#49.ただそこで揺れていた。
くらげの花畑がある。
くらげの花は、半透明で逆さまになったお碗から、フリルが見えるような形で下に紐状の繊維が垂れさがる、ぷにぷにとした感触の綺麗な花だ。てっぺんの部分に花びらのような模様が入っていて、その模様は様々である。
昔は、海にも同じような形の生き物がいたらしく、その生き物の名前が由来なのだそうだが、海のくらげはもういない。
こんな生き物がいたらきっと、それはそれは美しいのだろう。
昼間はキラキラと光る太陽を反射して、夕方は鮮やかなオレンジに溶けるように、夜は月のスポットライトを浴びて、どの瞬間を切り取っても幻想的で美しい。
柔らかな風に揺蕩う姿は、美しくもあり少しだけ恐ろしくもある。
プリズム見紛う光の乱反射は、半透明に透けたそれで柔らかく輝く。目を凝らして見ていないと、消えて無くなってしまいそうで、それでいて鮮明に記憶に残る。
その、くらげたちの美しさといったら。
青く光差す海底で、くらげの姿を見届けようと、海に連れて潜った人がいたらしい。
けれど塩水に浸かったくらげは、みるみる萎れ、さらには毒を放つようにまでなってしまったそうだ。
見る影もなくなったくらげは、深い深い、海の底まで沈んでいった。
地上でしか見ることのできない景色であるけれど、少しだけ、それで良かったと思う自分がいる。
だって、もし仮にくらげが海でしか見れなかったとしたら、こんな風にふらっと、見たい時に見れる景色ではなかった筈だから。
群れを為したくらげの花は、ただそこで揺れていた。
ただそこで、輝いていた。
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