161. 火星探検 【漫画】
テン太郎少年と猫のニャンチャンと犬のピチクンが、天文博士のお父さんの話を聞いたりして火星に思いを馳せる、昭和初期の子供向け漫画です。
絵の可愛さに惹かれて読み始めましたが、寧ろ言葉や発想が面白く、子供向けと言いつつ大人が楽しめる科学入門みたいな本でした。
この面白さを、言葉遊び的な面白さ/読んですぐ分かる面白さ/考えさせられる面白さの3つに分けて、少しご紹介しましょう。
・言葉遊び的な面白さ
猫がいても鼠がいなくてもいいし、交番で鼠を買ってもらうってそんな害獣対策の会社のようなことを仰る……。詩のようなリズム感で、内容の可笑しみが増しています。
全編を通してこの“リズム”や“語感”が楽しいです。
・読んですぐ分かる面白さ
小学生の頃、スイカでも柿でも何でも、種を飲み込んだらお腹の中に芽が出るんじゃないかという議論が度々なされていたのを思い出します。きっと誰しも似たような経験があるのではないでしょうか。
わたしはトマトを食べる時にそう思ったことはないけれど、そういう意外性を含めて笑ってしまいました。
ついさっきトマトでひどい目にあったのに(笑)
喉元過ぎれば熱さを忘るると言おうか、しっかり者と言おうか……。
用語の説明にもこんな風におとぼけを挟んでおくと、説明的にならなさすぎて丁度良いのだなあ。
・考えさせられる面白さ
この作品を殊に味わい深くしているのは、こうした考えさせられる言葉です。
一つの見方に囚われず、のびのび発想することを促してくれているような気がします。「思い込みにとらわれず真理を追及する」のは科学者に必要な精神なのだそうです。
全体に教育的な要素が盛り込まれているけれど、ユーモアも忘れない。特に夢は荒唐無稽に、日常ものほほんと進んでいきます。
描かれた時代が時代なので、今の感覚からするとちょっと引っ掛かる言葉や物なんかも勿論ありますが、色褪せない魅力のある漫画だと思います。
同年代の男の子が主人公であることで、子供が読むときもすっと話に入りやすそうですし、フルカラーというのも何とも贅沢で心踊ります。“真っ黒”というのがないから柔らかい印象なんですね。のんびりと、絵本のつもりで頁を繰ってみるのもいいんじゃないでしょうか。
ではまた。
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