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個人が会社組織と戦える土俵が「個性とアイデア」だけになりつつあるという話

M&Aの業界でよく使われる言葉に、「業界再編」という言葉があります。意味はざっくり言うと、業界の主力企業が競合他社を買収したり提携したりして、業界の首位争いをする動きのことです。

業界再編とは、企業の合併等により業界内の勢力図が変わり、競争環境も変化すること。一般に、有力企業のM&Aや提携により、関係が大きく変化し、競争環境も大きく変わることで、他の企業も巻き込んだM&Aをもたらすことが多い。

出典:MBA用語集

わかりやすいところで言うと、コンビニ業界ガソリンスタンド業界などが典型例でしょう。

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いずれも合併や提携、いわゆるM&Aを繰り返して業界の首位争いをしている構図です。

他には銀行業界やビール業界など、いわゆる昔ながらのレガシー産業が業界再編の中心でしたが、最近は多くの業界に業界再編の波が巻き起こっています。

最近盛り上がっている業界でいえば、薬局業界などがあるでしょう。その他、21世紀の産業を代表するIT業界においても、受託開発業などを中心に業界再編が盛んです。

こうした業界再編の背景として、「寡占の進行」があります。

以前、「個人商店の小売店が巨大資本に淘汰された」という話を少ししました。要は同じ商売をやる以上は規模の大きい方が、管理人員やオペレーション等のコスト割合は小さく、一方で規模は知名度に直結するのでトップラインの面でも大企業が有利であるという話です。

これだけであれば、小規模企業vs大企業という話で特段目新しい話ではないのですが、ここ最近、時代の流れによって、これが個人vs大企業の構図になってきているのではないだろうか、とにわかに思っています。

本日はその内容について、少し掘り下げて考察していきたいと思います。

1.個人が企業組織と戦える余地は「個性とアイデア」以外にない

まず大前提として、「個性とアイデア」以外の要素、例えば資金力分業による効率性ネットワーク、ノウハウなどの部分で、個人が企業組織に太刀打ちできる余地はほとんど存在しません。

わかりやすくモノづくりで例えると、まず資金は生産設備に直結しますので、資金力の大きい方が確実に有利です。

分業による効率性も言うまでもないでしょう。生産作業、品質管理、取引先とのコミュニケーションなど、一人でやっていてはとても手が回らないことも、組織として分業すれば効率的にこなすことができます。

ネットワークは、具体的に言えば誰から仕入れ、誰に売るのかという話になりますが、これも個人が持っているネットワークなどたかが知れています。

ノウハウについても同じです。個人が試行錯誤するのと、組織全体でトライアンドエラーを検証するのとでは、蓄積される知見の量に雲泥の差があるでしょう。

ゆえに、個人がモノづくりで起業する場合には「個性とアイデア」、要するに何を作るのか、どんなものを作るのかという部分で勝負するしかないということに、往々にしてなるというわけです。

私自身も、noteにて自己発信をしていくほかに、例えば並行輸入をしてみるであるとか、アフィリエイトサイトを構築してみるであるとか、主に副業という観点からはいろいろなことを考えました。

なぜそれらを選ばなかったのかというと、まさに「個性とアイデア」が介在する余地の小さい分野に努力の舵を切っても、企業組織で大々的にやっているところには到底かなわないと思ったからです。

2.企業にとってはリスクを取って創作をするよりも、個性とアイデアを青田刈りする方が早い

では、その、「個性とアイデア」においてはどのように個人が企業組織と戦っていけばいいのでしょうか?

・・・となりそうなものですが、これは実は考える必要が薄いです。

というのも、現代は情報通信技術が発達し、個人で自分の個性やアイデアを「DtoC」できてしまう世の中になってしまっているがゆえに、企業組織にとってはリスクを取って創作をするよりも、個性とアイデアを青田刈りする方が早い状態になっているからです。

具体的に説明します。

2021年にインターネットで爆発的に流行した「ちいかわ」、またその前年の2020年に同様にインターネットで流行した「100日後に死ぬワニ」というコンテンツは、読者の皆さんの記憶に新しいことでしょう。

後者は炎上騒動などがあったりなどもして、やや尻すぼみになってしまいましたが、前者は現在も飛ぶ鳥を落とす勢いであり、広島カープとのコラボ阪神タイガースとのコラボを立て続けに行うなど、向かうところ敵なしの爆発的ヒットを続けています。

これらはいずれも、インターネットで「個人」が「個性やアイデア」を発表したものが流行り、そうした個人コンテンツに、「企業組織が乗っかってきた」例です。

もっと言うと、企業組織が、自分たちでは生み出すことのできない「個性やアイデア」を生む個人に青田刈りを仕掛けている例です。

ヒット作を生み出し続けることは難しいものです。ヒットした次の作品がすぐ打ち切りになってしまうという漫画家も少なくありません。

そうした状況において、「ヒット作を世に送り出している個人にアプローチをかけ、我々企業組織のチカラで大きく多方面に売り出そう」という発想になるのはごく自然なことであり、そしてそれは、オファーを受ける個人にとっても、悪くない話でもあります

個人に大した発信力がなかった時代、インターネットではなく4大マスメディアが主流だった時代には、世の中でウケるであろうものを、会社組織の内部で企画・制作する方法が主流で、流行るかどうかについてのイチかバチかというリスクを、会社組織が背負うものでした。

それがいまや、情報通信技術が発達し、SNSなどを活用することで個人が自分の個性やアイデアを「DtoC」できてしまう世の中になったがゆえに、会社組織からすると、より「確実に売れるもの」に容易にアプローチすることができるようになりました。

一番読めない部分での、「イチかバチか」の橋を渡らずに済むようになりつつあるのです。

3.企業組織が「個性とアイデア」を個人に外注する流れが加速し始めている

「ちいかわ」や「100日後に死ぬワニ」はあくまで一例で、特にTwitterで流行したものを取り上げたにすぎません。

テレビ番組ではYouTubeでバズった動画や人気YouTuberを好んで起用するようになりました。

映画業界ではもともと、流行したマンガや小説を原作にしたものが安定したヒット作になるため好まれますが、原作たるマンガ業界において今や一大ジャンルになっているのが「なろう小説」です。

今はまだ、上記に挙げたようなメディアやエンターテインメントの分野が中心ではありますが、近いうちにモノづくりや飲食、サービス業、あらゆる方面にこのような、個人と企業組織との関係性の変容、すなわち業界再編の流れが加速していくのだろうなと、個人的には思っています。

インターネットでバズりうるものとして具体的に考えるなら、「かわいくて美味しい洋菓子」とか、「生産者の顔が見える伝統工芸」とか、「個人開発のWebサービス」などでしょうか。

最後の例で言うと個人開発で作られた質問箱サービス「Peing」が買収された事例などが有名ですよね。買収なのか提携なのかという違いはあれど、こうした事例は今年もどんど増えていくことでしょう。

「『個性とアイデア』だけ提供してください、その他のリソースは全て我々が持っています」

こうした時代の到来は近いと予想しています。

ということで、「インターネットの時代における個人と企業組織の関係性のあり方」について未来予想をしてみました。

人は誰しもどこかしらでは社会の歯車なのですが、そうは言っても自分のアイデンティティを確立したい、社会の歯車になりたくない、という思いを持っている人はきっと多いことでしょう。私自身も、心のどこかではそのように思っている部分があると思います。

そうした人にとっては、2022年はまさに「個性とアイデア」を磨くべき一年になることだろうと予想します。


本日は以上です。
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それではまた明日。

2022.1.10 さいとうさん

#2022年を予想する

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