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御代替わりの儀式──践祚、大嘗祭そして改元まで

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平成の御代替わりでの議論は徹頭徹尾、政教分離がテーマでした。そして令和の御代替わりもまたしかりでした。天皇がなさる儀礼には宗教性があるということなのですが、それは如何なるものなの…
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2022年12月の記事一覧

大嘗祭の「相嘗」の意味──真弓常忠「大嘗祭」論から考える(令和4年12月20日、火曜日)

大嘗祭の「相嘗」の意味──真弓常忠「大嘗祭」論から考える(令和4年12月20日、火曜日)

さきごろサッカーW杯が行われたカタールは人口250万人の9割が移民である。カタール国籍保持者のほとんどがスンニ派のムスリムで、イスラムが国教なのに、全人口で見るとムスリムの割合は7割を切る。非ムスリムのほとんどはキリスト教徒とヒンドゥーという。批判されている移民労働者の人権問題などには、宗教的な背景が見え隠れしている。

日本ではこの宗教的差別ということがなかなか分かりづらい。それは古来、天皇が天

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一条兼良は「大嘗祭の祭神は皇祖天照大神」と主張していない──真弓忠常「大嘗祭」論の資料の誤読(令和4年12月18日、日曜日)

一条兼良は「大嘗祭の祭神は皇祖天照大神」と主張していない──真弓忠常「大嘗祭」論の資料の誤読(令和4年12月18日、日曜日)

真弓常忠・皇學館大学名誉教授(故人)は著書の『大嘗祭』で、大嘗祭の大嘗宮の儀で祀られる神について諸説あることを解説し、その筆頭に天照大神説を掲げている。その根拠とされているのが、室町時代の公卿で、古今の有職故実に通じた不世出の古典学者・一条兼良の「代始和抄」であった。

兼良といえば、青年期に将軍から「白馬の節会はなぜアオウマノセチエと読むのか?」と訊ねられ、古典を引用して、たちどころに解答し、感

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大嘗祭・新嘗祭に祀られる神──真弓常忠「大嘗祭」論から考える(令和4年12月11日、日曜日)

大嘗祭・新嘗祭に祀られる神──真弓常忠「大嘗祭」論から考える(令和4年12月11日、日曜日)

令和の御代替わりのおり、國學院大學博物館で企画展が行われた。展示は「米」だけでなく、「粟」も含まれ、さすがは國學院だと感心した。「稲の祭り」論で凝り固まる人たちとはちょっと違う。

ただ、このとき行われていたミニ講演会の中身はいただけなかった。若い研究者は、大嘗祭は天皇が皇祖天照大神を祀ると断言していた。画竜点睛を欠くとはこのことである。

なぜそう理解するのか、私にはまったく理解できなかった。「

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真弓常忠「大嘗祭」論が誤認する「新嘗祭の本義」(令和4年12月7日、水曜日)

真弓常忠「大嘗祭」論が誤認する「新嘗祭の本義」(令和4年12月7日、水曜日)

前回にひき続き、真弓常忠・皇學館大学名誉教授(故人)の『大嘗祭』を読みつつ、あらためて大嘗祭・新嘗祭の本義について考えたい。

というのも、真弓先生は、じつに興味深いことに、星野輝興・元掌典の『日本の祭祀』を引用し、「新嘗祭は収穫感謝ではなく、『皇祖より御おもの』をいただかれることを主にした祭り」と説明しているからである。

つまり、神社検定公式テキストの「(新嘗祭は)神恩を感謝」は不正確で、宮内

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