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所属会派から読み解く、参政党地方議員の政治的性格 ~彼らは「非妥協的な極右」なのか~

 本稿は参政党の地方議員の政治的性格を、彼らが議会で所属している会派を手がかりとして考察するものである。

 参政党は一般的に、既存の政党を厳しく批判する姿勢(1)や「極右政党」というイメージ(2)で知られている。
 他方国政政党になって以来メディアや専門家らが参政党を取り上げる機会も増えたが、その中で神谷宗幣代表が政策的に共通する部分があれば「協力できるところとはどこ(の政党)とでも協力する」と述べていたり(3) 、拙稿で紹介した通り「参政党支持者は必ずしも保守的ではない」ことを示す分析がある(4)等 、寧ろ党がこれらの一般的な認識とは異なる性格を持っている可能性も考えられるようになった。
 参政党が国政政党となって約1年半が経過し、彼らの実態を掴む手がかりが充実しつつある今、党へのこの一般的なイメージがどれほど正確なのかを明らかにすることはいよいよ必要となっているであろう

他党と協力する余地があることを明言する
神谷宗幣代表(出典

 そこで参政党の実態を解明する上で、所属する地方議員を分析することは重要である。
 彼らは研修等を通じて党中央の影響を受け、また市政報告会等を通じて党の地方組織や末端の党員に影響を与える存在である。したがって彼らの政治的性格を知ることは、党中央や平党員、ひいては党全体の政治的性格を知ることにつながるであろう

 そして本稿で着目するものは「会派」である。
 会派とは議会内で活動を共にしようとする議員のグループである。これは政党とは異なり、政党に所属していない議員同士で会派を組んだり、複数の政党で一つの会派を構成したりすることもある(5) 。
 即ち会派への所属状況を検討すれば、参政党議員が「他党と連携をしているのかどうか」「どのような政治的立場の議員と協力しているのか」等が明らかになり、もって党の「他党との距離感」「政策位置」を理解する手がかりとなるであろう。
 本稿は以上の狙いから、分析を進めていくものである(6) 。

 さて、検討にあたっては前述の参政党への一般的な認識を踏まえ、以下の仮説を提示したい。

仮説1:参政党議員はあまり他の議員と会派を結成しない
仮説2:参政党議員は他の議員との会派結成を選択する場合、保守系の議員と結成する傾向がある

 仮説1は参政党議員が彼らとの協調・妥協を嫌うであろうと考えられることから導出される。何故なら前述の通り党幹部は演説等で既存の政治家や政党に批判的な姿勢をしばしば示しており、地方議員もその影響を受けている可能性が高いからである。
 また、もし参政党がイメージ通りの単なる極右政党であれば、その政党の理念に賛同する議員にとって左派的な政党の議員は理念や政策の距離が遠い存在であり、彼らとの連携は難しいと判断するであろう。仮説2はその観点から導かれるものである。

 これらの仮説の検証にあたり、本稿は次の手順で進められる。
 まず1では参政党の地方議員がどの程度会派に所属しているのかを確認する。2では参政党議員が所属している会派について、他にどのような議員が参加しているのかを明らかにする。3では参政党議員と他党の議員による会派がどのような目的で成立するのか、参政党議員と自民党議員の双方の立場から検証する。そして4では本稿の結論と、そこから示唆されるものについて述べる。

 なお、参政党議員が会派に所属するか否かについては、実際は議員個人や議会の情勢といった個別の要因に左右されるものと思われる(7) 。本稿はあくまでも大まかな傾向を掴もうとする試みである。

1. 参政党議員の会派所属状況

 本章ではまず、参政党の地方議員のうちどれほどの人数が会派に所属しているのかについて検討する。分析の手順は以下の通りである。

① 参政党のHPから、党に所属している地方議員を確認する(8)
② ①で確認した所属議員が議会で会派に属しているのか、またどの会派に属しているのかについて、各議会のHP、及び「議会だより」等から確認する

 この手順に則ると、141名の地方議員が所属する、137の地方議会が分析対象となる(9) 。そしてこれを検討した結果は表1~5の通りである。

 表の通り、参政党議員が会派に所属していない議会は38議会、一人会派を形成しているのは31議会(10) 、そして他の議員と会派を結成したのは46議会である。また会派制度が採用されていない、若しくは採用されているか不明な議会は22議会であった。
 即ち「会派制なし、不明」を除いた中では、参政党議員の約40%が、他の議員と会派を結成することを選択したのである。

 ここで参考として、しばしば参政党と同様に新興政党として扱われるれいわ新選組の地方議員の会派所属状況を見ると(11) 、分析対象である55議会のうち無会派が17議会、一人会派が18議会、他議員との会派が14議会、所属会派が複数に分かれているのが1議会、会派制なし、または不明なものが5議会となった。即ちれいわ議員の約28%が他の議員との会派結成を選択したことになる。

 ここで注目すべきなのは、れいわは参政党同様既存政党を鋭く批判しながらも、一方で国会活動や選挙ではしばしば他党と協力関係を結んでいる点(12)である。それ故れいわにとって、地方議会で他党と連携しようとすることはさほど困難ではないだろう。
 他方、参政党は国政進出から日が浅いこともあって他党と政党レベルで協力した実績に乏しく、少なくとも国政においては独自の活動を主としてきたというものが実状であろう。それ故、国政での動向だけを見て「参政党が地方議会で他党と協力関係を結ぶことは、れいわと比べてハードルが高いのではないか」と予想することは自然である。

 しかし単純な比較はできないとはいえ、両党の地方議員の会派所属状況を確認した結果分かったことは、参政党議員が他の議員との会派結成を選択するケースはれいわと比べて少ないどころか、寧ろ多いとも言える、ということである。
 したがって、参政党は他党や他の議員と協力関係を結ばない孤立した政党ではなく、神谷代表が述べた通り彼らとも十分連携可能な政党である、と言えるであろう。それ故、仮説1は誤りであったと結論付けたい(13) 。

2. 参政党議員と会派を結成する議員の党派

 本章では参政党議員と会派を結成する議員の党派にどのような特徴があるかについて検討する。
 第一に参政党と会派を結成した議員がどの政党に所属しているかを検証する。そして第二に参政党と会派を結成した無所属議員の政治的立場について分析する。

2.1. 政党所属議員

 本節では参政党議員と会派を結成した議員の所属政党について検証する。その手順は以下の通りである。

① 参政党議員と会派を結成している議員が誰か、各議会のHP、及び「議会だより」等から確認する
② ①で調べた議員が直近の選挙でどの政党から公認を得ていたか、選挙ドットコム(14)の各記事から確認する(15)

 この手順に則ると、1で明らかにした「他の議員と会派を結成した」46議会が分析対象になる。そしてこれを検討した結果は表6~8の通りである。

 最も多いパターンは無所属議員とだけ会派を組むものであるが、差し当たりこの分析は後で行うものとし、まずはこれが確認された20の議会と、参政党議員だけで構成される会派が存在する3つの市議会(熊本市、飯能市、吹田市)を除いた、参政党議員が他党の所属議員と会派を組んでいる23の議会を検討する。

 この表からは参政党議員が様々な政党と幅広く会派を組んでいるということが読み取れるが、その中でも最も会派をよく組んでいる政党は自民党(15議会)である。参政党はしばしば街頭演説等で自民党を激しく批判しているが、こと地方議会においては彼らと連携するケースが多い、という点は注目に値する。
 また政党のイデオロギーに着目すると、保守的な理念を持つ政党(16)と会派を組んだパターンは全体の半分以上である16議会で確認された。このように保守系の政党と会派を組むことが多い傾向が見られた点は、仮説2と合致するものであろう。

 一方で立憲民主党と会派を組んでいる議会は4つ存在する。
 ここで注意すべきなのは、参政党と会派を結成した立憲民主党の議員には、「(旧)立憲民主党」(2017年結成、2020年解党)や社民党といった明らかに左派的な理念や政策を訴えていた政党の出身者も含まれている(17)点である。
 もし参政党議員が一般的なイメージ通り「非妥協的な極右主義者」であるなら、これらの議員とは理念や政策の距離が大きく、本来は連携が難しいであろう。しかしながら参政党議員がこれら左派政党の出身者とも会派を組んでいる点を見ると、彼らを単純な「極右主義者」と決めつけることは難しい、という結論を見出せるのではないだろうか。

2.2. 無所属議員

 前節で述べた通り、参政党議員と無所属議員だけが所属する会派は20議会で確認されたが、彼らと共に他党の所属議員も参加している会派も含めると、その数は39議会と全体の半分以上になる。しかし、参政党議員と連携する無所属議員とはどのような者なのであろうか。
 ここではこれらの無所属議員について、その政治的立場を検討する(18) 。

 彼らの分析にあたり、ここでは「保守系無所属」というものに着目したい。
 杣によれば、わが国では地方に行くにつれて議会の党派性が保守化し、特に市町村議会に多い無所属議員のほとんどは保守系である(19) 。したがって、もし参政党議員が保守的な理念を抱いているのなら、彼らと会派結成を通じて連携する無所属議員にも保守系が多いのではなかろうか
 とはいえ、分析対象の会派に参加している無所属議員全員を保守系かどうか調べることは、時間と紙幅の関係上困難である。そこで本節では「参政党議員が所属している会派に、保守系無所属が1人でも参加しているのか」について検討したいと思う。

保守系無所属の判断基準の一つ、
為書き(筆者撮影。画像の一部を加工しています)

 さて、この分析対象の39議会の会派には、前述の保守系政党の議員も所属しているものが13含まれている。ここでは彼らと会派を組んでいる無所属議員も同様に保守系である可能性が高いと考え、差し当たりこれらは分析対象から外し、残りの26の会派に加わっている無所属議員の分析を進めたい。
 また無所属議員を「何をもって保守系無所属とみなすか」であるが、これには明確な定義があるわけではない。そこで議員が自らを「保守系」と評し、または各種報道で議員等が「保守系」と評された場合に加え、いささか乱暴な基準だが

① 自民党関係者と思われる(自民党やその系列の会派に所属していた、選挙で自民党候補を応援した、等)
② 選挙で自民党員からの応援を受けた(応援演説の実施や為書きの送付、等)
③ 明らかに保守的な理念を持つ団体に参加している

以上のいずれかに該当することが各人のホームページやSNS、各種報道等から確認できた無所属議員を保守系無所属とみなしたい(20) 。この基準を用いて、各会派に保守系無所属が参加しているかを検討したものが表9である(21) 。

 表の通り26の会派のうち、少なくとも半分以上である18会派で保守系無所属が確認された。内訳を見ると、保守系と評する・評された者が2名、自民党関係者と思われる者が3名と1会派、選挙で自民党員からの応援を受けた者が8名、保守系の団体に参加している者が4名となる。
 一方で対象の無所属議員の中に保守系が確認できなかった会派も存在する。例えば高槻市の「市民連合議員団」に参加している無所属議員2名はいずれも連合(日本労働組合総連合会)の推薦を得た者であり(22) 、彼らを保守系とみなすことは流石に困難であろう。

 以上の通り、保守系無所属と会派を組む傾向が比較的多く見られた点については、やはり仮説2と合致するものであろう。他方保守系とは言い難い無所属議員とも会派を組んでいるケースが確認されたは、2.1と共通するものである。

2.3. 小括

 ここで本章で明らかになったことをまとめたい。

 参政党議員が他党の議員や無所属議員と結成した43の会派のうち、保守系政党の議員と組んだものは16、保守系無所属と組んだものは18存在する。即ちこれら保守系の議員との会派は合計して34に上り、全体の4分の3にも達している。これを踏まえると、仮説2の通り「参政党議員は保守系議員と会派を組むことが多い」と言えるであろう(23) 。

 他方残り9会派を見ると、立憲民主党所属や連合推薦無所属といった保守系とは言えない立場の議員と会派を組んだケースも確認された。
 このように、参政党議員が極右的な政治理念とは大きく距離のある政党・議員とも連携している様子を見ると、ここから「参政党議員は保守的だが、極右的とは言い難い」という結論を見出せるのではないだろうか。

3. 参政党議員の参加する会派が成立する要因

 前章では参政党が保守系を中心に、他党の議員や無所属議員と幅広く会派を組んでいることが明らかになった。
 しかし本来議員は政治理念等が違うからこそ、政党に所属するか否かの判断や所属する政党が異なるはずである。ましてや参政党は極右政党でないにしても、「陰謀論色の強い保守政党」(藤倉(24) )という特殊な性格を持っている以上、他党と一致できる主義主張は限られているであろう。にもかかわらず、なぜ参政党議員と他党の議員・無所属議員が参加する会派が成立するのだろうか。
 本章ではこのような会派が結成される要因を、第一に参政党議員の立場から、第二に他党の議員、具体的には自民党議員の立場から検証する

3.1. 参政党議員の場合

 ここでは「参政党議員は何を目的として他党の議員・無所属議員との会派結成を選択したのか」について、彼らのSNSでの投稿等から検討したい。

 彼らのうち複数人が言及していたのが「議会での活動の幅を広げるため」である。
 例えば仙台市議の大河原芙由子は自民党議員らと会派「せんだい自民・参政の会」を結成しているが、そのメリットとして「質問時間が長くもらえる」「情報収集が十分にできる」「政策論議ができる」「職員を雇える」「議会活動や先輩たちのこれまでの経験や知見を学ばせていただける」等を挙げている(25) 。
 また大田区議会でたちあがれ日本の議員らの会派「つばさ大田区議団」に参加している伊藤つばさは、彼らとすべての考えでは一致しないことを認めた上で、会派を組んだのは「議員経験豊富な先輩から学びながら、大田区議会の中でのプレゼンスを高めるため」と説明している(26) 。
 このように、他の議員と会派を結成した参政党議員には、「議会活動のため」という言わば実務的な動機がある場合があることが分かるであろう。

 また「その会派に参加しても引き続き参政党議員としての主張ができるから」という背景も少なからず確認された。
 例えば旭川市議の笠井真奈美は自民党系会派「自民党・市民会議」への参加にあたり、「参政党としての政策からブレる事がなく主義主張はさせて頂けるよう約束を致しまして今回の決断に至りました」と説明している(27) 。
 また弘前市の「弘前さくら未来」は立憲民主党議員と参政党議員らが参加する会派だが、結成にあたり党を超えた会派として会派拘束をしないなどのルールが設けられたとのことである(28) 。独特な理念を持つ参政党の議員にとって、このルールが魅力となったことは十分あり得るであろう。

 確かに八尾市の「八尾保守の会」 (29)のように、他の議員と理念が近いことから結成された会派もある。しかし議員達の説明から分かることは、彼らは効果的な議会活動のためなら、たとえ異なる理念や政策を持つ政党の議員が相手であっても、彼らと会派を組むことができる、ということである。
 その点において、参政党議員は特殊な思想を抱きながらも、決して妥協のできない原理主義者ではなく、柔軟な活動のできるプラグマティストであると言えるであろう。

3.2. 自民党議員の場合

 ここでは前節とは逆に「他党の議員は何を目的として参政党議員との会派結成を選択したのか」について考察したい。具体的には政党の中でも参政党議員と会派を組むことが最も多く、その傾向を観察することが比較的容易である自民党議員の場合について分析する。

 自民党議員にとって、確かに参政党は自分達と同じく保守的な理念を持っている政党ではあるが、彼らとは「党として陰謀論色を打ち出しているか」という点で大きな相違点がある。何よりも自らの属する党を執拗に攻撃する参政党の議員に対し、自民党議員が気軽に協力を申し出るとは考えづらいだろう。
 そこで本節では、自民党議員がそれでも参政党議員との連携を選んだ狙いを検討する。

 この作業にあたり、新たに2つの仮説を設定したい。

仮説3:自民党系会派は、自分達より議席の多い会派がある場合、自民党が最大会派である場合に比べて参政党議員と会派を組む傾向にある
仮説4:自民党議員が複数の会派に分かれている場合、彼らは単一の会派を形成している場合に比べて参政党議員と会派を組む傾向にある

 仮説3は、議会においては議長や委員長などの主要な役職が会派に所属する議員の数に応じて各会派に配分される(30)等、「会派の所属人数が多くなればより審議に影響を与えることができる」ということから導かれたものである。特に最大会派が自民党系会派とは別に存在するのなら、彼らは1人でも所属人数を増やし彼らに対抗しようとするであろう

 また仮説4については「自民党議員同士の競争」という観点から導出した。
 市町村議会に自民党議員が複数名存在し、会派を違えての競争を強いられている場合、彼らは数年後に行われる選挙の際、政策では同じ党に所属する相手の議員との差別化がしにくい。そのため彼らは例えば「議会での具体的な実績を有権者にアピールする」といった戦略によって差別化を図らざるを得ないだろう。そして実績を積もうとするのなら、会派として審議により影響を及ぼせるようになることが重要である。
 したがって議会での実績を1つでも多く作るために、たとえ相手が自分達と必ずしも政策の一致しない参政党であっても会派に引き入れ、審議への影響力を強めようとするのではないだろうか

 さて、分析の手順は以下の通りである。

① 1で確認した参政党議員が所属する議会のうち自民党議員も所属する議会を、選挙ドットコムや各種報道を基にリストアップする
② リストアップした議会を「自民党議員の会派の状況」「自民党議員と参政党議員の両方が参加する会派の有無」の2つの観点から分類する

 ①に則ると、自民党と参政党、双方の議員が共存している議会は83議会となる。
 このうち、参政党議員が自民党以外の議員と会派を組んでいる19議会については、「彼らに自民党議員以上に連携したい相手がいたため、自民党議員には彼らを会派に引き入れるか否か、という選択の余地がそもそもなかった」と捉え、分析対象からは除外する。
 そして参政党議員が無会派または一人会派となっている49議会と、参政党議員が自民党議員と会派を結成している15議会を比較すれば、自民党議員がどのような時に参政党議員と連携し、またはしないかが分かるであろう。

 また前述の仮説の検証のため、自民党系会派の分析にあたっては「単一の会派を組んでいる議会」「複数の会派に分かれている議会」 (31)を区別する。そして前者を「最大会派である場合」「最大会派でない場合」に、後者を「少なくとも一つが最大会派である場合」「いずれも最大会派でない場合」に分けて分析したい。
 この基準を用いて各議会を検討したものが表10である。

 まず、自民党議員が最大会派を構成している議会は31議会(単一の会派)と23議会(会派が分裂しており少なくとも一つが最大会派)であるが、それらの会派のうち参政党議員が参加しているものはそれぞれ4議会と2議会にとどまる。つまりそれは54議会のうちわずか6議会に過ぎないのである。
 他方、最大会派でない自民党系会派が存在する議会は7議会(単一の会派)、23議会(会派が分裂しており少なくとも一つが最大会派)と3議会(会派が分裂しておりいずれも最大会派でない)存在する。そしてそのうち(の一つが)参政党議員と会派を形成しているものはそれぞれ2議会、6議会と1議会である。即ち33議会のうち9議会で共に会派を形成していることになる。
 これを見ると、仮説3の通り自民党議員は最大会派を形成できていない場合に参政党と会派を組む傾向が若干ながら見られる、と言えるのではないだろうか。

 また自民党議員が単一の会派を結成している38議会のうち、参政党議員との会派は6議会で見られた一方で、複数の会派に分かれている26議会の中では9議会で確認された。したがって仮説4の通り会派が分かれている場合の方が比較的参政党議員と会派を組む傾向にあると捉えたい。
 特に後者の9議会を見ると、参政党議員が自民党系会派のうち最大会派でないものに参加した議会は6つにも上る。これは複数の自民党系会派のうち一つが最大会派として審議の主導権を握っている場合、少数の会派としては彼らに少しでも効果的に対抗するため、参政党議員を積極的に会派に勧誘して所属人数を増やようとするからだと考えられるだろう。

 加えて、「自民党議員が単一の会派を結成し、かつ最大会派でない」7つの議会を見ると、うち参政党議員と会派を組んでいる貝塚市と八尾市ではいずれも日本維新の会(大阪維新の会)が最大会派である点は注目に値する。
 かつて砂原らは大阪府内の各市議会を分析し、自民党議員は維新のような右翼的と目される政党の議員と競争する立場に立たされた場合、議会での言説に他の自民党議員と競争する場合と同様の傾向が見られる点を指摘したが(32) 、先述の2議会ではこれと似た現象が起きているのではないだろうか。
 即ち自民党系会派は、維新という保守的(右翼的)な会派が自分達に対抗できるだけの所属議員を抱えている場合、自民党系会派が分裂している場合と同じく政策ではなく実績で彼らとの差別化を図りたいという誘因が働くため、参政党議員を自らの会派に入れようとする、と捉えられるであろう。

 以上の通り、自民党議員は最大会派を形成できていない場合や、複数の会派に分かれていたり有力な維新系会派が存在する場合に、参政党議員と会派を組む傾向が若干ながらある。その点で、本節で提示した仮説3及び4はある程度妥当であったと言えるだろう。

3.3. 小括

 参政党と他党(自民党)の双方が参加する会派がなぜ成立するのか。この問いに対し本章が明らかにしたものとは双方にとってのメリットである。

 参政党議員としては他党や他の議員と共に会派を形成することで、議会で1人ではできない様々な活動が可能になり、また会派によっては同時に参政党の一員としての独自の主張や活動も行うことができる。それによって彼らは自らの存在感を有権者に効果的にアピールすることができるだろう。

 また他党としても、会派の所属人数を増やして審議により影響を与えることができる。特に自民党議員の場合、最大会派が別に存在する時や、他の保守系会派(別の自民党系会派や維新系会派)との競争にされされている時、参政党の議員を引き入れて会派の構成員を増やすことで、議会での実績を作りやすくし、より相手に有効に対抗することができるであろう。

 したがって本章では、参政党議員と他党の議員の両方が所属する会派の成立する要因とは、「『効果的な議会活動をできるようになりたい』という双方の利害の一致」である、と結論付けたい。

4. おわりに

 最後に、以上の考察を通じての結論を振り返りながら、ここから得られる示唆を二点指摘しておきたい。

 まず、参政党議員とは「非妥協的な極右主義者」ではなく「保守的なプラグマティスト」である

 参政党は既存の政治や政治家、或いは政党に極めて批判的な集団であるが、一方で所属する地方議員は往々にして党派の異なる議員との連携を選択する。その相手は保守的な政党・議員であることが多いが、参政党議員は政策の実現といった議会活動のためなら思想が大きく異なる相手(例えば保守系とは言えない議員)とも協力関係を結ぶことができるのである。

 この「議会活動を目的とした他の議員との連携」は功をなしている。
 例えば旭川市議会では、「パンデミック条約締結及び国際保健規則改正に係る情報開示を求める意見書」が参政党議員の参加する自民党系会派によって提出され(33) 、原案が全会一致で可決された(34) 。参政党はこの実績を大いに宣伝に利用しているが(35) 、これは党所属の議員が本来は主義主張の異なる自民党議員と同じ会派に参加していたからこそ実現したものである。
 この議員の政治的立場を脇に置いたことが具体的な成果の獲得につながったという事例は、参政党議員がまさに「プラグマティスト」であるということを如実に示したものである、と評価できるであろう。

 だがもう一つ示唆されるのは、参政党議員もまた、既存の議会政治に巻き込まれている、ということである。

 3.2で検証した通り、自民党議員は自分達が最大会派を形成できない時、また他の自民党系会派や維新系会派との競争に立たされた時に、より参政党議員と会派を結成しようとする傾向が若干ながら見られる。これは参政党議員としても会派への参加のハードルが下がるというメリットがあるが、見方を変えればこの自民党議員の行動の動機は「次の選挙で当選するために議会で有利な位置を占めたい」という、住民、特に参政党員の意思とは全く無関係なものである。
 このような「次の選挙」を見据えた会派工作に参政党議員も関わっているということは、彼らもまた、党が批判してきた従来の「選挙最優先」の政治(36)の一員と化している、と言えるのではないだろうか。

 これに関連してさらに指摘するならば、今後会派に参加した参政党議員が、党と言うよりも会派の構成員として行動する事態も発生しうるであろう。
 すでに今年12月に行われた江東区長選において、江東区議の吉田由紀子は自民党等が推薦する候補への応援を表明したが、その際になされたのは会派「自民・参政・無所属クラブ」として自民党と一緒に活動しているからという、「政策の一致」や「党員の意思」ではなくいわば「会派の都合」からの説明であった(37) 。

 本件のように、参政党議員は会派に参加した場合、往々にしてその一員としての活動をすることになると思われる。しかしその行動が常に党員の意思に基づくとは限らない。
 これまで「党員が主役の政党」 (38)を標榜してきた参政党の議員が、今後党員の意思ではなく、所属会派という自らの事情に則った政治的意思を表明した時、それは我々が「彼らは党が批判してきた既存の政治家とまさに同じ行動に陥った」と評することを可能にするものではないだろうか。

 参政党議員は特異な政治理念を抱きながらも、「保守的なプラグマティスト」として実績を積むために、議会政治に容易に順応していった。
 だからこそ、彼らもまた議会政治という既存の政治の一部に自動的に組み込まれていくことになるが、それは「既存政治への反発」という参政党員としての立場と真っ向から衝突するものである。

 本稿で明らかになった参政党議員のこの「保守的なプラグマティスト」という政治的性格は、今後も議員自身にとって、この利点と欠点をもたらす「諸刃の剣」であり続けるであろう。


※註

(1) 例えば雨宮は、参政党の幹部の演説の中に「既存の政党や政治家を全て否定する発言」があった点を指摘している。雨宮純 2022年7月17日 「「参政党!」コールに1万人以上が熱狂~参政党の熱い夜~(2022.7.9)」
https://note.com/caffelover/n/n2559689e9fe2(2023年11月19日閲覧)

(2) 参政党と「極右的ムード」を関連づけているものとして、中日新聞 2022年7月13日 「広がる極右・陰謀論 「参政党」が1議席、参院比例」

(3) 「選挙ドットコムちゃんねる」 2023年10月28日 「”参政党”と”日本保守党”の違い!神谷宗幣代表「狙っている層が違う」!選挙協力の可能性は?|第243回 選挙ドットコムちゃんねる #1」
https://www.youtube.com/watch?v=DPXDhsUKENw(2023年11月19日閲覧)

(4) 西村慶介 2023年10月28日 「参政党の支持者、及び党の今後に関する考察 ~三春充希 『【特集】第26回参院選(2022年)参政党』前半部分と、それへの感想を基に~」
https://note.com/saiiki6111/n/n3d18ff312e44(2023年11月19日閲覧)

(5) 参議院 「会派・政党について:よくある質問」
https://www.sangiin.go.jp/japanese/goiken_gositumon/faq/a09.html(2023年11月19日閲覧)

(6) なお参政党議員の政治的性格を考察するにあたっては、議会における投票行動を分析することも重要であろう。この分析については別稿に譲りたい。

(7) 東広島市議の山田学によれば、参政党としては会派の所属に関する取り決めはなく、議員に委ねられているとのことである。山田学 「後援会だより『山田まなぶ通信vol.3』」
http://yamadamanabu.com/wp-content/uploads/2023/08/361a239780e5ed342058171875db9e15.pdf(2023年12月16日閲覧)

(8) 参政党 公式HP 「メンバー紹介」https://www.sanseito.jp/member/ なお、HPを閲覧したのは2023年11月10日である。そのため、海老名市議選(11月12日投開票)のようにそれ以降に当選した議員は分析対象からは除く。また11月10日以前にSNS等で離党報告をした議員も、HPに残っている限り所属議員として扱った。

(9) 137の地方議会を各々の自治体の規模で分類すると、県5、特別区14、政令市3、一般市92、町19、村4となる。

(10) なお一人会派については認めている議会と認めていない議会があり、後者の場合会派に参加しない議員は無会派となる。そのため、厳密には無会派と一人会派を区別する必要はあまりないであろう。

(11) 分析の手順は参政党の場合と同様である。なお所属議員はれいわ新選組 公式HP 「れいわ新選組 所属」https://reiwa-shinsengumi.com/member/ による(2023年11月11日閲覧)。

(12) 前者については「消費税の減税その他の税制の見直しに関する法律案」の立憲民主党等との共同提出、後者は第49回衆院選でのいわゆる「野党共闘」等が挙げられる。前者について詳しくは立憲民主党 2022年6月10日 「野党4党共同で議員立法「時限的消費税減税法案」を提出」https://cdp-japan.jp/news/20220610_3868 後者については毎日新聞 2021年10月20日 「共闘野党、分断狙う与党」

(13) なお、やはり比較的最近に結党され、かつ参政党と同様保守的な傾向のある日本維新の会の方がより比較対象として適当であろうが、維新の地方議員を網羅的にまとめた資料が見つからなかったため、この調査は断念した。

(14) https://go2senkyo.com/(2023年11月19日、20日、21日閲覧)

(15) なお、これらの議員の中には当選後に離党した者が含まれていることも考えられるが、時間の都合上それらは確認せず、あくまでも選挙時の公認を確認対象とする。

(16) 自民党と「たちあがれ日本」 が該当する。大田区議の犬伏秀一によれば、後者は2010年に設立された同名の政党の理念を継ぐべく、犬伏ら同党の政治塾塾生を中心に設立された政治団体である。X(旧Twitter)「大田区議会議員 いぬぶし秀一」(@inuhide) 2023年4月22日午前5時50分の投稿より。https://twitter.com/inuhide/status/1649515898674487299 政党「たちあがれ日本」が保守的な綱領を掲げていた点を考えると、政治団体「たちあがれ日本」も保守系の政党に分類することが適当であろう。その綱領についてはたちあがれ日本 綱領 http://www.tachiagare.jp/outline.php (Wayback Machine 2010年4月14日アーカイブ分 https://web.archive.org/web/20100414121439/http://www.tachiagare.jp/outline.php )参照(URLはいずれも2023年11月21日閲覧)。

(17) 弘前市の「弘前さくら未来」と高槻市の「市民連合議員団」に参加した立憲民主党議員を見ると、2019年の選挙で「(旧)立憲民主党」から出馬した者はそれぞれ1名と2名である。また岩手県の「希望いわて」と木津川市の「新風コスモスの会」には「(旧)立憲民主党」出身者はいなかったが、前者には2019年の選挙時に社民党から立候補した者が1名確認された。

(18) なお無所属議員の中には選挙時に政党の推薦を得る者がいることが知られているが、分析対象となった議員の中に直近の選挙の際にこれを得ている者は確認できなかった。

(19) 杣正夫 「都道府県議会議員選挙の保守支配」 『法政研究』第46巻1号(1979)

(20) 勿論、議員の自民党との関係に着目する①②とその他の保守系の団体との関係に着目する③では、「保守」の意味合いが異なることは言うまでもない。この基準はあくまでも一つの目安である。

(21) 各々の根拠の出典は表11の通りである(URLはいずれも2023年12月25日閲覧)。

(22) 連合大阪 「2023年統一地方選挙 連合大阪 推薦候補者一覧<予定>」
https://www.rengo-osaka.gr.jp/info/senkyo/202304.html(2023年12月25日閲覧)

(23) もっとも地方議会については、杣が前掲論文で「保守支配」と表現するように元々保守系議員が多いという事情があるため、他の議員と会派を結成しようとする際は必然的に保守系と組むことが多くなる、という可能性は考えられる。また当然ながら、保守系の議員が参加している会派が必ずしも保守系の会派ではない、という点にも留意すべきである。保守系無所属が参加しているとした福井県の「越前若狭の会」に、民主党に所属していた元衆院議員も加わっていることがその典型例であろう。

(24) 藤倉善郎「参政党を取り巻く陰謀論――自然派、反ワクチン、レイシズム……」 『世界』2022年12月号(岩波書店)

(25) Facebook「大河原ふゆこを育てる会」2023年11月14日の投稿
https://www.facebook.com/okawarafuyuko/posts/pfbid02Sf3LCN3yxiRUNanSBZhGdb1cjbWFo4qMMVq9YTCjNJDvQ1xPDvV7h6wBbchT6BgKl(2023年12月16日閲覧)

(26) X「伊藤つばさ 大田区議会議員」(@itotsubame) 2023年5月26日午後1時23分の投稿
https://twitter.com/itotsubame/status/1661951280380796930(2023年12月16日閲覧)

(27) Instagram「笠井真奈美」(sanseitou.kasai_manami) 2023年5月25日の投稿
https://www.instagram.com/p/CsqlajxBYkx/?img_index=1(2023年12月16日閲覧)

(28) 陸奥新報 2023年5月9日 「弘前市議会 改選後会派結成の動き活発化」

(29) 松田 のりゆき ブログ 2023年5月10日 「【八尾保守の会】八尾市議会において、田中久夫議員、川上舞議員及び私の3名で会派「八尾保守の会」...」
https://go2senkyo.com/seijika/155922/posts/695954(2023年12月16日閲覧)

(30) 政治山 2015年6月10日 「地方議会における会派の役割」
https://seijiyama.jp/article/news/nws20150610-001.html(2023年12月28日閲覧)

(31) 1名が無会派となっている、または一人会派を形成している場合を含む

(32) 砂原庸介、秦正樹、西村翼 「地方議会における右傾化――政党間競争と政党組織の観点から」 小熊英二・樋口直人編『日本は「右傾化」したのか』(慶應義塾出版会、2020)。

(33) 旭川市議会HP 「意見書案第3号 パンデミック条約締結及び国際保健規則改正に係る情報開示を求める意見書について」
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/council/6400/6430/d078598_d/fil/ikensyoann3.pdf(2023年12月27日閲覧)

(34) 旭川市議会HP 「令和5年第4回定例会議決結果」
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/council/6400/6410/d078753.html(2023年12月27日閲覧)

(35) 例えばX 「参政党(公認)北海道支部連合会」(@sansei_hk) 2023年12月15日午後3時39分の投稿
https://twitter.com/sansei_hk/status/1735550200369074456(2023年12月27日閲覧)

(36) この批判は、例えば「参政党【公式】」 2023年11月7日 「他党とは違う組織づくり!参政党の目指す先とは〜前編〜|神谷宗幣」で確認される。
https://www.youtube.com/watch?v=uTvvn3sH5P8(2023年12月27日閲覧)

(37) X 「吉田ゆきこ」(@Yukiko185358545) 2023年12月3日午後5時47分の投稿
https://twitter.com/Yukiko185358545/status/1731233574433783914(2023年12月27日閲覧)

(38) 例えば「参政党【公式】」 2023年7月25日 「【LIVE】参政党定例記者会見ライブ配信!7月26日(水)15:00~」での松田学代表(当時)の発言。
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=H1Ynp6j8ATg&embeds_referring_euri=https%3A%2F%2Fwww.sanseito.jp%2F&source_ve_path=Mjg2NjY&feature=emb_logo

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