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里親月間、まずは知ることから。

10月4日は里親の日。
10月は里親月間だそうです。

世の中、知っているようで、知らないことが多い。
昨今の里親制度については、恥ずかしながら無知も同然。

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我が家は、核家族ひとりっ子体制で早10年。

二度目の顕微受精でやっとこさ我が子を授かった身としては、正直、親になれただけでも御の字なのだが。

あの頃、もうこれでダメならまた別の人生を謳歌すりゃあいい、夫婦2人で歩む人生も悪くはないかと、数ヶ月後、宿った奇跡に浮き足立つこともつゆ知らず、開き直って移植目前は極寒のソウルで買い物しまくったものである。

犬や猫など基本ペット禁止の住まいなので、奇跡が訪れていなければ、唯一許可されている小鳥でも迎え、肩に乗せては囀りあって陽気に生きていたかもしれない。

正直なところ、「こども」を迎えるという里親制度は、固定概念として高いハードルがあった。
今だって、里親と聞いて真っ先に頭に浮かぶのは犬だったりする。

娘が幼かった頃にお世話になっていた幼児教室に、6人兄弟で育ったというお母さんがいらした。

天真爛漫で活発な姉弟のお母さんで、お父さんも育児に積極的な共働きのご夫婦。

教室では懇談の時間などがあり、先生を交えていわば子育ての悩みや相談を互いにざっくばらんに話しあっていた。互いの悩みを共有しながら、解決法を考えたり、はたまた、日々のつもり積もったイライラをガス抜きできる時間でもあり、今振り返っても学ぶことの多い非常に有意義な時間だった。

ある日の懇談、そのお母さんが自分の育ってきた環境を振り返り、実母であるお母さんは実子であるご自身とそうではないご兄弟とを分け隔てることなく、パワフルに肝っ玉母さんであったことを話されていた。とてもじゃないけれど、私には無理だなーと添えておられたが、「里親」というものを身近に感じた日でもあった。

考えて悩んで、とかでなく、だったらやってみればいい!なんとかなる!みたいなアグレッシブな子育てエピソードに、潔さや頼もしさも感じる話だった。

もちろん、現実問題大変なこともあったかとは思うが、互いに助け合いながら、賑やかに育つ、今は稀な部類になるであろう大家族の魅力なども想像しながら、印象深い懇談の日だった。


その帰り道、中学生の同級生の事を思い出した。

男子にも躊躇なくゲキを飛ばす男勝りなワイルドなA子。思春期真っ只中な男子たちは、A子に向かってよくこんな事を言ってはちょっかいを出していた。

「A子、おまえ絶対もらい子だろー!
 だってお母さんと全然似てないもーん」

「うるさーい!黙れーー!」

といつものように追いかけるA子。

確かに、上品な佇まいのお母さんとA子は全然似ていなかったが、そんなことA子本人も、ちょっかいを出す男子も、いつもの光景を見て笑う私たちも、誰も気に止めていなかった。

しかしある時、突然A子が学校に来なくなってしまった。みんな何かあったのかなと心配した。もちろん、お調子ものの男子たちも。

数日後、A子と1番仲の良かった友達経由からA子が休んでいる理由を聞いて、愕然とした。

上品な佇まいのあの美人のお母さんとA子は血が繋がっていなかった。もちろん、ダンディなA子のお父さんとも。詳しい話は聞いていないままだが、つまるところ、里子としてA子は優しいご両親に引きとられ、今日の今日までスクスクと元気に育ってきたのだった。

田舎のハナタレ中学生のわたしたちにとっては、かなり衝撃的な事実だった。いつもわーぎゃーやかましい男子たちも、A子にどんな声をかければ良いのか、黙り込んでいた。

しばらく欠席続きだったA子だったが、季節が変わる頃には、学校でA子を見かけるようになった。
久しぶりに見たA子は、かなり痩せていた事を何となく覚えている。

A子とは別の小学校だったので、中学校からのA子しか知らないが、仲の良かった小学校からの友達たちは言葉に迷いながらも、何もなかったかのように、いつも通りに接していた。

誰かから箝口令が敷かれたわけでも、口止めされたわけでもなかったが、田舎の中学校なんてみんな知り合いみたいなところがある。A子のお母さんやお父さんが今どんな気持ちだろうかなんてことも個々に考えながら、多感な中学生なりに言葉を慎み、また学校に来るようになったA子に声をかけた。


中学三年生の時のことである。

今ほどオープンな時代でもない片田舎の昭和の町でも里親制度によって築かれた家族がいた。

あれから30年、その後A子がどのような人生を歩んでいるのかは定かではないが、素敵なご両親と共に、今も元気にゲキを飛ばしながらあの時乗り越えた未来をしっかり歩んでいて欲しいなあと思う。


「里親制度」受け入れる側も、支える側も、きっと試行錯誤の多い制度だと思うが、多様性を豪語するいまの時代、「里親」という言葉自体も自然と社会に浸透していくような、そんな流れができれば良いなと思った。

まずは、知ることからかな。


久しぶりにA子のこと思い出したな。
元気にしてるといいな。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。👨‍👩‍👧


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