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原典を読みながら環境・農業問題について考えてみる

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聖書や日本書紀、平家物語などを読みながら、「日本」について外国人に説明するにはどうしたらいいかとか、農村部の論理と都会人の論理がどう違うかと言ったことについてのヒントを考えていま…
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2019年1月の記事一覧

混沌の次に古い奈落とエロス

原初にカオスが生じた。胸幅広いガイア(大地)、雪を頂くオリュンポスの頂きに宮居する八百万の神々の常久に揺るぎない御座なる大地と、路広の大地の奥底にある曖々たるタルタロス、さらに不死の神々のうちでも並びなく美しいエロスが生じたもうた。この神は四肢の力を萎えさせ、神々と人間ども、よろずの者の胸うちの思慮と考え深い心をうちひしぐ(ヘシオドス 神統記 岩波文庫版)

ヘシオドスの神統記では、原初にカオス=

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「祟り」と「制裁」の間

マルセル・モースの贈与論を読んでいて、ちょっと気になったことがあります。

あなたがある品物(タオンガ)を所有していて、それを私にくれたとします。

そこで私がしばらく後にその品を第三者に譲ったとします。そしてその人はそのお返しに何かの品(タオンガ)を私にくれます。ところで、彼が私にくれたタオンガは、私が始めにあなたから貰い、ついで彼に与えたタオンガの霊(ハウ)なのです。

私はそれをあなたにお返

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銅器が名前を持っている

マルセル・モースの贈与論には、銅器が名前を持っていると言うお話が出てきます。

クランの首長の家族が所有する主要な銅器には名前があり、個性があり、固有の価値がある。

「富が富を惹きつけ、威厳が名誉をもたらし、精霊やよい縁組を誘うように、銅器は他の銅器を引き寄せる効力を持っている。」

銅器は生きており、自律的な運動をするし、他の銅器を引き寄せる。

銅器そのものが話し、不平を言い、与えられること

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贈与は物々交換でなく、信用を前提にしていると言うこと。

マルセル・モーセの贈与論は、非常に示唆に富んでいます。

面白いと思ったのは、贈与経済と言うのは、物々交換ではないと言うこと、信用を前提にしていると言うこと、銅器が「名前」を持っていると言うお話です。

三番目の件は、また後で書くとして、僕もそういう言い方をしてきたことがありますが、通俗的な「貨幣」についての説明と言うのは、

ある人がお米を持っている、別な人が布を持っている、

でまあ、お米と布

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