魚田まさや

劇作家。戯曲を書き、妙な短い話も書きます。 スキやフォロー、感想をいただけるととても励…

魚田まさや

劇作家。戯曲を書き、妙な短い話も書きます。 スキやフォロー、感想をいただけるととても励みになります!

マガジン

  • 日記

    日々の中で考えたことを記録していきます。

  • 活動情報

    公開情報や発表した作品、演劇についての投稿はこちらです。

  • 硬骨魚類のための寓話

    教訓があるようでない短編を連載しています。フォローいただけると励みになります!

  • 「すみだ川ラジオ倶楽部」副読本

    • 7本

    2022年の「隅田川 森羅万象 墨に夢」参加企画として公開した新作ラジオ演劇「すみだ川ラジオ倶楽部 川を流れる七不思議編」。 その作品背景やプロセスを公開する、作品の副読本かつ活動記録のマガジンです。

最近の記事

日記「三井のすずちゃん」

最近は主に三井のすずちゃんについて考えている。 最初は友達があんなに三井不動産の話ばっかしてたらやだなーと思っていた。 しかしそれが逆に、何であんなに三井不動産の話ばっかしてるのに友達がいるんだ…?という疑問に変わった。 その時からずっと三井のすずちゃんについて考えている。 街を歩いていても、カフェでお茶をしていても、三井不動産に関する何かが目に入ればすぐにそれと三井不動産との関係の話を始め、さらに話を広げて会社のビジョンについて解説を始める。 最新作ではついに、友人の結婚

    • 日記「見晴台」

      小高く開けていて眺めのよい地は見晴台や展望台と名付けられることがある。施設とも地形とも言い難い不思議な場所だ。 「台」という言葉も奇妙で、人工的に台が作られている場合もあるけどベースは山や丘といった自然物で、境目が曖昧である。 人工の台が作られているのは大抵の場合展望台と名付けられた場所で、地面もコンクリート敷でペッパーくんを無骨にしたような望遠鏡まで据え付けてある。見晴台はより弱々しく、山道の途中のなんとなく開けた場所だったり、ベンチが置いてあるだけだったり、景色もなんと

      • 活動情報「エリカによろしく」

        きたる11月、学生時代の友人・福井歩さんの主催するイエデイヌ企画さんに新作戯曲を上演していただくことになりました。 旅行と古い家とを題材にした2人芝居です。 チケットの発売も始まっております。お誘い合わせの上、ぜひお越しください。 イエデイヌ企画2023年公演「エリカによろしく」 【公演詳細】 https://iedeinu-kikaku.mystrikingly.com/next 料金: 一般 3,000円 学生 2,500円 (当日料金は各+500円) 日時: 2

        • 硬骨魚類のための寓話「ある種族について」

          その種族は小さなコロニーを作って住んでいる。場所はあなたの夢枕だ。 彼らの糧は漂着物だ。陽が昇ると彼らは海岸へ繰り出し、日本のkumadeに似た独特の器具で、器用にどんな物もからめとってみせる。 あなたはいつか訓練を重ねて慎重に、あるいは全くの偶然にそのコロニーに辿りつく。 その頃、あなたは熱意ある文化人類学者なので、この種族についても熱心に調査を始める。 あなたは古くからの友人のように歓迎され、蓄積された知恵や未来への展望は快く共有される。それらは全て驚くほど美しく洗練さ

        日記「三井のすずちゃん」

        マガジン

        マガジンをすべて見る すべて見る
        • 日記
          魚田まさや
        • 活動情報
          魚田まさや
        • 硬骨魚類のための寓話
          魚田まさや
        • 「すみだ川ラジオ倶楽部」副読本
          uni 他

        記事

        記事をすべて見る すべて見る

          日記「変わり目」

          「変わり目」が好きだ。 ガスで温められた水道水が体温を通り過ぎて温水になっていく瞬間や、車で旅行に行くときに、馴染みのある風景から馴染みのない風景に切り替わる瞬間。捌かれていく魚が生物の死体から食材に変わる瞬間。 変わり目は変わり目を見出す態度でいないと観察できないという点もいいし、逆に言えば気の持ちようで無限に楽しめるというところもお得でいい。 なので最近はそういう意気込みで散歩に出かける。季節の変わり目はいつも散歩が楽しい。 9月上旬がまあまあ忙しく今年はどうかと思って

          日記「変わり目」

          硬骨魚類のための寓話「門(終身刑)」

          イギリス人が支配したインドに国王を迎え入れる時、国王が降り立つ港に、最もイギリス的な門が建った。 国王はその門をくぐり、王の魂はインドに受精した。 その後、イギリス人はこの門をくぐって本来の領土へ帰っていった。 しかし国王の魂は撤退叶わず、チケット売り場で下手な琵琶でも弾いている。

          硬骨魚類のための寓話「門(終身刑)」

          硬骨魚類のための寓話「カフカ式バター製造機」

          儀式は厳粛に間違いなく行われていた。 しかし、長が槍で供物を貫く最も大切な場面に差し掛かった時。薮からヒョウが一頭現れ、供物を丸呑みし、しかもそれを喉に詰まらせてばったりと死んでしまった。 この奇怪な事件のために長は追放の身となり、住民たちは一年にもわたって怯えて過ごした。 そして翌年。 新たな長が槍を持って供物を貫こうとした時、再びヒョウが現れ、またしても供物を丸呑みにしてばったり死んだ。 その翌年も、また翌年も、長が槍を持って祭壇に現れると必ずヒョウが現れ、供物を丸呑み

          硬骨魚類のための寓話「カフカ式バター製造機」

          日記「にがみ」

          「Bitter」も「にがい」も「び」とか「が」とかが苦い感じをよく出している。それだけでなく「び」→「た」、「に」→「が」というコンビネーション技が苦みの独特な感覚をよく表現しているなぁと、BITTERS END社配給の映画が始まるたびにそう思う。 そしてBITTERS END社は、ちょっとだけか細くてちょっとだけお互いの字が離れているあのロゴで、味の苦さではなく人間世界の苦さのイメージをよく出している。あの「ヴぅーん てていんいんいん……」みたいな音も古い特撮の宇宙船みたい

          日記「にがみ」

          硬骨魚類のための寓話「じかんワークショップ」

          「時間 にはそれぞれ 形が あります」 先生はそう言った。 この場で立っているのは先生だけだ。 その他、私たち15人はあおむけに寝そべっている。お互いに「はっしー」とか「ミルトン」とかのあだ名しか知らないし、誰が誰だったかも覚えていない。私のことも誰も覚えていないだろう。 その私たちが今、たった一枚の大きなシーツに一緒にくるまっている。 だから外から見れば、先生はなめらかな15個の丘を持つ広大な砂丘にたった一人立ち、言葉を告げているように見えるだろう。あるいは本人から見れば。

          硬骨魚類のための寓話「じかんワークショップ」

          硬骨魚類のための寓話「おきて破り」

          クル族の王子シャンタヌがとても美しい女に求婚すると、彼女は「私の為す全ての行いを、問うことも止めることもしないのなら」と言った。 シャンタヌは彼女に誓い、二人は夫婦になった。 彼女はやがて子供を産んだ。 彼女は生まれてきた我が子をガンガーに投げ込んで殺した。 シャンタヌはそれを止めなかった。 次の子も次の子も、産んでは大河へ投げ込んだ。 シャンタヌはそれを止めなかった。 しかしそれが7回続き、8人目の子供が生まれた時、ついにシャンタヌは彼女を制止した。 途端に美しい女は女神

          硬骨魚類のための寓話「おきて破り」

          日記「最近見た4つの夢」

          ・背中が盛り上がった直立二足歩行で、ムーンウォークのような歩き方をする猫が家にいる。外はジャコメッティの彫像のような人が往来しており(家の外がなぜか銀座になっている)、外にはその猫を連れて歩かないといけない。 ・手が茹ですぎた小麦粉の塊のような橙色のぶよぶよに覆われていて、その手を住宅街の家と家の狭い隙間に差し入れる。するとそのぶよぶよがどんどん膨らみ、家と家の間に急な降り階段が生じる。その階段から見る景色が綺麗。 ・大学院の時に授業を受けた教室に白いチョークで魔法陣のよ

          日記「最近見た4つの夢」

          硬骨魚類のための寓話「肉は幸福を目指す」

          全ての魚は祝福されている。 全ての草も。全ての牛も祝福されている。 祝福されたものはどのような状況でも幸福で、今からもっと幸福になると信じている。 たとえ薄汚れた蛍光灯の灯りの下、杜撰に解凍されて肛門から青黒い体液を垂れ流し、自らに負けないくらい死んだ目をした料理人の包丁を受け入れるのを待っている。そんな状況でも、その体は幸福を目指してみなぎっている。 私たちが口にする全ての肉がそうなのだ。 だから私たちのような存在でも、幸福とは一体どのようなものか、その気配だけは感じ

          硬骨魚類のための寓話「肉は幸福を目指す」

          日記「スナックの鳳凰/スナックのパパ」

          どこかのスナックのママが50歳だそうで、 胡蝶蘭を自転車で運んでいるお兄さんがいた。 それが後ろの荷台に花部分が後ろを向くように載せてあり、立派な吹き流しが、鳳凰の尻尾のようになっていた。 しかも、運んでいるお兄さんがお札の肖像画級に無表情で、横から見るとそれが本当にめでたい生き物みたいになっていた。鳳凰像と同じ目つき、同じシルエット。 信号が変わってすぐに彼は狭い道へと消えていった。立派な尾をたなびかせて。当たり前ですが自転車は滑らかにスーッと移動し、それもまた瑞獣の動きと

          日記「スナックの鳳凰/スナックのパパ」

          日記「電話の現在地」

          家庭に置いてある電話のことを固定電話というが、固定電話といつから言うようになったのだろうか。最初は単に「電話」とだけ呼ばれていたに違いないのだからな。 明らかに携帯電話の対義語として存在している言葉ではある。いえ電とも言うが同じコンセプトの言葉だ。 「固定電話」……じっとみているとごつくて四角い電話がコンクリートの壁にボルトで打ち付けられている様が思い浮かぶ。ダイヤルもなく、特定の場所としか繋がらない、多分闇の拷問施設とかにある電話だ。それが固定電話。 そもそも「固定電話」と

          日記「電話の現在地」

          硬骨魚類のための寓話「究極のパントマイマー」

          世界最高のマイマーがいた。 彼女は仕草ひとつでこの世にあるどんなものもあるふりが出来、あらゆる感情を感じるふりが出来た。 最高のマイマーとなってからも彼女はマイムを求め続け、マイムも彼女を求めた。 ある朝、彼らはついに一体となり、彼女の元からは机も壁も、痛みも喜びも、本物は全て消え去った。 彼女は今晩も舞台に立つ。

          硬骨魚類のための寓話「究極のパントマイマー」

          硬骨魚類のための寓話「落人の火」

          壇ノ浦の戦いに敗れた平家の武士が命からがら逃げ延びていた。 嵐の中、いつ沈むかもわからない粗末な船の上でひたすら、命だけは助けて欲しいと念じていた。 すると海の向こうから観音様が現れこう告げた。 「舳先に灯されたあの火が消えない間、源氏がお前を見つけることはないだろう」 翌日、嵐から火を守り切った彼は陸地を見つけ、上陸した。そこは侍のいない南方の島だった。 住民は彼を丁重にもてなし、十分な食事と寝床、さらには美しい配偶者まであてがった。彼の傷ついた体は回復したが、火がいつか

          硬骨魚類のための寓話「落人の火」