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漫画の感想

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2023年10月の記事一覧

「ヤンという機能」が「銀河英雄伝説」をこれほど長く愛される傑作にしている。

「ヤンという機能」が「銀河英雄伝説」をこれほど長く愛される傑作にしている。

 記事が読んでもらえているのをきっかけに、久しぶりに「銀英伝」のことを思い出した。
 前から自分が「ヤンをどう見ているか」を書きたいと思っていたので、いい機会なので書こうと思う。

*原作10巻まで及び他の田中芳樹の作品のネタバレが含まれます。

◆ヤンは「当事者としての選択とそれに伴う責任」を免除する機能。

 自分はヤンをキャラではなく「機能」として捉えている。
「銀河英雄伝説」の面白さと凄さ

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ある作品を読むことで他の作品の理解が深まると、テンションが上がる。(「葬送のフリーレン」×「ノルウェイの森」)

ある作品を読むことで他の作品の理解が深まると、テンションが上がる。(「葬送のフリーレン」×「ノルウェイの森」)

「葬送のフリーレン」を読んでいて、「ノルウェイの森」の永沢のセリフを思い出した。

「君はよくわかってないようだけれど、人が誰かを理解するのはしかるべき時期が来たからであって、その誰かが相手に理解してほしいと望んだからではない」(「ノルウェイの森」(下)P116)

 このシーンの永沢は終始、邪悪と言っていい残酷さをハツミに向けている。このセリフはその悪意の極めつけと言っていい。

 主人公のワタ

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【「葬送のフリーレン」キャラ語り】「黄金郷のマハト」は、「自分が凄く好きなことにまったく才能がない人」だから共感してしまうのだ。

【「葬送のフリーレン」キャラ語り】「黄金郷のマハト」は、「自分が凄く好きなことにまったく才能がない人」だから共感してしまうのだ。

*既刊11巻までのネタバレが含まれます。未読のかたはご注意ください。

(これまでのあらすじ)

 これまでブログやnoteで、「葬送のフリーレン」は主要キャラは人間関係の機微を察知し対応する能力が異様に高く、その能力を標準としてコミュニケーションをとっている。
 そしてそういうハイレベルなコミュケーションを行うキャラの内面は直接的にはほとんど描写されない。そのため、その内面もそこから派生するスト

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「葬送のフリーレン」の男キャラの人間関係に対応するスキルとケア能力は、超人的である。

「葬送のフリーレン」の男キャラの人間関係に対応するスキルとケア能力は、超人的である。

「葬送のフリーレン」を読み返したら、シュタルクやザインに対するフェルンの態度が余りに理不尽で我儘なのが気になった。
 フェルンのシュタルクやザインに対する態度は、↓に書いた究極の甘えだ。

「不機嫌や無視で人をコントロールしてはいけない」とよく言われるが、フェルンは「家族に感情や機嫌をモロに出す甘え」をそのままやっている。

 人間関係は相互作用を長いスパンで本人同士が判断するものなのでそれだけを

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「『人を理解しようとすること』は時に暴力にもなる」という前提をきちんと描いているのが「葬送のフリーレン」の好きなところだ。

「『人を理解しようとすること』は時に暴力にもなる」という前提をきちんと描いているのが「葬送のフリーレン」の好きなところだ。

 自分が「葬送のフリーレン」で最も好きな点は、「人をわかろうとすること」を無条件に「いいこと」として肯定せず、魔族を通してその危険性と暴力性を描いているところだ。
 多くの場合、人同士の間で起こることもさほど変わらない。

「『人を理解する』とはどういうことか」
という疑問を持たず、「自分の認識で相手をはかることが人を知るということ」と勘違いしたまま他人の心の内に踏み込めば、相手を致命的に傷つける

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