時計の契約:第2章9時
9時:時の迷宮
[颯空の世界]
「じいちゃん、じいちゃん、待って」俺は手招きするじいちゃんに向かって駆け寄った。ここは一体どこだろうか。
幻想的な空間が広がり、まるで天国のような居心地の良さが漂っている。青く透き通った空が広がり、優しい風が心地よく吹き抜ける。夢か現実か、そんなことを考える余裕もないほど、この不思議な場所に心を奪われている。柔らかな風が心地よく、体が浄化されているように風が全身をまとっては通り過ぎた。奥には静かに流れる滝があり、その奥の入り口を入ると石碑が目に飛び込んできた。
「今やっているゲームにそっくりだ。」と思わずつぶやく。石碑の上には古びた魔法の本が重々しく置かれていた。表紙には時計が描かれている。じいちゃんが開くように促す。重厚な本を開くと、その瞬間光があふれ出し、不気味な声が響き渡った。
「は、ー、、ぁ、、る、ー、、ぅ、、、」不気味な声が小さく、悲しげに響く。そしてじいちゃんが俺の耳元で囁いた。
「ル・ヴォレマ・ナア・ヴィラ」あ、この言葉は・・・
「兄さん、兄さん」目を覚ますとベッドに仰向けになっていた。ベッドの脇で時翔が泣いていた。どうやら意識が飛んでいたようだった。心配そうに見つめる時翔は眉を細め緊張感が伝わってきた。
「兄さん、名前は何?」静かに問いかける。
「え?颯空だけど、なに、何かのテスト?」時翔の質問に戸惑いながらも答える。
「時の本って知ってる?」
「知らないけど、時翔の好きな本なのか?」なんの質問なのか意図が分からなった。
「はるって誰か知ってる?」不安そうな顔で聞いてきた。
「んー、知らないけどなんか関係あるの?」俺は首を傾げた。
しかし、次の言葉で何かにハッとする自分がいた。一呼吸置いて時翔が口にした言葉に耳を疑った。
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