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Imparlare il Francese è molto difficile

フランス語の独学を始めた。バタイユとボードレールを原文で読みたいので。
これが思った以上に難しい。

今の僕は日本語を母語とし、英語力は字幕なしで映画を見てもほぼストレスがない程度である。2年生までイタリア語を学んでいたため、ラテン系原語の基本的な文法は抑えている。辞書が手元にあればとりあえず文意は取れるだろう。

おそらく言語の修得は苦手な方ではない。
イタリア語が耕したラテン文法の土壌に、水のようにフランス語彙を注ぐだけで、すくすくと読解力が育つはずだ。そう思って参考書を開く。

……。

土はあっても、空気がなかった。つまり、音がない。
これではうまく育たない。
フランス語は私たちのよく知る26のアルファベットを用いながら、それらの組み合わせは私たちの直感に反した音声を呼ぶ。
母音の数は16ある。文字はaeiouyしかないのに。しかもeauが[o]になったりoiが[wa]になったりする。おまけにnの前の母音は鼻母音になる。もうめっちゃくちゃだ。さらに語尾のsやtは発音しないし、fが後ろの母音とくっついて[v]になることもある。
こんなに無茶苦茶なのに、日本の参考書の多くは発音記号が書いていない。

みなさんはこの文章を読むとき、頭の中で自然と音声が流れているはずだ。
文とは要素同士の関係であり、一方向の時間性を持つ。さながら楽譜である。それが演奏されないとなれば、本質の理解は不可能に近い。少なくとも感動することはできない。最も押韻に優れた詩を生む言語であるはずなのに。

一方で興味深い現象も起きている。
フランス語の語彙はイタリア語や英語と共通するものも多い。そのため、綴りを見れば意味がわかる。また、語順や品詞の働きはやはりイタリア語に近い。
そのため、読み方がわからないのに文意が取れるという奇妙な現象が起きている。
日本人が中国語を読むときのような感覚だろうか。
音を伴わない自然言語の働き。単語をベクトルに変換するNLPを想起させる。言葉とは別のところに意味そのものがあるかもしれないのだ。

けっこう楽しんでいる。やがて育ったフランス語がどんな実りをもたらすのかと心躍る。
来週からはフランス語の輪読が始まってしまう。それに間に合うため、今日も意味の海で風を聴く。

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