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ブロック・プレーの過去・現在・未来【5/5】

ブロック・プレーの過去・現在・未来【4/5】からの続きです。

ブロック・プレーの重要性を理解する

ここまで、ブロック・プレーの歴史と本質、その目的や特徴、さらにはシステムについて概観してきた。ここまでの内容を読む前と読んだ後で、ブロック・プレーに対する理解度、その重要性に対する認識には変化があっただろうか。もし、何か読者に変化が生まれたのであれば、これほどうれしいことはない。なぜなら、私がこれまでバレーボールに関わってきての経験則に過ぎないが、日本のあらゆるカテゴリーにおいてブロック・プレーがあまりに軽視され、理解されていないように感じているからである。そして、プレーヤーが低年齢になればなるほど、その傾向は強いように思う。

初心者レベルのプレーヤー、1年ないしはそれより短い時間の中で、小・中学生といった育成カテゴリーで試合に勝つことだけを目標に設定するならば、ブロック練習に多くの時間を割くことは非効率的かつ非合理的と言えるかもしれない。そもそも、ネットから手がほとんど出ないというプレーヤーがいるというのも現実問題としてあるだろうし、ブロックによる得点もサーブ・スパイクによる得点ほど多くは望めないということもあるだろう。

さらに、小学生カテゴリでは特別ルールであるフリー・ポジション制が日本においては採用されている(私が知る限り、海外でこのような制度は存在しない)ため、ローテーションする必要性がない。小学生カテゴリでは、ブロックもアタックもほとんど練習することなく後衛でディフェンス・プレーしかしたことがないというプレーヤーも決して少なくないように思う。

では、身長も伸びて体力もついて、ネットから十分に手が出るようになってから、ブロック・プレーを学び始める。それで本当によいのだろうか。

そんなはずはない。

ブロック・プレーはバレーボールを始めたばかりの初心者からすぐにでも取り組むべきプレーだと断言できる。(ブロック・プレーに限らずほかのすべてのプレーも同様だが)

バレーボールはその特性ゆえ、初心者がゲームを楽しむまでに時間がかかるスポーツだと一般的には言われている。しかし、ネットを低くする、2本目のボール・ヒット(セット)はボールを保持する(キャッチする)ことを許容する、チーム人数を減らしてたくさんボールにタッチできるようにするなど、様々な工夫をすることによって、初心者でもバレーボール・ゲームをまるごと楽しむことができるはずである。

私の経験にもなるが、バレーボールを初体験するプレーヤーが練習に参加した日にブロック・プレーの練習したことがある。彼らがブロック・プレーで相手アタッカーがヒットしたボールに初めて触れたときの嬉しそうな表情は今も忘れられない。格別であった。初心者レベルのプレーヤーであってもネットを下げる、柔らかいボールを使用するなどの工夫をしてブロック・プレーを実際にやってみることで、その本質や目的、そして特徴などを感じ取ることができるのだ。そして、ブロック・プレーを実際に体験した後、その経験を言語化していくというプロセスを通じて、プレーヤーはブロック・プレーに対する理解をさらに深めていくと同時にブロック・プレーに魅せられていくに違いないと私は思う。

私的な経験や考えを多く述べてしまったが、私は日本において、ブロック・プレーの重要性を理解するバレーボーラーを増やすことが喫緊の大きな課題だとさえ思っている。それくらいブロック・プレーは現代バレーボールにおいて重要なプレーであると思っている。

特定のカテゴリにおける目前の勝利を最優先にするのではなく、すべてのバレーボーラーが生涯バレーボールをまるごと楽しみ、学べるような環境をプレーヤーを取り囲むアントラージュたちが中心となって創っていかなければならないのだ。

ブロック・プレーの「これから」

ブロック・プレーの重要性を理解するバレーボーラーを増やすことの意義について精一杯伝えたところで、改めてブロック・プレーの「これから」に視点を向けてみたいと思う。

ブロック・プレーは先述した通り、常にアタック・プレーの進化とともにある。新しいアタック戦術やシステムが生まれるとそれに拮抗して、新しいブロック戦術やシステムが生まれてくる。そして、さらにまた新しいアタック戦術が生まれてくる。この螺旋階段を登っていくかのようなプロセス(アジャイル)がどこまで続いていくのである。

バレーボールが多くの人々を魅了し続ける理由の一つに、こうしたプロセスを経ながら常にバレーボールが発展・進化し続けていることにあると言っても過言ではないだろう。そして、この先もバレーボールがプレーされ続ける限り、バレーボールは今の私たちが想像もしていないような発展と進化を続けるのだろう

バレーボールの歴史を俯瞰して眺めてみたとき、ブロック・プレーの歴史というものは極めて浅い。まさにそこはバレーボールのフロンティアなのだ。バレーボールがさらに魅力的なスポーツへと発展していく上で、ブロック・プレーの発展・進化は欠かせない重要な要素となるだろう。


※本記事は以下3名の共著となります。著者プロフィールは50音順。

バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。