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時計の契約:第4章15時

第4章:交差する運命

15時:命の光交差点

時の本を開いたまま表紙を見てみる、指先でなぞるとその光沢が心地よく伝わってくる。手に感じる本の重みは、その中に秘められた力の象徴であり、未知の可能性に満ちた存在を感じさせる。部屋の中には静寂が広がり、悪魔の不安げな表情がその中に溶け込むように浮かび上がる。その眼差しは、新たな淵から抜け出すような虚ろさを帯びていた。
 
「なぜ、この本に悪魔が宿るのか・・・」
俺の問いかけが部屋に響く。その声には疑問と不安が入り混じっていた。時翔ときとの表情は物思いに沈み、時の本を見つめる。悪魔はしばし沈黙を保ち、その間部屋の中には時折聞こえる時計の音だけが響いていた。やがて、黒い悪魔が口を開いた。
「わか、らないぃ、このま、、、までは、、お前、、たちも、、俺た、、ちも、命が、、、つきるよぉ、、、」悪魔の声は弱々しく、言葉の切れ間に歪んだ息遣いが漏れる。
複雑な感情が渦巻き、恐れと不安が胸に広がる。それと同時に勇気と決意が芽生えてきた。本の世界への一歩を踏み出すのか、それとも現実の世界で運命を受け入れるのか。未知の危険と対峙しながら、彼らの決断が次の章の幕開けを告げる。
 
なぜ、時の本に悪魔が宿っているのか。それは悪魔たちもわかっていない。彼らは記憶を消されたのか、それとも何か他の力によって封印されたのか。悪魔も命を喰らわないと生きていけないことを知っている。彼らの姿をよく見るとガリガリで声も途切れることがよくある。悪魔はじいちゃんを喰らってから命を喰らうことをやめたようだ。それが自分たちへの罪と罰の証だということを理解しているようだった。その事実を受け入れているのだろう。それが彼らの運命であり、その苦しみを受け入れるしかないのかもしれない。自らの運命を受け入れる決意と悲しみが交錯している。部屋の中に漂う静寂は、その複雑な感情をより際立たせているようだった。
 
悪魔の言葉に、俺たちは身を震わせた。本の世界への入り口を探る決断は、まさに身の危険を冒すことに他ならない。しかし、それ以上に現実の世界での絶望的な状況に立ち向かうことはできないという思いが、俺たちの心を押しつぶしていく。
 
どれだけ危険なことが起こるのかは分からない。だが、結局このまま生きていても死を待つだけだ。もちろん、本の世界に入るのは怖いし、出来るのかわからないがやるしかなかった。本と悪魔の関係も、そこにカギがありそうだ。俺たちの体はますます痛みを増していた。死が迫りつつあるような感覚がまとわりついてくる。このままでは生き延びることはできないという確信が芽生えた。


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