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カラフル

キリンが言った。
『あなた随分と見た目がコロコロ変わるのね。』
まるでカメレオンみたい。と、長い睫毛をぱしぱしとさせながら笑う。睫毛よりもずっとながい首が、そろそろ天井につきそうな頃、あたしの色はグレーになった。

サイが言った。
『ボクは目がよく見えないからね、きみは薄ぼんやりとしか分からないや。あ、でも時々全く見えない時があるね。』
そう言えば今日はよく見えるや。と、太い足を揺らしながらぼんやりと空を見る。大きくて立派なツノが化石になってぽろりと落ちた頃、私は透明になった。

カメレオンが言った。
『おまえさ、俺のこと好きなのかもしれないけど俺はないわ。色が変わるったって嵐の雲より深い灰色か、淀むことのない川の水くらいの透明かのどちらかじゃないか。』
俺に好かれたいならもっとカラフルにならなきゃ。と、棒みたいな舌をみょーんと伸ばしながら眉根を寄せる。ザラザラとした皮膚があたしと同じ灰色になった頃、
あたしは。

自分の色は、知らない。
けれど、言われる。
誰も知らない古びた洋館に積もる埃のようだとか
突き刺すように寒い冬にできた氷柱のようだとか
あたしは、知らない。
見たことない。
見たいとも思わない。
だって、知らなければあたしの色はきっと水色。
雲一つない青空と、同じ色。
知らなければあたしは黄色。
満開に咲き誇るあのひまわり畑と、同じ色。
知らなければ、知らなければ、知らなければ。

あたしは何色にでもなれる。
何色でもいられる。
知っていたとしても、それがどうした。
あたしが思えば、あたしはきっとその色。

眩しい夕焼けと同じ色。
優しい森林と同じ色。
可愛く染まる、あの子の頬と同じ色。
あんたの瞳じゃ捉えきれない、あたしのあたしだけのあたしの色。

今日のあたしの色はきっと。
あたしはきっと、あしたきっと。

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