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小説感想

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2024年3月の記事一覧

アル中探偵が主人公のハードボイルド「八百万の死にざま」は、社会の中で自己規範をいかに守るかを教えてくれた小説だった。

 先日「八百万の死にざま」を久しぶりに読み返した。これも自分が影響を受けたものに確実に入る小説だ。

「八百万の死にざま」は、アルコール中毒に苦しむ探偵マット・スカダーがキムというコールガールから「足を洗いたいから、ヒモ(売春の元締め)と話をつけて欲しい」と依頼されるところから話が始まる。
 スカダーはヒモであるチャンスと話をつけ、キムに「話はついたから君は自由だ。もう心配しなくていい」と伝える。

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物語類型「幸福な王子」が苦手である。

物語類型「幸福な王子」が苦手である。

*この記事には「俺の家の話」「ダークソウルⅢ」「鎌倉殿の13人」のネタバレが含まれています。

「俺の家の話」を最後まで見て、「『幸福な王子』だ」と気付いた。

 好きだったり、苦手だったり、異様に感情移入してしまったり、何度見てもパブロフの犬のように泣いてしまう。
 そんな特別な物語の型を持つ人も多いと思うが、自分にとって冷静に見ていられない、ゆえに鬼門である物語類型が「幸福な王子」だ。
 どう

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翻訳作品における訳者同士の解釈違いの面白さについて。

翻訳作品における訳者同士の解釈違いの面白さについて。

 先日、五年前に書いた記事がハテブにホッテントリ入りした。
「蠅の王」に興味を持った人が、X(旧Twitter)で紹介してくれたのがきっかけのようだ(ありがとうございます!)
 記事を読んでくれたことをきっかけに、「読んでみようかな」「新訳が出たの知らんかった。久し振りに読んでみるか」という人が少しでもいてくれたら嬉しい。
 「蠅の王」は、自分が影響を受けた小説10冊に入る本で、これまでも隙あらば

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