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舌が覚えてる。

今日のお弁当の卵焼きは会心の出来だった。


そりゃあ、お店に出てくるものに比べたら、見た目も味も劣るだろうけど、でも、うん、自分の食べてきたあの味だったと思う。


母方の祖父はのんべえだ。だから味の濃いものが好き。祖母が作る料理は甘いもの辛いもはっきりしてるようなものが多いと思う。だから、母の料理も味が濃いのかもしれない。


薄味の方が身体にいいとは分かってはいるのだけれど、どうしても濃い目の味付けが好きだ。それは、きっといつも食べてきたのがそういう味付けだったからに違いない。


母の料理は醤油と酒がベースだ。醤油も酒も、祖母がよく使っている調味料だ。特に魚の煮物が上手だから、母の舌は醤油と酒の、少し塩辛く、どことなくピリッとした味付けになる。唐揚げは酒と醤油と、生姜で漬けた鶏肉。卵焼きは甘いものではなく、しょっぱい系の卵焼き。酒の香りがほんのり香る卵焼きだ。


母の味というものは、代々母方から受け継がれて、料理に染み込んでいるのだろう。それを食べてきた私の好きなのも、塩辛く濃い味付けだ。少し父方の影響があるのか、どちらかと言えば、少し砂糖が入っている様な、甘辛い味付けが好きだ。甘酢とか、焼き鳥のタレとか、あんな感じの。けど、味の好みのベースはやっぱり醤油とか酒の濃い、母方の濃いものなのだと思う。


昔から、卵焼きはよく焼く方だった。卵は安いし、栄養あるし、と万能で、そして卵焼きは冷めても美味しい。お弁当の定番。お弁当に詰める卵焼きを、昨日は焼いたのだった。


最近の自分の作る卵焼きには物足りなさを感じていた。クックパッドのレシピ通りに作るんだけど、白だしと砂糖とちょっとの醤油、で作るそれは、なんか違った。


何が違うんだろう。そんな最中、母の卵焼きを作る姿が浮かんだ。


そうだ、お酒!お酒を入れてなかった!
あの、ちょっとツンとする強い香りを久しく、卵焼きから感じてなかった。


卵3個に醤油を小さじ1杯。白だし小さじ2杯、砂糖が小さじ3杯、そして酒が小さじ3杯、だった気がする。ほとんど感覚で、なんとなくこんなもんだろうな、なんて作ればいつもはヘンテコな味付けになってしまうのに、今回ばかりは自分でも驚くほど、自分好みの味だった。卵焼き器で巻いた卵は、きれーな焼き目で、それも加えて本当に満足のいくもので。


昼休みは、会社の同僚の人とたべるんだけど、「見てみて〜」と自慢してしまったくらい笑。


ふと作った卵焼きは、まるで舌が覚えていたかのような、母の味、でした。

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