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この世は善と悪だけか 「オリエント急行殺人事件」感想

いよいよ公開が今週末にせまった「ナイル殺人事件」
コロナ禍で延期に継ぐ延期、ホントにホントに長かった…
私同様、待ち望んでいた人も多いのではないだろうか。
しかも、なななんんとIMAX対応作品だって!
アクション映画でもないのに、よく決断してくれた。どこに感謝していいのかわからないけど、とにかくありがとう…

「ナイル殺人事件」は、御存知ミステリー界の巨匠"アガサ・クリスティー"が原作。
ケネス・ブラナー演じるエルキュール・ポワロシリーズの待望の2作目だ。
その1作目である「オリエント急行殺人事件」。
私は数年前に見たが、少し内容を忘れていたところもあったのでディズニープラスで見返してみた。

ケネス・ブラナー万能説

主人公ポワロを演じるケネス・ブラナー、シリーズの監督でもある。
この人の才能の豊かさには毎回驚かされる。

まず、記憶に新しいのは「テネット」の悪役。まさに悪役のど真ん中をいく極悪非道の好演だった。
でも、私がケネスの演技で一番好きなのは「ダンケルク」
駆け付けた味方の飛行機を見上げる中佐…長尺のこのシーンが印象に残っている。
一方、監督業では「シンデレラ」や、あの「マイティ・ソー」まで手掛けていて、精力的な活動をしている。
極めつけは今年度アカデミー賞最有力とも言われている「ベルファスト」
まさに、今の映画シーンに無くてはならない存在だ。

そんなケネス演じる今作のポワロ。
几帳面で紳士的な従来のポワロはもちろん、一方で自分の信念に思い悩むシーンもあったりする。
私はアガサ・クリスティーの原作を読んだことがないのだが、これは原作にないポワロ観のようでとても人間臭く、好感が持てる。

そして、吹替え版は草刈正雄さん。
これもまたとっても当たり役、うーん、ダンディ。
でもなんだかこの人の声、たまに聞き取りづらいのよなぁ、何回か巻き戻した。私の耳が遠いってのもあるけどね。
それは「真田丸」でも思ったこと。

絶妙な豪華キャスト

ポワロを取り巻くオリエント急行の乗客たちも、個性派かつ有名なキャストで埋められている。
最近じゃ「スパイダーマン」の怪演が記憶に新しいウィレム・デフォー
さらに「007」の"M"こと、ジュディ・デンチ
そして極めつけは説明不要、われらのジョニー・デップ
もうね、全編に渡っての絵面の安心感ったらないですよ。贅沢。
この痒い所に手が届く人選、さすがです!

この世は善と悪で裁けるか

ミステリーというジャンルは、まさにネタバレ厳禁だ。
だからオチはここでも書かない。
あなたの目で予想だにできない結末を見て、大いに驚いて頂きたい。

ただこの映画の原作にない真のテーマ、それは「この世は善と悪で裁けるか」ということだと思う。
映画の序盤、ポワロは自分の信念として「この世は善と悪だけで、その中間はない」と断言する。
しかし、オリエント急行での事件が明るみになるにつれて、果たしてこれを法で裁いていいのか思い悩むようになっていく。
この問題は多くの映画や文学作品でも語られていて、ジャンルは全く違えど、私は森鴎外の「高瀬舟」を思い出した。

そして舞台はナイルへ…

前述した通り真相のネタバレは避けるが、今作のエンディングにはしっかり次作「ナイル殺人事件」が示唆されている。
おそらく今作とは全く別の事件なので、特段今作を見なくても楽しめるとは思う。
しかし、この「オリエント急行」を経て揺れ動いたポワロの倫理観が次作には反映されているかもしれない。
「ナイル殺人事件」をより楽しむためには、要チェックな作品だ。

最後に個人的に少し。
ミステリーは情報量が多い。
セリフも多く、果たして字幕を追っていけるだろうか、一抹の不安がある。
字幕を読むと同時に、頭もフル回転しなければいけない。
なので是非とも万全のコンディションで、レッドブルを注入し気合を入れて見に行こうと思う!


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