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「ライツビジネス」はチームビジネス

知的財産において「著作権」は別格的に大切にされている。
ということを先日書きましたが、その大切さを形にするための様々な役割がその周りに「○○権」という名をまとって存在しています。
それらは、大きなくくりとして「著作隣接権」と呼ばれています。
著作物を活用しようとすると、著作物自体の権利対応よりも、この「著作隣接権」への対応が大変だったという記憶の方も多いかもしれません。
正直私もそうでしたし、その時は(歯に衣を着せぬ言い方をすれば)「王様の周りの取り巻きが面倒だな」的な感情も抱きました。
ですが、それは「著作隣接権」を正しく理解していなかったんだな、と今となっては思います。
正しく理解すればするほど、その権利を行使する側も正しく理解していないのかも⁈とも思えてきました。
この「著作隣接権」への正しい理解こそがライツビジネスの幸せな展開の肝になるな、と思うのです。

元々は全て著作者のもの

ここにAさんというアーティストがいます。
この度、彼は「ガンジス川と信濃川」という楽曲を作詞作曲しました。
この時点で彼には著作権法上の権利として「著作財産権(いわゆる著作権)」と「著作者人格権」というものが生まれます。
後者は、例えばその作品の内容(タイトルとか歌詞とか)の改変を受けない権利(同一性保持権)など、著作をした「人」としてその人格を尊重・保護するための権利で、これはAさん自身に属し、これを誰かに譲渡することは出来ません。
そして前者の「著作財産権」の中には、その「楽曲を演奏する権利(実演権)」、「録音してリリースする権利(録音権・複製権)」、「放送して広く人々に知らせる権利(放送権)」などなど、我々の頭を悩ませて来た⁈多くの「著作隣接権」が含まれています。
ただ、これらの権利は全てAさんの著作物が持っている権利で、実は我々が対面するレコード会社や放送局や音楽出版社が最初から持っているものではないのです。

皆でチームとなって「ガンジス川と信濃川」を世に広めるのだ!

「著作隣接権」の目的は、「著作物を広く流通させ、文化的発展をいっそう促す」です。
Aさんが作った「ガンジス川と信濃川」をより多くの人々のもとに届けるには、それを録音し、CDにしたり配信したり、テレビに出て歌ったり、有線放送で流したり、という行為が必要となります。
しかし、それをAさん1人で全て実行するのは不可能。
故に、レコード会社やテレビ局などにそれぞれの役割に見合った「著作隣接権」を“譲渡“し、幅広いコンテンツの形となって多くの方々に行き渡ることを目指すわけです。
その“譲渡“の対価として、楽曲のメジャー化という状況価値の他に、その具体的なビジネス契約として、「アーティスト印税(レコード会社から)」や「出演料(テレビ局他)」などが発生します。
その譲渡された側にもインセンティブを与えることで、著作物のより一層の魅力の創出と流通の拡大を実現する。
これは「コンテンツビジネス」の成長のための非常によく出来たシステムなのです。

“著作物とそれを受ける大衆の幸せ“が全てのベース

人は権利を手に入れると、ついついその権利を中心に考え、それを守ることに意識が行きがちで、その権利が元来何のために存在しているのか?を忘れがちです。
これは、あくまで私の経験上の感想であり考えではありますが、「著作隣接権」において話がややこしくなった時は、「この企画や著作物/著作者にとってプラスなのか?」「この企画はその著作物によって世の中の人々が幸せになる機会を生み出すのか?」という視点に戻って考える、ということが大切なのではないかと思います。
何故なら「著作隣接権」保有者は、上記の目的を果たすためのチームで、運用担務を任せられたメンバーだからです。


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