さんは不倫をしているの!私達を裏切ったのよ!」と言ってジュニョンに自分と暮らす事を選択させたいソヌ。
しかしこの息子、なかなかに聞き分けの悪い子である。

「お母さんは仕事ばっかりで、いつも僕と一緒にいてくれたのはお父さんだもん!僕お父さんと暮らす!」

だめだこりゃ。
そしてそんな息子でも絶対にテオに渡したくないソヌは一時帰宅。
ソヌの異様な状態に危機感を覚えたテオは「ジュニョンをどうした!」と詰め寄るが、ソヌは素知らぬふり。
「ソヌはジュニョンを殺した」と勘違いしたテオがソヌをぶん殴ってしまう。
頭から血を流して倒れる母親と、その母親を殴った父親。
ジュニョンが目撃したその光景でついに、ソヌは親権と望み通りの形での離婚を手に入れたのだった。
いや覚悟ガンギマリ過ぎるやろ怖いわ。
ジュニョン、トラウマもんやで。

ソヌは離婚も親権も手に入れて、ダギョンは町中で「人の旦那を寝取ったアバズレ」と陰口を叩かれテオと共に町を去った。
これで終わりだと思うでしょう?
これまだ第一章です。

第二章の幕開けは二年後、恥知らずにも町に帰ってきたテオとダギョンがこれ見よがしにホームパーティーを開くところからスタートする。
ダギョンはすでにテオとの子供を産んでいるので、ジュニョンはいらないのだが、テオはジュニョンを諦めていなかった。
ダギョンの両親から出資してもらい、人気映画を作る事に成功したテオは虎視眈々とジュニョンを狙う。
この旦那、いつも人の金で生きてるな。
全人類よ、これがプロのヒモだ。

そしてテオが町に戻って来てからソヌの身の周りにも変化が起き始める。
町の人が今度はテオ夫婦側につき始めたのだ。
いや、マジでこの町の人なんなん。

皆してソヌに「惨めな人」と陰口を叩き始め、テオからソヌへの嫌がらせはエスカレート。
ソヌの自宅に石が投げ込まれ窓ガラスが割られた次は、ソヌに恨みを抱くインギュを雇い再度窓ガラスを割って侵入・暴行。
テオはインギュに「怪我をさせるな、手を出すな」とは言っているが、ソヌに恨みを持ったインギュがまともに聞くはずもないし、シンプルオブシンプルに犯罪である。
そもそも、テオは第一章でのソヌへの暴行で逮捕され二年の接近禁止命令が出されている。
「ソヌに危険があれば真っ先に疑われるのは自分である」と言う認識がないところに頭の悪さが表れているし、人気映画の監督なのだからもしそんな事をしたと言うスキャンダルが出れば一気に破滅だ。
やっぱりテオって間抜けじゃね?

また、テオの嫌がらせはこれだけに止まらない。
ソヌの勤務先である病院に多額の寄付をすると言い出し、その代わりにソヌを副院長の座から引きずり下ろす事を要求した。
この男、面の皮が厚過ぎやしないか?

更にはソヌに好意を寄せる医者・ユンギの存在を目の敵にし、見知らぬ男が家に侵入し暴行まで受けたソヌを心配して駆けつけてくれた件を持ち出してはソヌを誹謗する。
「家に男を連れ込んで!ジュニョンの気持ちを考えろよ!」
いやどの口がほざいとんねん。
離婚もして独り身のソヌが誰に好意を寄せられようが、自宅に呼ぼうがお前には関係ないだろ。
離婚もせず妻子がいる身で「どっちも愛してるんだ!」とかほざきながら、他所の若い女を孕ませたヒモ男が何を言っているんだ。

しかしここで風向きが変わり出すのがテオ夫婦の方だ。
町に帰って来た為、テオはソヌへの復讐に燃えているが故にダギョンと少しずつすれ違い始める。
「テオの様子がおかしい」
そう気付き始めたダギョンはテオの会社に秘密の携帯電話がある事を知る。
夜中、誰もいない会社に入りその携帯電話を見たダギョン。
そしてそこにあった隠し撮り写真で、テオがソヌをストーカーしている事を知ってしまう。
復讐の為とは言え行き過ぎたその行為にダギョンはショックを受けてしまう。

正直ここだけはダギョンにちょっと同情した。
今まではダギョンがどんなに泣こうがテオを疑おうが「ざまあw」って思えたが、自分の旦那が元嫁のケツを追いかけているはさすがに可哀想。
自分がダギョンの立場なら「他の若い女と不倫している」の方がまだマシだと思う。
まあテオみたいな男を選んで寝取ったダギョンの自業自得と言えばそれまでの話なのだが。

そしてテオはインギュから脅迫を受ける中で、自分の復讐心が愛の裏返しだと諭される。
「踏みつけてぼろぼろにして自分に縋りついてくるのを待っている。あいつにとって男は自分だけだと実感したい」
これを言われ様子のおかしくなったテオは突然ソヌの自宅に押し入り、ソヌが自分との家族写真を撮った時の映像を見ている事を知り笑い出す。
ここで私はテオへの印象が変わった。
今までは「全方位に良い顔をしている結果取り返しがつかなくなった男」だと思っていた。
もちろんその節は多いにあるのだがそれ以上に「自分が気に入ったものに自分のものだと言う印をつけて箱に入れておきたい男」なのだと思った。
「こんな映像を見て俺に何を期待しているんだ?」とソヌに聞くシーンなんかは「やっぱり俺が必要なんだろ?」と言う歪んだ喜びに溢れている。

要は第一章でテオが言っていた「ソヌもダギョンもどっちも愛している」が本当だったのだ。
ソヌも好きだしダギョンも好き、もちろんジュニョンも好きだしダギョンとの子供のジェニも好き、だから皆に自分のものだと言う印をつけて箱に入れておきたい。
だから「俺のソヌ」に手を出したジェヒョクが許せないし、いつまでも旦那面もするし、ハニトラを仕掛けて家庭をめちゃくちゃにもする。
そしてその「俺の好きなものから何故か手酷い仕打ちを受けた」ので、愛しているけど許せないからやり返す。
まあ要するにクズ男だと言う事だ。
だから「お前さえいなくなってくれれば俺の人生は完璧になる」とか平気で言えちゃう訳だ。
ドクズゥゥゥーーー!!!

こうして物語は加速していき、インギュの脅迫がエスカレート。
なかなか金を払わないテオに苛立ち、ついにジュニョンへとその手を伸ばす。
結局その脅迫に屈したテオはインギュに金を払う事になるのだが、一度脅迫に屈した人間は何度も集られるのがお決まりだ。
「倍額払えって言っただろ」「ヒョンソがいなくなったどうにかしろ」
理不尽な集りにテオの怒りゲージも上がり、インギュは駅ビルの屋上から落ちて死んでしまう。
さあ~大変だ~~~!!!

今までいくらかの事件は起きれども殺人は起きなかった町で殺人事件が起きてしまった。
しかも死んだ相手はソヌにもテオにも因縁があると来たらそりゃあ大変よ。
しかしインギュの死は「ヒョンソに別れ話をされて衝動的に飛び降りた」で終結してしまう。
ここで視聴者に「絶対にテオが殺した」と思わせる演出と緊張感は素晴らしかった。
はい拍手!ここ拍手!二礼二拍手一礼!

だがここでまた拗れ出すのがソヌとテオの関係である。
「インギュが死んだ日はテオと一緒にいた」と警察に証言し、テオを庇うのだ。
もちろん嘘だし一歩間違えればソヌが逮捕されかねないが、この行動にテオの心が揺らぐ。
自分が警察に事情聴取をされていても今の家族は誰も助けてくれない、自分は所詮ダギョンのおまけでしかない、だがソヌだけは身を挺して自分を助けに来てくれた。
まあこれもテオの自業自得と言えばそれまでなのだが、ダギョンの実家から結局歓迎はされていないし、ダギョンも子供のジェニも含めて家族内で自分が一番立場が下で常にご機嫌伺いをしなくてはいけない環境がつらいのは仕方がない。
「俺は一体何のために離婚をして再婚をしたんだろう」とか思ってしまってもしょうがない。
まあ自業自得なのだが。

そして二人はついに一晩を共にしてしまうーーー!
抱き締め合ってキスした瞬間思わず「おいおいマジかよ!やりやがった!こいつらやりやがった!」と叫んだね。
もう頼むからソヌを幸せにして終わってくれ……!

しかし!問題はまだまだ終わらない!
今度はジュニョンが完全に病んでいる!
もうこの町から引っ越そう!米花町じゃあるまいし引っ越せるだろ!

思春期特有のプチ反抗期から始まり、クラスメイトの物を盗み、ダギョン父の車に傷を付け、ついにネカフェでお菓子を盗んでは友達のヘガンと大喧嘩で一大事に。
正直最初の頃は聞き分けのない子供だなと思っていたが、ここまでくると最早可哀想である。
盗み云々はもちろん悪いが、両親の離婚とその後の争いに常に巻き込まれ、狭い町で母親が噂の的にされる事はジュニョンは何も悪くないのにずっと割りを食らっている。
おまけに殴られて血を流す母親と殴った父親の光景は割としっかりトラウマになっている。
だから言ったじゃない!トラウマになるぞって!だから言ったじゃない!
両親の離婚が自分のせいだと思ってしまったりと罪業妄想も出ているので、今すぐ本格的な治療をして家でゆっくり休ませなさい!
精神科へGO!カウンセリングだけじゃ足りない!処方箋GO!

ちなみに殴られたヘガンに関しては殴られて当然なので特に可哀想とは思わない。
確かにジュニョンの盗みは悪い事だが、それを忠告するにも言い方と言うものがある。
「は?お前クズやんけ!全員にチクるぞ!真っ当に生きろや!」
こんな言い方されればそもそもの非はこちらにあっても腹が立つのは当たり前だろう。
ましてや相手が盗みをするような人間なら尚更言葉は選ぶべきである。
子供同士が友達なのにその子供の前で友達の母親の下世話な陰口を喋る母親の元ではこう言う子供に育つんですね、参考になります。

そして病んだジュニョンは決断を下す。
「お父さん達と一緒に暮らして、お母さんを子供と言う重荷から解放してあげよう」
もうね、しんどい。
決まりきっているのだ、ジュニョンがテオと一緒に暮らしても幸せになどならないと。
そもそも自分の幸せな家庭をぶち壊したダギョンと言う女を母親と慕う事など出来るはずもないのだから、常に気遣いを強いられる。
おまけに腹違いの妹の世話をする父親の姿を見たら「自分はいらないんじゃないか」と思うのも当然だ。

こうしてジュニョンが離れていった事でソヌは完全に崩壊。
勤め先の病院に辞表を出し、ひとり海辺へと向かう。
強風が吹き、荒波の海へと入っていくソヌを批難出来る人がいるだろうか。
幸せだった家庭がたった一本の髪の毛から壊れていき、愛し合った夫婦で憎しみ合い、その真意は知らずとも一人息子は自らの意思で自分から離れていってしまった。
もう無理だとなるのも当然だろう。
しかしここでソヌの意識を死の淵から連れ戻したのは、やはりジュニョンであった。

両親が事故死し、たったひとり遺された子供の頃の自分が、自分が死んだ後のジュニョンと重なったのだ。
この表現を入れてからユンギが助けに来たのは本当に良い演出だと思う。
やっぱり子供を置いて死ぬ訳にはいかないと思った、ぼろぼろになりながらも強く残るソヌの親心や良心、揺らがない芯みたいなものを感じた。
本当に強い人なんだなと。
だからこそその次のシーンで号泣するソヌは本当にくるものがある。
ソヌを心配するテオとユンギがソヌを探し回る間「絶対にテオはくるな!ユンギが見つけろ!」と視聴者に手に汗握らせ、あと一歩でテオが間に合わずユンギが助ける。
この一連の流れがとても美しいシーンだった。
このドラマの中で一番好きなシーン。美しい。好き。

しかしこのドラマ、本当に視聴者に息つく間を与えないように出来ている。

テオの家で暮らすようになったジュニョンに問題発生。
泣いているジェニの側にいたジュニョンを見たダギョンは「ジェニに何をしたの!?叩いたんでしょ!」と怒鳴り散らすのだ。
もちろんジュニョンは手を上げてなどいないので「勝手に転んで泣いてるだけで僕が悪い訳!?」となる、当然だ。
そして事を大きくするのはいつもこの男・テオの役目である。
「いい加減にしろよ!お前ひとりの為にどれだけの人に迷惑がかかってると思ってるんだ!」
と言ってまさかのジュニョンをひっぱたく暴挙に出るのだ。
本当に今のジュニョンに一番やっちゃいけない事をしていて最早草も生えない。

この家でジュニョンの味方は血の繋がった父親であるテオだけなのに、そのテオからこのような仕打ちを受ければジュニョンの居場所は一瞬でなくなる。
ソヌに電話で泣きながら「悪いんだけど迎えに来てくれる?」と言ったジュニョンを見てもう泣いた。
だがそれを良しとしないのがダギョンだ。
ダギョンはジュニョンの為と言いながら、ジュニョンを自分の家で育てる事で離れていくテオの心を取り戻したいのだ。
だからジュニョンが自分の家を出て行く事を許せない。
しかし許せないと言われようがジュニョンから見てダギョンは母親でも何でもない、女狐と言っても過言ではない存在だ。
ソヌの迎えと共に出て行くジュニョン、そしてソヌから知らさせる「あの一晩」の話。

ソヌとテオが寝た事を知ったダギョンはテオを問い詰めたのちに「許す」事を選択する。
どうやら「私はあの女とは違うのよ」といつまでもソヌと張り合いたいらしい。
本当に許せるのかなあ~~~?(大歓喜)

町を出て行ったソヌを追い、二人が二度と会う事のないようにしようとするが、その懸命に家庭を守ろうとするダギョンの姿にソヌは同情をする。
そして知らされるテオの本当の姿。
プロポーズの時に流していた曲も言葉も、香水もランジェリーも、ウェディングドレスでさえも、テオがダギョンに用意した全てがソヌと同じものだったのだと。
こうしてダギョンは完全にテオを見限る事になる。
「貴方にとって私って何?」とテオに聞くダギョンは少し可哀想だが、まあ自業自得なので良し。
そして無一文で家を追い出されるテオを見てスカっとしたね。

でもまだ終わらねぇんだよこのドラマ!
いい加減ソヌとジュニョンを静かに暮らさせてやってくれよ!

ジュニョンの希望を優先して町に戻ってきたソヌ。
ダギョン一家は町を出て行き、テオもいないコサンでようやく穏やかな生活を取り戻し始めた矢先の事である。
切り刻んで捨てた家族写真がテープで修復され、ポストに入っていたのだ。
そう、テオの逆恨みである。
ほんといい加減にしろよ!全部お前が悪いんだぞ!
経済力のある他の女見つけてそっちに養ってもらえよ!!!

そしてついにジュニョンを連れて行ってしまうテオ。
帰宅したらジュニョンがおらず、テオの書き置きだけが残された状況の中で電話口のテオにヤケを起こさせないように優しく話す事を心がけるソヌがもう見ていてつらい。
しかしこのシーンで視聴者に「もしやテオはジュニョンを殺してしまったのでは?」とミスリードを誘う映像が素晴らしかった。
絶対に隣に座るジュニョンを映さず、テオの顔のアップと水辺が入り込む画角しか映さないの本当に好き。
そして歯切れの悪いテオに対して電話口でついに怒り、自分の膝を叩いてから怒鳴るソヌの流れも「ヤベェ奴を相手にしているも我慢ならない感」が出ていて凄くリアルだった。

その後の最後の三人での食事の際、テオの食べ方がとても良かった。
「あー、こいつまともな飯食ってないんだ」ってしっかり視聴者に分からせる行儀の悪いがっつき方。
結局は頼る女がいないと生きていけない男だって言うのがよく表れている。
最高。
そしてこの期に及んで未だに「俺も君を許すから君も俺を許してもう一度三人で家族になろう」と言い出すのだからもう本当にどうしようもないクズ男である。
ソヌに土下座をして許しを請う立場なのに一貫して「俺を許さない君が悪い」の姿勢を崩さないのが良い。
最初は腹が立ったがもうここまでくると一周回って良い。
しかしこんな姿を見て一番傷付くのは息子のジュニョンである。

傷付くジュニョンを見てテオに対し「いっそどこかで死んでよ!」と言ったソヌの気持ちを考えるとしんどいね。
警察に嘘の証言をしてまで庇った程の相手に対して「死んでくれ」と言わなきゃいけない状況を作るテオがもう凄いとしか言いようがない。

もう本当にソヌとジュニョンは幸せに過ごしてくれと思うが、そうは問屋が卸さないのがこのドラマである。

車道に飛び出したテオ。
それに駆けつけるソヌ。
トラックに撥ねられそうなところをぎりぎりで助かったテオ。
生きている事に安堵し、思わずテオを抱き締めるソヌ。
そんなソヌに縋るように抱きつくテオ。
そしてそれを見てしまうジュニョン。

中学生と言うがっつり思春期の一人息子に、この二人の複雑な愛憎を理解しろと言うのは酷な話だろう。
幸せに満ちていた家庭を自分の欲望で壊した父親と、そんな父親を憎みながらも愛している母親。
やっと心の整理がつきかけていたジュニョンに見せるにはあまりにも致命傷過ぎる光景だ。

その場を逃げ出し、姿を消したジュニョンをソヌは探し続ける。
テオはひとり映画製作の仕事を続けながら、ろくな仕事にありつけぬ日々を過ごす。
そして一年後、ようやく帰って来たジュニョンとソヌが抱き合い、ドラマは終幕を迎えた。


ねぇこのドラマ、ソヌとジュニョンに対して当たりキツ過ぎない?
特にジュニョンに関しては何も悪くないのにずっと割を食っている。
シンプルに可哀想だ。
それに対してテオへの制裁は正直ぬるいとは思う。
だがソヌがテオを憎みながらも愛している事を考えると、この着地点がまあ順当だとも思う。
個人的にはテオはコサンを出て行き、ソヌはユンギと再婚エンドが一番望ましかった。

またこの町の住民ヤベェ奴しかいねぇのかと最初は思ったが、町規模の学校だと思うと皆の反応もしっくりくる。
学校のいじめと同じだ、自分が標的にならないようにいじめられている人を寄ってたかっていじめ、派閥を組む。
コサン市と言う学校なのだ、この町は。
そう思いながら見ると、序盤で感じる腹立たしさも少しは軽減されるかもしれない。


・総評
見ていて非常にイライラさせられる作品であると同時に、それだけ役者の演技が素晴らしい作品である。
特にテオ役の俳優の「全方向に良い顔をする結果、取り返しがつかなくなる感」と「どうしようもないクズ男感」が素晴らしい。
「こう言う奴いるわー」とちゃんと思わせてくれるからこそ、見ていて腹が立つ。
本当に素晴らしいと思う。

ジュニョン役の俳優も絶妙な「難しい年頃で繊細な一人息子」を演じていて素晴らしい。
聞き分けのない感じが演技ったらしくなく、「確かにこの子はソヌとテオの子だわ」と思わせてくれる。素晴らしい。

ソヌ役の女優は最早「ソヌって実在するんじゃね?」と思わせてくれる演技で圧巻だ。
優しい母親の顔も、怒った母親の顔も、異性に対する女の顔も、仇に対する憎しみの顔も、憎くても離れられない人間臭い顔も、全て狂いなくソヌと言うひとりの人間だった。最高。

出てくる全ての役者の演技あってこそ成り立つリアリティだったと思う。

ただ難点があるとすれば割と暴力的である事だろうか。
テオがソヌを殴るシーン、インギュがヒョンソに暴力を振るうシーン、ソヌがインギュに襲われるシーンなど。
コンプライアンスなんかクソ食らえ!」な勢いでしっかり暴力的だ。
だがこう言った部分でコンプライアンスに配慮すると「本気でキレた人間・頭のおかしい人間が振るう暴力」が表現出来ず、途端に全てが安っぽくなってしまう。
「急に手加減するやん」となり視聴者も白けてしまう。
だからこそこの作品にはこの暴力的なシーンは必須だと言えるが、苦手な人は苦手だろう。

だが全体を通して非常にスリリングで先を読ませない展開は「あともう一話だけ見よう」を止められなくさせてくれる。
ただの不倫話ではない、二転三転する展開と抉られるような心理描写がとても面白いドラマだった。
めちゃくちゃお勧め出来る。最高。

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